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薬師渚の魔物退治奮闘記  作者: 水上瑞希
第二章 再会
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9,森の噂

おひさしぶりです。

 あの日、(あずま)くんが佑真にそっくりであることに気づいた私は、東くんが自分の幼馴染みに似ていることを伝えて佑真のことを何か知っていないかと尋ねてみた。しかし東くんは首を傾げて知らないと答えた。自分にそっくりな親戚がいるという話も聞いたことがないそうだ。

 まあでもそうだよね、佑真からもそっくりな親戚の話なんて聞いたことがないし。

 ただほんと他人の空似とは思えないくらいそっくりすぎるんだよね。10歳と14歳じゃ体格がだいぶ違うから全く同じとは言わないけど、歳が同じっていうのもあって、もし佑真が生きていたらこんな感じだったのかなって思う。一度認識してしまったら変装しても佑真にしか見えないし。ここまで似てるとなると、声変わり前は声もそっくりだったんじゃないだろうか。声質近い気がするし。

 ――今更佑真に現れてはほしくなかったなぁ。いや、本人ではないけど。

 あれから時間が経ってようやく多少は割り切れてきたところだったのに、佑真の顔なんて見たら嫌でも思い出してしまう。あの日のことも、後悔し続けた日々も、…あの頃の気持ちも――


 衝撃の事実発覚から数日経った。そろそろ食料が尽きる頃なので今日はこれから買い出しだ。私は未だに東くんの顔に慣れきれず内心どぎまぎしていることもあるのだが、表面的には普通に接することができている。まあ九条にはバレているだろうけど。

 買い出しの時に一番に向かうのは保存食コーナーだ。旅をしているといつでも食料が入手できるわけではないので、日持ちのする食べ物は欠かせない。街や村が近ければそこで何か買って食べるし、山で木の実などを採集したり釣りをしたりして食料を確保することもあるが、行き先によっては食べられるものが全く入手できないこともあるのだ。最低限のエネルギーが得られるものを数日分は持っていないと、だいぶひもじい思いをするはめになることもある。

 その他にも作った薬を入れる容器とか、魔物と戦ってると何かとボロボロになりがちな服の替えとか、日用品とか、買わなきゃいけないものは結構いろいろある。人数が増えて必要な量も増えたことだし、一応まだ大丈夫ではあるけど、そろそろ金策も考えないといけないかもしれない。

 そろそろどこかで薬を売ろうかなと私が考えていると、会計中に八百屋のおばさんが声をかけてきた。

「あんたたちもしかして旅のもんかい?」

「そうですけど…」

 私がうなずくと、おばさんは「やっぱり!」と呟いた後声を潜めた。

「…ということは南の森の話も知らないかい?」

「南の森?そこがどうかしたんですか?」

 声を潜めるということはあまり良い話ではないのだろうか。

「最近あの森で強力な魔物の目撃情報が多くてね、しかも日に日に増えてるんだ。おまけにほんとかどうか知らないが ”出る” って噂でね、あそこはあんまり近づかない方がいいよ」

 出るってその言い方、まさかおばけか何かですか…?…え、いるの?

 気になって聞いてみたところ、別におばけの姿を見た人がいるわけではないらしい。ただ夜中に森の中からボウッと浮かび上がる灯が見えたり、魔物に囲まれて近づけないはずなのに中から人の声がしたりと気味の悪い情報が後を絶たず、おばけでも住んでいるんじゃないだろうかと専ら噂になっているそうだ。

 私達はお化け退治は専門外だが、どうやら魔物の大量発生は確実なようなのでそっちは放っておけない。

 せっかくの忠告に逆らうことにはなるが、八百屋のおばさんにお礼を言って別れた後、三人でその森へ行ってみることにした。


かなり間が開いてしまいましたが新章突入です。

今回は1章で軽く触れた渚の過去編などが入ってきます。

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