落石
暗闇に落ちていく、このまま、永遠の……。
「マリア様ッ!!」
ハッと意識を取り戻す。道を削り落とした落石のあとが生々しい。
私の上に覆いかぶさっていたのは、モートルだった。
「モートル!!」
「良かった…」
「こんなところで何してるの!?」
「魔界に行くんだろ!? 俺っちも連れて行ってくれよ!! 兄貴に会いたいんだ!!」
「何言ってるの!? こんなに危ないのよ!?」
「いま死にかけたの、あんたじゃないか」
グッと詰まる。
「諦めると思ってたんだけどなぁ」
「マリア様より根性あるよね?」
「まぁ、まかり間違って最後までついてきても、結界を通さなければいいかと思っていたんですがね」
「あなた達、知っていたの? こんな小さな子どもが、こんなところにまでついてこさせて!!」
アンナはそれを聞いて怒り出す。
「絶対諦めると思ってたんですもの」
ナアマはウンザリした顔を隠さない。ここで罵り合っても意味がない。私はモートルに向き合って、問いかけた。
「どうしてこんなところに?」
「あんたがアンナ様のとこに俺っちを呼んだんじゃないか」
ん?
顎に指を当てて、考える。
あー、言った言った。モートル連れてこいって、言ったわー。
「またマリア様のせいですか」
「思いつきで行動するの、やめてほしいですよね」
「いつも迷惑こうむるの、悪魔じゃないですか」
「人間にこんなに振り回されるなんて、悪魔も名折れだな」
悪魔達は口々に文句を言い合っている。
もうここまでくれば、敬意もへったくれもない。
「で、どーすんだ?」
勇者の冷静なツッコミに、みんなが黙り込んで腕を組む。
「もう追い返すのも危ないですよ」
「マリア様を魔界にお連れするより面倒は少ないだろうな」
「義勇軍に入るより危険だぞ」
「行くも地獄帰るも地獄ですよー」
みんなの話し合いは、意見を出し合うだけで、先には進まない。
「……あっちに後継者がいるとわかった以上、一刻を争う。引き返して送っていく余裕もないんだ」
勇者がモートルの肩を掴む。
「モートル、お前は俺が守る」
「……俺っちは、あなた様の義勇軍に入ろうと思ってたんだ! 守ってもらわなくったって、自分の身は自分で守れます!」
「……そうだな、現にマリアを守ってくれたんだもんな」
そう言って微笑んで、モートルの頭をポンポンとかき混ぜた。満足げにモートルがにっこりと笑った。
「よし、いくか」
「はいっ」
元気一杯返事して、モートルは勇者の後をちょこちょこと追いかけていく。
「ねぇ、マリア。どうしてモートルを呼んだの?」
「……勇者に会わせてあげたくて……。あとね、モートルって、ちょうどブリトニと同じくらいなのよ」
「ブリトニ?」
「私の親友と勇者の子どもよ」
アンナは優しく微笑む。口にしたら、途端にマンバに会いたくなる。
「会いたくなった?」
「うん、会いたい」
「じゃあ、頑張ってこの山を越えないとね」
アンナの言葉に、私の心は奮い立った。
そうだ、私はあの山の向こうに、会いたい人がいる。
マンバたちや、村の人々。
それに、ルシファー。
「うん、頑張るよ」
歩き出した足には、力がみなぎる。
さっきまでよりも、足取りは軽かった。
読んでくださってありがとうございます。
バタバタしてきたので、更新ペースを落として、火曜日と金曜日の週2回に変更したいと思います。
文章量は増えると思いますので、これからも読んでいただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。




