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普通という概念に縛られた窮屈な世界  作者: ( ^ω^)だお
3/10

NHK

「矯風会異端取締官の者です。取り締まりのため次の駅でご同行願います。」」


女はそう言うと、人込みをかき分けて俺に近寄り、俺の腕を掴んだ。


(やべぇ...こんな大ごとになるとは...)


するとその時、ひとりの女が大声で話し始めた。


「ケビン?作戦はうまくいってる?わたしは今そっちに向かってるとこ」


声のする方へ目をやると、その女は一昔前のヒーローのような、あるいは初号機のパイロットのようなピチピチの全身タイツを身に着けていて、顔にはサングラスを着用し、頭には金髪のかつらを身に着けるという出で立ちで、携帯電話に向かって話かけていた。先ほどまで俺に注目してコソコソ話していた乗客たちは皆沈黙して、その女の方に目を向けている。


「えぇ!?組織の連中が来たですって!?作戦と違うじゃな...ケビン!?どうしたのケビン!?え...?背後から来た黒づくめの男に毒薬を飲まされた!?嘘でしょケビン!?だって..私まだあんなに話したいことが...」


その時ちょうど車内アナウンスが流れ始め、松瓦駅到着の旨が告げられた。しかし女は、それに構わず小芝居を続ける。


「そうよケビン...私お腹に赤ちゃんができたの。あなたにそっくりのハンサムでやんちゃな男の子よ...え?どうして顔も性格もわかるのかって?だって...わたしはこの子の母親で、この子はあなたの子だもの...。この子に会わずに死んじゃうなんていやよ、ケビン。これが神様のお定めなの...?」


そして女は泣き崩れ、その拍子にずり落ちたかつらを慌てて直し、こう言った。


「愛してるわ...ケビン」


「...NHKだぁ!取り押さえろぉ!」


乗客のひとりがそう叫ぶと同時に、車内の他の乗客たちが女を取り押さえようと一斉に動き出した。すると、いつの間にか電車は松瓦駅に到着していて、出入り口のドアが開いた。駅に降りようとする乗客と女を取り押さえようとする乗客とで車内がごった返しになった上に、女の芝居に気を取られて俺の腕を掴む力が緩んでいたせいか、俺と取締官の女は離れ離れになった。

そんな最中、俺がふと騒ぎを起こした女の方を見てみると、女は俺に向かって外へ出るようにと、首を振って合図していた。俺はそのまま、その女に会釈をして、車外へと逃げだした。




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