序章─ここから始まる
K県A市
田舎とも都会とも言い難いこの土地が僕は好きだ
緑の山々に囲まれていると思えば、雑居ビルが立ち並び電線があちこちに張り巡らされている
田んぼから香り立つ独特の臭い、多くはないが行き交う人のざわめき、夕暮れになるにつれ聞こえる犬の遠吠え
そんなところでありふれた余生を送る、僕のやりたかった事だ
しかしそんな願いは、たった1言で終わりを告げたのだった
「動くな」
いきなり現れた黒ずくめの男は手に持ったナイフを僕に突きつけながらそう言った
決してきらびやかとは言えない、しかし質素ではない、そんなナイフは仄かに赤を帯びている、推測だが炎系の魔術を組み込んだ武装だろう
切れ味はわからないがああいうのは決まって「焼き切る」を基本にしてる、多分当たれば痛いどころじゃないだろうな
「貴様が言うことを聞けばすぐに終わる、いいな?」
そんなもんで脅迫されながら、僕は暗い路地裏に連れ込まれた
相手としても目立ちたくはないのだろう
僕だって人を脅しているところを誰かに見られたくはない
しかしこいつは誰だ?魔術を使うのは確かだが......
無言を肯定と受け取ったのか男はそのまま話を進める
「俺の要求はたった1つだ、貴様が3百年前に封印した『魔本』、それを寄こ...グァッ!!」
『魔本』
その単語を聞いた瞬間に僕の体は動き出していた
まずは手
素早く獲物をはたき落とした後相手の体に蹴りを入れよろめかせたところを拘束の魔術で縛り上げる
「クッ......」
「これで形勢逆転だな、お前何者だ?」
僕は腰からあいつを取り出しつつそう聞いた、が─
「ククク......貴様は逃げられんぞ
魔本の存在は罪である、貴様は罰を受けねばならない!!」
マズい!
そう感じた僕は咄嗟に男から距離を取り、瞬間
ボンッ!!
男の体から炎が上がり一気に焼き尽くしていった
「一体何だったんだ......」
そうボヤいたが瞬間脳裏に僕の相棒のことがよぎる
体はすでに走り始めていた
こうして僕の余生計画は、予想していない方向へ回り始めるのであった
初投稿です
何も考えずに自分の夢で見た妄想話をつらつらと書いていきます
気が向いたら投稿するので頻度はまちまちです