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生者の復活

よろしくお願いします。戦闘描写とかわけがわかめ(白目)

 ケティーは、オルティスの手元にある銃を注意深く観察した。


 《あの銃は、どこにでもある普通の銃ですね。とくにこれといった改造や細工は、銃身に取り付けられたナイフ以外には見らない。魔力も一切感じられない……そう、あの銃からも、オルティスという男からも、一切魔力を感じ取る事はできない。一体、どういうしかけなのでしょうね? 私の攻撃も、通じた様子はないですし、そのしくみも未だに不明。これは、じりじりとした戦いになりそうですね》


 ケティーの額から浮き出た、一粒の冷や汗が、彼女の顔を伝い、地面に落ちたのと全く同時に、オルティスは動き出した。彼は素早くケティーの懐に潜り込み、ナイフが取り付けられた銃を振るった。ケティーはそれを後ろに下がることによって回避し、拳を素早く何発か突き出した。オルティスはそれらを全て回避し、腕を突き出したり、振り回したりして、ナイフによる攻撃を行った。


 これらの攻防はほんの数秒の内に行われ、彼らはお互いの攻撃を回避しつつ、攻撃を行うという事を何度も繰り返していった。しかし、お互いに傷を加える事はできず、時々、お互いのナイフと拳とがぶつかりあって、火花が散ったりする程度であった。これは一種の膠着状態ともいえた。しかし、その膠着は、オルティスが、ケティーの口内を狙って銃弾を発射したことによって崩れた。


 銃弾は、果たしてオルティスの狙ったとおり、ケティーの口の中へと入り込み、彼女の口内を傷つけた。ケティーはその痛みと衝撃でのけぞった。オルティスはすかさず、彼女の腹へと回し蹴りを放った。彼女の体は吹き飛び、壁に激しくぶつかり、床へと跳ねるようにして落ちた。しかし、彼女はよろよろと、体をふらつかせながら立ち上がり、口元を手で覆いながら、オルティスを睨みつけた。


「随分と……やってくれましたね……お陰で口の中が痛いですよ……」


「何、皮膚は硬くて刃が通らないからな。銃弾も通りそうにない。よって、特別柔らかそうな目か、口内をずっと狙っていたのだよ。予想通り、そうした部分までは硬くしていないようだな。やれやれ、中々に手こずらせてくれたものだ」


「もう、勝利したつもりですか……? 傷つけた所で無駄ですよ……私の皮膚は魔力によって硬化させる事が可能……今よりもより頑丈にする事もできますし、やろうと思えば、口内も、目も、体内の臓器くまなく硬化させることも可能です、そして、再生も可能なのですよ。おかげで、口の中の傷もすっかり治りましたよ」


 ケティーは口から、頭の潰れた弾丸を吐き出した。


「さて、では次はこちらからいきましょうか。この弾丸にもこれといった仕組みは無いようですしね。その防御力の仕組み、解明させてもらいますよ」


「どうやら」とオルティスは、口の中で小さく呟いた。


「造り物の肉体のせいか、効き目は遅いようだ。手応えからして、効き目が無いというわけではない。ふん! めくら(・・・)め! 弾丸に何の仕組みもないだと? それは大間違いだ」


 ケティーは相手の懐へと飛び込み、拳や蹴りによる攻撃をオルティスの体中に、素早く、くまなく行った。しかし、彼は一切動じることはなく、その場に立ち尽くしたままであった。


「無駄だ、ケティー・レア。お前の攻撃は、確かに一発一発が岩を砕き、鉄を引き裂くほどの威力だ。しかし、そのような攻撃など俺には効きやしない。魔法使いよ、造り物よ、諦めろ。決着はとうの昔についている」


「もう勝利した気分ですか? それはいささか気が早いと思いますが?」


「決着はついているのだよ、ケティー・レア。気付かないのか? それとも、造り物故に体の感覚が鈍いのか? 自分の体を確かめてみろ。それ、もう目に見えるほどの効果が現れてきたぞ」


「何ですって?」


 ケティーは、攻撃を行うのを止め、自らの体を点検した。素早く服の袖をめくると、腕の一部が、通常の皮膚から、石へと変化していた。彼女はそれを見ると、驚きと焦りが入り交じった表情を浮かべた。そうしているあいだにも、皮膚はじわじわと石化しているのだった。


「これは一体? 私の体がこうなっている原因を考えられるとしたら、あの弾丸ぐらいしかありませんが……しかし、あの弾丸はどう見てもこれといった細工はされておらず、通常の弾丸だったはず」


「ふん、確かに見てくれでは、俺が放った弾丸は通常の弾丸そのものだ。しかし、弾丸の素材に使われている金属、火薬といったものはそうではない。とある魔法使いの手によって作られた、一撃必殺の魔弾だ。効果は見ての通り、当たった対象を石へと変化させる。人間ならば、通常は10秒ほどで完全に石化するのだがな、どうやら造り物であるお前には効き目が遅いようだ。しかし、それでも効果は発揮されたようだ。すぐに石化するのと、少しじつ石化するのとでは、後者のほうが感じ取る恐怖も大きいだろう。それでは流石にあんまりだ。今すぐ楽にしてやろう」


「それはそれは。随分と立派な紳士なのですね」


「いいや、俺は紳士などではない。敵に速やかな死を与える死神だ」


 オルティスはナイフを素早く振るい、ケティーの首を跳ね飛ばし、胸にぶすりと突き刺した。床に転がった彼女の首と、立ったままの体とは完全に石化した。彼は、それを確認すると、小さく呟いた。


「これで一人目だ」


「いいや、それは違うかなあ


 」とサヴィルは言った。彼女は石化したケティーの頭を抱きかかえ、それを彼女の胴体の上に置き、彼女の体に手のひらをかざした。すると、かざした部分から、石化した部分は、元通りの肌となり、ケティーはあっという間に元通りの姿を取り戻したのだった。はっとした彼女は、自分の体を見たり、触ったりして、石化した状態から解き放たれたことを確かめた。

 サヴィルはそうしたケティーの様子を見、微笑みながら言った。


「やあ、ケティー。気分はどうかな? どこか痛いところは?」


 ケティーは、サヴィルの声にはっとして、答えた。


「いえ、これといった異常はありません。サヴィル。貴女が助けてくれたのですね、ありがとうございます。そして、申し訳ありません、貴女の手を煩わせてしまいました」


「んにゃ、別にいいよ。だって、私達は友達だしね、友達のピンチは助けるもんでしょ。さ、ケティー。君とアイツとだと、相性が悪い。このまま戦うと、負けるのはケティーだろうね。さ、下がっていな。こっから先は私に任せろー!」


「判りました。申し訳ありません」


 ケティーは後ろに下がった。これまでの二人の様子を見ていたオルティスは、サヴィルの様子を注意深く観察しながら言った。


「それで? 次はお前が俺と戦うのか? どうやら、優秀な魔法使いのようだ。あの魔弾による、石化の呪いを解除したのは、お前が初めてだ。今までに、名高い魔法使い達がいくら挑戦しても、解呪する事は出来なかったからな。お前の実力、見させてもらおうか」


「いや、私は別に戦うつもりはないよ。エレィエンツ」


「何?」と、今までずっと同じ場所に座り、これまでの様子を見守っていたエレィエンツは答えた。

「いつでも転移できるようにしてほしい」


「了解、5秒後に所定の距離内ならば、転移できる」


「上出来、上出来、ありがとう。さあ、それじゃあ始めるとしようか。フォイル・ファイアマン」


 とサヴィルは、フォイル・ファイアマンと向き合った。オルティスは、その二人の間に入ろうとしたが、フォイル・ファイアマンは、不要だという合図を示し、彼の後ろに控えた。そして、次郎と鬼々童榊魔天獄へと目を向けた。彼らは、まさに一進一退の攻防を行っており、お互いの肉体には、大量のかすり傷ができていた。フォイル・ファイアマンは言った。


「鬼々童榊魔天獄。そこまでだ」


「む、何じゃ。これからが楽しくなってくる所じゃというのに。まあ良い、ここは引き下がるとしよう」


 と鬼々童榊魔天獄は、次郎と組み合っていた所を、フォイル・ファイアマンの元へと一気に跳躍した。

 フォイル・ファイアマンは、仮面の下から、唸るような声で言った。


「様子見はここまでだ。お前達の様子だと、我らと手を組むつもりは無いようだ。これを最後通牒とする。サヴィル・レンキミアを代表とする連盟よ、我らと歩みを共にすれば、魔法使いの楽園は目の前だ。我らと手を取り合うつもりは無いか? 今一度、敵対の考えを改めてもらいたい」


 サヴィルは振り向いて、自分の仲間たちの様子を確かめた。彼らは、全員が首を振ったりと、フォイル・ファイアマンの提案を否定する事を示していた。そして、彼女は紫暮の方を見て、


「君はどうだい? 倉持紫暮君」


「ん? 僕か」と紫暮は言った。


「当然、フォイル・ファイアマン。お前の計画なんてどうでもいいし、協力するつもりもない」


「そうか」とサヴィルは頷いた。彼女は再びフォイル・ファイアマンへと向き直り、言った。


「我々は、フォイル・ファイアマン、お前を打倒するために集った魔法使い連盟だ。お前のその野望は、絶対に阻止させてもらおうじゃないか。そして、フォイル・ファイアマン及び、その仲間が抵抗するというのならば、我々もそれ相応の手段を取らせてもらおう。我々魔法使い連盟は、フォイル・ファイアマンとの敵対を選ぼう! お前のその野蛮な計画は、決して叶わないとここで予言してみせよう!」


「いいだろう。それが貴様らの答えというわけだな? ならば、今、この瞬間より我らは敵という訳だ。同士での戦いは非常に心苦しいものだが、仕方があるまい。今ここで、消し炭となれ」


 とフォイル・ファイアマンは腕を正面に突き出した。すると、部屋が一瞬で高熱と化し、陽炎によって風景が歪んで見え、天井と床がみしみしという悲鳴を上げ始めた。サヴィルは叫んだ。


「エレィエンツ! 転移だ! 移動先は任せる!」


「了解。転移魔法陣起動。転移先の座標を設定、設定完了。転移開始」


 視界が一瞬、白く染まると、サヴィル達の目の前からフォイル・ファイアマン達の姿は消えており、部屋の温度も通常のものへと戻っていた。サヴィルはそれを確かめると、ため息を吐いた。


「やれやれ、ひとまずは切り抜けたか。そして、同時に第一段階は終了したか……」


 彼女は紫暮の方へと振り向き、


「さて、紫暮君。君は一旦家に戻っておいてくれ。フォイル・ファイアマン達の襲撃は私も、全くの予想外だったからね。一度結界の貼り直しやら、何やら仕事があるから、細かい事はまた明日話そう。そうだね、朝になったら、誰かが迎えに行くとしよう。それでいいかな?」


「ああ、構わないよ」と紫暮は答えた。


「こっちも、幾つか整理したい部分もあるからね。改めて後日、また話すとしよう」


「大丈夫なのか?」と次郎は訪ねた。「コイツが一人になった所を襲撃されるという可能性は無いのか?」


「ああ、それなら大丈夫だよ。僕だって、戦う力はある。最低でも、逃げ回るぐらいはできるさ」


「そうか、なら良い。ああ、だがその前にスマホをよこせ、連絡先を交換しておこう」


 と紫暮はそれぞれと連絡先を交換し、最低限の挨拶を行うと、扉を開いて部屋の外に出た。外は夕暮れとなっており、それなりの時間が経っていたということが分かった。彼は、先ほど部屋の中へと入った場所と、出た場所が違っているのを確かめ、振り向くとそこには、公園の公衆便所の壁があった。彼は壁に触れてみせたが、すり抜けるような様子はなかった。紫暮は、歩いて自分のアパートへと移動すると、部屋の中のゴミをすっかり片付けた。片付けが終わったときには、すっかり暗くなっており、空には幾つもの星と月が光り輝いていた。彼は窓からそれを見ると、手で顔を覆い、上を向いて笑いだした。


「フォイル・ファイアマン、フォイル・ファイアマン……! ああ、僕はなんて幸運なんだろうか! この数年、あらゆる手段を使って探し続けた相手と、こうして出会うことができた! そして、フォイル・ファイアマン! お前のその姿、その声を見ていると、僕は確信したぞ。そうだ、そうだ、僕は確かに、お前の事が憎くてたまらないんだ! お前を見ていると、僕の中の復讐心が激しく沸騰し、体が熱くなる。ああ、やっとだ! やっと復讐を行うべき相手と出会えたんだ!そして、改めて、お前に対する憎しみを感じ取ることができた! そして、魔法使い連盟とやら……君達には、僕の手伝いを是非ともしてもらうとしよう。お互いが、最終的に目指す場所は同じだ。ならば、思う存分利用させてもらおう。魔法連盟という、協力な手段も手に入れた。これほど幸運なことがあるだろうか!


 待っていろ、フォイル・ファイアマン。お前は僕の全てを奪い取った。ならば、今度は僕がお前の全てを奪い取ってやろうじゃないか……! お前の計画とやらも、仲間とやらも、全てを……そうして、全くの虚無となった瞬間、僕の復讐は完遂されるのだ。僕の憎しみはきっと霧散するのだ。ああ、楽しみだ。今日はきっと安らかに眠れることだろう!」



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