第10話 「未来はない」
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……不幸体質。
……やっぱり私は、幸せになれないのかな。
寝起きのまどろみの中、一人で思いにふける。
私の体を流れる魔法の力。
それは私に力を与え、誰かと戦うものなのに。
ずっと、その力に苦しんできた。
生まれたその瞬間から、この時まで。
……良いことなんて、ひとつもなかった。
……このまま、どうしようもない人生を送って、世界の片隅で死んでいくんだ。
……そう、思っていたのに。
『なぁ、ユーリィ。一番やってはいけないことはな。本当に辛いときに、一人で抱え込んでしまうことなんだ』
あの時の、彼の言葉が蘇る。
掃除道具室や空き教室を寝床にしていた頃、泊めてもらおうと彼の部屋を訪ねた。最初は一晩だけのつもりだった。翌日からは、どこか違う場所で寝泊まりをするつもりだった。
それなのに、彼は私を受け入れていくれた。
一緒にいてもいいと、言ってくれた。
……嬉しかった。
……本当に、嬉しかった。
今まで良いことなんて、何一つなかった人生だったのに。
ここに来てから、幸せなことばかりだ。
自分の居場所ができた。
友達ができた。
仲間ができた。
……好きな人ができました。
「すぅー、すぅー」
同じベッドで寝ている彼のことを見る。
何の警戒もせず、私みたいな汚れた人間と一緒にいてくれる。
彼は、……シローさんは優しい人だ。
私を追い出すことなんて簡単なのに、こうやって傍にいることを許してくれる。友達も、仲間も、シローさんがいたから手にすることができた。
もっと、近くに寄りたい。
ずっと、一緒にいたい。
彼の穏やかな寝顔を見ているだけで、きゅっと心が切なくなる。甘えるように寄り添って、彼に手を添えると、私を迎え入れてくれるように、そっと抱きしめてくれた。
眠っているのだから、きっと無意識のことだろう。
だけど、それでもよかった。
こうやって彼の傍にいられるだけで、私は幸せだった。
「……シローさん」
私は再び目を閉じて、眠りにつこうとする。
浅い呼吸を繰り返すと、彼の匂いが鼻孔をくすぐる。
『なぁ、ユーリィ。約束してくれ。本当に辛くなった時や、自分ではどうすることもできなくなったときは、助けを呼んでくれ。そうじゃないと、俺もお前を助けることができないんだ』
……はい、シローさん。
頭に蘇った言葉に、私は答える。
叶わない願いだとしても、彼の優しさに甘えたくなる。
きっと、この幸せの時間は長く続かない。
彼にも話していない私の過去が、全てをめちゃくちゃにしてしまうだろう。彼が私の正体に気づいて拒絶されるか。それとも彼らが、私のことを見つけて消しにくるか。
国境近くの街では何とかなった。だけど、次はどうなるかわからない。この学園にも帝国の人が、それも情報部の人間がいると聞いた。
どちらにしても、もう私には未来はない。
……私は『不幸体質』。
……幸せを願えば願うほど、不幸がやってくる。




