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第10話 「未来はない」

――◇――◇――◇――◇――◇―


 ……不幸体質。

 ……やっぱり私は、幸せになれないのかな。


 寝起きのまどろみの中、一人で思いにふける。


 私の体を流れる魔法の力。

 それは私に力を与え、誰かと戦うものなのに。

 ずっと、その力に苦しんできた。

 生まれたその瞬間から、この時まで。


 ……良いことなんて、ひとつもなかった。

 ……このまま、どうしようもない人生を送って、世界の片隅で死んでいくんだ。

 ……そう、思っていたのに。


『なぁ、ユーリィ。一番やってはいけないことはな。本当に辛いときに、一人で抱え込んでしまうことなんだ』

 

 あの時の、彼の言葉が蘇る。

 掃除道具室や空き教室を寝床にしていた頃、泊めてもらおうと彼の部屋を訪ねた。最初は一晩だけのつもりだった。翌日からは、どこか違う場所で寝泊まりをするつもりだった。


 それなのに、彼は私を受け入れていくれた。

 一緒にいてもいいと、言ってくれた。


 ……嬉しかった。

 ……本当に、嬉しかった。


 今まで良いことなんて、何一つなかった人生だったのに。


 ここに来てから、幸せなことばかりだ。

 自分の居場所ができた。

 友達ができた。

 仲間ができた。

 ……好きな人ができました。


「すぅー、すぅー」


 同じベッドで寝ている彼のことを見る。

 何の警戒もせず、私みたいな汚れた人間と一緒にいてくれる。


 彼は、……シローさんは優しい人だ。

 私を追い出すことなんて簡単なのに、こうやって傍にいることを許してくれる。友達も、仲間も、シローさんがいたから手にすることができた。


 もっと、近くに寄りたい。

 ずっと、一緒にいたい。


 彼の穏やかな寝顔を見ているだけで、きゅっと心が切なくなる。甘えるように寄り添って、彼に手を添えると、私を迎え入れてくれるように、そっと抱きしめてくれた。


 眠っているのだから、きっと無意識のことだろう。


 だけど、それでもよかった。

 こうやって彼の傍にいられるだけで、私は幸せだった。


「……シローさん」


 私は再び目を閉じて、眠りにつこうとする。

 浅い呼吸を繰り返すと、彼の匂いが鼻孔をくすぐる。

 

『なぁ、ユーリィ。約束してくれ。本当に辛くなった時や、自分ではどうすることもできなくなったときは、助けを呼んでくれ。そうじゃないと、俺もお前を助けることができないんだ』


 ……はい、シローさん。

 頭に蘇った言葉に、私は答える。

 叶わない願いだとしても、彼の優しさに甘えたくなる。


 きっと、この幸せの時間は長く続かない。


 彼にも話していない私の過去が、全てをめちゃくちゃにしてしまうだろう。彼が私の正体に気づいて拒絶されるか。それとも彼ら・・が、私のことを見つけて消しにくるか。


 国境近くの街では何とかなった。だけど、次はどうなるかわからない。この学園にも帝国の人が、それも情報部の人間がいると聞いた。

 どちらにしても、もう私には未来はない。


 ……私は『不幸体質シンデレラ』。

 ……幸せを願えば願うほど、不幸がやってくる。


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