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花の色は

作者: 榛李梓

 南から春一番が吹きました。

 冷たい雪も解けました。

 心がなんだか、(ざわ)めきます。



 日差しがもう少しあたたかくなったら、薄紅(うすくれない)の着物を纏いましょう。

 そっと(べに)を引き、(たお)やかに微笑めば、あなたはきっと、私に見惚れてしまいます。

 私を欲しいと仰るかもしれません。

 もしそう言われたら、私は何とお答えしましょう。



 雨が降り、燕が薫る風を連れてやって来たら、(みどり)の着物に着替えましょう。

 薄紅の着物のような華やかさはありませんから、あなたはお気に召さないかもしれません。

 その頃にはもう、盛りを迎えた他の可憐な花に、目移りしていらっしゃることでしょう。



 そんな事は無いと、あなたは仰るかもしれません。

 けれど私には分かります。

 うつくしさの盛りを過ぎた私では、たとえ道ですれ違っても、あなたはきっと、ちらとも見てはくださらないでしょう。



 そういうものと、分かっています。

 分かっているのです。

 人の心が移りゆくのは世の常なのだと。



 詮無き事をと、お笑いになるでしょうか。

 あわれな女のたわ言と、捨て置いてくださって構いません。



 でもほんの少しだけ、恨み言のひとつくらい、今は申し上げたい気分なのです。





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― 新着の感想 ―
[一言] うわ~ん、かっこいい! 昔私の親友にやたらと旧仮名使いの言葉を使うやつがいましたが、あれは憧れがそうさせていたのかも知れません。まぁ、今時の子供達は元々そういったものを目にしていないでしょう…
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