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誕生そして旅立ち8

 俺が焚き火にくべるための木の枝を集めてから帰ってくると、マーカスも同じように集めてくれていたのか、木の枝の山が出来ていた。俺が持ってきたのは口でくわえてくるしかなかったので、あまり量は多くない。何往復もしないといけないかと思っていたのでありがたかった。


「これだけあれば朝までもつだろう。何かあれば起こしてくれ。元冒険者だから直ぐに起きる」


 俺の集めた木の枝も加えた山を見ると、そう言ってマーカスもマントにくるまって寝てしまった。



 パチパチ


 木が燃える音がする。時刻はすでに深夜になっている。焚き火の音以外は何もしない静かな夜だ。巣を出てからこんなにゆっくりした時間は初めてだ。

 当初の予定とは大分違ってしまったが、明日には人の住んでいる街に着くだろう。


 フィーゲルの街は俺を受け入れてくれるだろうか。マーカス達はこれまで恩を売っているから味方をしてくれるとは思うが、この大陸ではドラゴンは恐怖の対象らしいから、難しい交渉になるかもしれない。

 交渉になったときのために、俺を受け入れるメリットについて考えておく。デメリットよりメリットが大きければ、恐怖心が有っても取り敢えず交流はしてもらえるかもしれないしな。


 メリットの1つは戦闘力だ。街は魔物に襲われる事が有るそうなので、俺がいれば防衛力が上がるだろう。だがこれはデメリットも有る。あまりにやり過ぎると更に恐れられかねないし、今の戦力でも十分なら俺はいてほしくないだろう。


 観光資源としてはどうだろうか?辺境の街に人を呼び込める可能性が有れば十分なメリットになると思う。元の生活と同じになりそうなため、あまり取りたくは無い手だが、状況によっては使わざるを得ないだろう。


 時々焚き火に木の枝をくわえ入れ、火が消えないようにする。いつまでも答えの出ない事を考えながら夜は更けていった。



 翌朝、空が白み始める頃にマーカスは起きてきた。直ぐに他の4人を起こしに行く。起きてきたところで朝食になった。もっとも昨日から変わらず木の実のみのため、飽きてきているように見えた。

 屋外でマント1枚だったにも関わらず、ぐっすり眠れたからか疲れは結構取れているようだ。


「今日は急いで街に戻るぞ。街に戻れば美味しいものも食える」


 マーカスの冗談に笑うことの出来るだけの余裕もある。どうやら今日中に街に着くことが出来そうだ。


 火の始末だけはしっかりとしてから出発する。こういうのをしっかりせずに火事にしてしまうと、騎士団に捕まってしまうことも有るのだとか。

 道中、昨日と違って余裕が有るからか、冒険者達も俺に話しかけてきてくれた。

 ウィルとコナンの2人は男の子らしく、強さに憧れを持っていて、ドラゴンに対しても恐怖心よりも憧れの方が強いらしい。度々どうすれば強くなれるかを聞いてくるが……正直に言おう、そんな事を(ドラゴン)に聞かないでほしい。

 俺が強いとしても、その強さは俺がドラゴンであるからこその強さだ。人間が真似しようとして真似できるものじゃ無いと思う。あんまりしつこく同じことを聞いてくるので、そういう事は先輩(マーカス)に聞け、と言って追い払った。

 俺の代わりに質問攻めにあっているマーカスを見て笑う。引率として付いているという事は、色々教えることは本来の仕事の内だと思うので、しっかりと教育してもらいたい。


 ローラとリナの2人は、ウィルとコナンと違ってまだ恐怖心の方が大きいようで、中々話しかけてきてくれなかったが、ローラの方が回復魔法について話しかけてきた。


「昨日の回復魔法ですが、私の治癒(ヒール)よりも効果が大きかったように思います。何か特別な事をしているんでしょうか?」

「昨日もマーカスに言ったが、特には何もしていないな。魔力を多目に込めたくらいだ」

「そこがよくわからないんです。魔法に使う魔力は魔法ごとに決まっているんじゃないんですか?」

「それはどういう事だ?」

「それはあたしも気になる」


 ローラが質問をしてきて、話の内容が魔力の込めかたになった時、リナも同じ疑問を持っていたのか、会話に入ってきた。

 

「例えば治癒(ヒール)を発動するのに1の魔力を使うとする。それを2の魔力を使って発動すれば効果は高くなるんじゃないか?」


 感覚的な話なので、口で説明するのは難しいが、どうにかそれっぽい事を説明する。


「なるほど。確かに通常は限られた魔力で発動回数を増やす事を考えますから、わざと魔力を多く使うことはしませんね。魔法が上手くなるに従って、使用する魔力量を減らす努力はしますが、増やそうとしたことはありませんでした」

「あたしも魔法の訓練は自分の持っている魔力量を増やす訓練と、使う魔力量を減らす訓練しかしたこと無いな」


 どちらも魔力を多く使うことはこれまで無かったらしい。だったら強い魔法が必要な時はどうしているのかというと、


「魔法には初級、中級、上級っていう順に強い魔法があるから、それを使うんだよ。あたしはまだ初級の魔法しか使えないんだけど」

「回復魔法にも治癒(ヒール)の上に高治癒(ハイヒール)という魔法が有ります。私もまだ使えませんが……」


という事だった。是非とも高治癒(ハイヒール)とやらを覚えて、魔力を多く込めた治癒(ヒール)とどちらが効率的なのか調べてみたいものだ。




誤字脱字等ありましたら連絡をお願いします。

読んでいただきありがとうございます。

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