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結婚騒動3

「ど、どういうことだ。俺は結婚したりしたつもりはないぞ」


 フリーダの言葉に一番驚いたのは俺だろう。知らない間に結婚させられているなんて恐ろしい。

 それにしても結婚が事実ならば、いったい誰と結婚している事になっている?そもそも俺自身が知らない情報をなぜフリーダは知っているんだ?はっ、まさかこいつ(フリーダ)が書類を偽造したんじゃあ……。


「何を考えているのか何となくわかるが、アークの結婚は正規の届け出だよ」


 俺がそんな疑惑の目で見ていると、その視線に気づいたフリーダはそう説明をした。


「そうは言われても俺は結婚した記憶は無いぞ。正規の届け出だったなら、俺は誰と結婚した事になっているんだ?」

「届け出は3年前だが、覚えていないのか?」


 3年前?俺がこの街に来たばかりの頃じゃないか。

 そんなタイミングで結婚なんてしていたら覚えていそうなものなのだが……。

 ふと、何かが頭に引っかかった。そう言えば、何かで結婚の書類を見た事があったような気も……。


「はぁ、結婚している事も認識していないなんて薄情な夫だな。妻として文句のひとつも言ってやったらどうだ、なぁマイラ?」

「へっ?」


 急にフリーダは、脇に控えていたマイラに声をかける。マイラは自分に話を振られるとは思っていなかったようで、驚いた顔をしている。

 だがもしかしてこのタイミングで声をかけるという事は、そういう事なのだろうか。


「おや?もしかして夫婦のどちらも自分が既婚者であるという認識がなかったのかな」

「ちょっと待ってください。話を聞いていると私がアークさんと結婚しているかのように聞こえますが?」

「その通りだよ。君とアークは書類上では婚姻関係を持っている事になっている」

「そんなバカな!?私も知りませんよ!」


マイラとフリーダが話している内容。3年前、俺とマイラで結婚、結婚の届け出。

 いくつかの言葉を聞いて、俺はあることを思い出した。


「思い出したぞ!マイラがビヤクダケを嗅いでおかしくなったときに、結婚の書類を持っていなかったか」

「そうそうそれだよ。その時に結婚届けが出されている」

「えっ、ちょっと待ってください。あのときギルドマスターは、書類は処分したって言ってましたよね」


 フリーダの返答を聞いてマイラもあのときの事を思い出したようだ。あんまりいい思い出ではないだろうから顔をしかめているが。

 だがマイラは書類を処分してもらったつもりのようだ。


「ああ、それは記憶違いだね。あのときは、適切に処理しておくけどそれでいいか?って聞いたんだ。

 君は、お願いしますって返事をしたから適切に処理しておいたよ」

「……適切に処分したんですよね」

「いいや。適切に処理(受理)したよ」

「何て事をしてくれたんですかー!」


 マイラの問いかけに、事も無げに答えるフリーダを見て、マイラが声を荒げる。


「あのとき私がビヤクダケの中毒症状で正気じゃなかったのはギルドマスターはよくご存じでしょう!?」

「知ってはいたが、あのときは書類を受理しなければ君に殺されてしまいそうな勢いだったからね」


 正当防衛だよ、とフリーダは言っているが、その表情を見るととても苦慮したようには見えない。

 むしろニヤニヤと笑っているように見えるので、結婚届けを受理したのはわかってやったのだろう。


「そ、そんな……」


 驚愕の事実を知り、地面に手をつくマイラ。


「だったら別れてもらえばいいんですね」

「確かにそうすればいいかもしれないが、離婚歴があるものは女神の祝福を受ける事が出来ないんじゃなかったかな?」

「……その通りです。そんな、このままじゃ私は……」


 なるほど、離婚歴があると女神の祝福を受ける事は出来ないんだな。

 確実に成功すると思っていた秘策が失敗に終わった事を知り、マイラと同じようにテレサも地面に手をついてしまった。

 落ち込んでいるテレサにフリーダが声をかける。


「離婚も外聞が悪いだろうから、あまり勧めたくはないが、実はひとつだけいい解決方法がある」

「どんな方法ですか」


 フリーダの言葉に希望を持ったのか、テレサがすがるような視線を向けた。

 絶望の縁にいるときに現れた希望にすがりたい気持ちはわかるが、俺としては、口ではいい方法と言っているが、その表情を見るとあまりいい方法だとは思えない。絶対楽しんでいるよなあ。


「平民に重婚は認められていないが、貴族には認められている。つまりアーク君が貴族となれば、妻が二人になっても問題はないんだ」

「平民がそんな簡単に貴族になれるわけがないじゃないか。そもそも俺はドラゴンだぞ」

「そうだな、確かに国に仕える貴族になることは出来ないだろう。だが特定の資格をもった冒険者は貴族として扱われる。冒険士爵と言われるものだ。

 その条件は4星以上であることのみ。つまり冒険者ギルドで冒険者として認められているアーク君は4星にさえなれば冒険士爵の資格を得ることが出来るというわけだよ」

 



お読みいただきありがとうございます。

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