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誕生そして旅立ち3

本日3話目です。次は20時に投稿します。

 巣から旅立って1日、空が茜色に染まりだした頃、西の海岸線に到着した。

 聞いた話では、西大陸へはここから船で1週間程度という事だった。船で1週間というのがどれくらいの距離なのか、正確にわからないのが心配だが、シグニア聖龍国では移動の際、まだ馬車がメインのようだったので、それほど高性能な船は無いと思う。馬車がメインの時代の船ということならば、恐らく帆船になるだろう。帆船ならどんなに速くても時速20kmも出ないと思うので、船で1週間かかる距離でも俺が飛べば1日で到着すると思う。 


 今日1日飛んだ限り、丸1日飛び続けても問題無さそうだ。最悪徹夜で飛び続けることにする。

 海越えを明日することにして、今日は早めに休息を取ることにした。



 翌朝、前日と同じように日の出と共に飛び立った。眼下に青い海を見下ろしながら飛ぶ。日の光が海面に反射してとてもきれいだ。と、思っていると、先程まで綺麗な青色だった海が黒くなっていた。見ているとどんどん黒くなっているような?

 何か嫌な予感がして高度を一気に上げる。まだまだ嫌な予感が消えないので更に上へ。ここまで来れば、というところまで高度を上げた時、海から何かが飛び出してきた。話に聞いていた、海に住み着いた巨大な化け物。

 その姿は鯨に似ていた。違うのはそのサイズだ。恐らく全長は1000mを越えるだろう。上から見ることが出来たため、口の中も見えた。鋭い歯が並んでいたので鯨よりも鮫に近いのかもしれない。

 空を飛んでいた俺を喰おうとしていたのだろう。さっきまで飛んでいた高さまで口が到達している。


 流石は異世界、あんなのに襲われたら人間の船なんてひとたまりもないだろう。西大陸に向かう事が出来なくなるわけだ。

 海に戻った鯨モドキに再度襲われる前に、スピードを上げて海域を離れる。すでに諦めていたのかはわからないが、再度の襲撃は無かった。

 しかし困ったことになった。しばらく飛んでいてわかった事だが、高い所を飛ぶのは低い所を飛ぶよりも疲れるようだ。水面効果というやつが効いているのかもしれない。出来れば低い所を飛んでいきたかったのだが、さっきのようなやつがいる以上高度を落とすわけにもいかない。出来る限り省エネで飛ぶ必要がありそうだ。



 早まったかもしれない。さっきから何度も同じ考えが頭に浮かぶ。すでに日も落ち、周囲は暗くなっている。

 最悪夜も飛ぶつもりだっただろうって?そりゃあ丸1日飛ぶ覚悟はしていたが、今は2日目の夜(・・・・・)だ。疲労もたまってきているが今更戻るだけの体力も残っていない。

 昼間は見渡す限り1面に海が広がっていて、島陰1つ存在しなかった。今は暗くなっているため、視界は狭いが下が海なのは何となくわかる。


 こんなに飛び続けることになるなんて思ってもいなかった。可能性としては、船の速度が想像よりも速くて1週間でかなりの距離を進んでいたか、飛んでいる間に進む方向がずれて、真っ直ぐ西大陸に向かえていないことが考えられる。

 前者は、魔法が有る世界だから前世よりも船速の速い船が有るのかもしれない。魔導船なんて物が有って帆船よりも速いのかもしれないと今更ながらに思った。

 後者は広い海の上で何も目印が無いので、太陽の出ている昼間はともかく、夜の間に西からずれたのかもしれない。

 予想外の状況になり絶望に襲われる。いつまでも飛び続けることは出来ないが、海面に降りれば命の保証はない。西大陸に近づいていると信じて飛び続けるしかなかった。



 水平線が明るくなりまた夜が明ける。ついに飛び続けて3日目に突入する。

 だが明るくなり視界が広くなると同時に俺は喜びに包まれた。地平線の先に、僅かに山のようなものが見えるのだ。方向は進行方向とは少しずれており、南に進路を変える必要がある。やはり進路がずれていたようだ。

 それにしても襲撃を避けるためとはいえ、高度をとっていて良かった。今の位置でギリギリ見えるので、当初の予定通り海面近くを飛んでいたら見落としていたかもしれない。

 あの距離なら、あと1時間ほどで着くだろう。疲れた体に鞭打って、俺は山に向かって進路を変え飛んでいった。



 疲れた。1時間で着くと思っていたが、見込みが甘く陸地まで到着するのに2時間ほどかかった。すぐにでも休みたかったが、陸の状態を見て、甘い考えだと思い知らされた。

 陸地に近づき初めてわかったが、海岸線に沿って高い山々が連なっている。海側は岩がむき出しとなっていて、生物の住める環境ではなさそうだ。傾斜も急になっており、体も休められそうにない。


 山を飛び越えるのも難しそうに思っていたが、幸い近くに山の切れ目があったため、そこを飛び越える。山地を越えるとその向こうには、鬱蒼と生い茂る巨大な森林地帯となっていた。

 山地と森とが接している崖に、ちょうど休めそうな洞窟があった。中に入ってみるとすぐに行き止まりになっており、先客がいる様子もなかった。

 疲れきっていた俺は、周囲の安全確認もそこそこに体を丸めるとすぐ眠りについた。


 

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