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冒険者生活6

昨日投稿した前話ですが、投稿後最後の数行が消えているのがわかったため、追加しています。

話の流れは変わっていませんがご確認ください。

 フィーゲルの街から出て西へ飛ぶこと1時間。目の前に石柱群が姿を現した。数はおよそ100本といったところだろうか。

 マイラから石柱と言われてもどんな物なのかイマイチ想像できていなかったが、あれだ、仙人の住んでいそうな山、で通じるだろうか。永い間風雨に打たれ削られて作られたのであろう、自然の芸術がそこには有った。

 そんな石柱の上へと降り立つ。眼下を覗き込むと、石柱を巣にしていると言われたアッシュホークの姿が見える。多数が空を飛んでいるのが見えるが、こちらを気にしこそすれ襲ってくる様子は見られない。

 そう、アッシュホークの縄張りは石柱の途中までで、頂上付近は縄張りから外れているようなのだ。そのお陰で煩わしい攻撃に晒される事も無く、キセキダケの捜索に取り組む事が出来る。

 俺は出発の直前のマイラの説明を思い出していた。



「キセキダケの見本は冒険者ギルドにもありませんでしたが、薬師ギルドに勉強用の本が有り、そのなかに絵が有りましたので借りてきました。それによると、小さな傘に黒い斑点が有るそうです。似たキノコも多いそうで、間違えないように注意、と注意書きが入っています」


 そう言って本を開いて見せてくれる。そこに有る絵は、マイラの説明の通りの姿をしていた。



 本を直接持ってくる事は出来なかったので、記憶頼りなるがそれほど難しい事では無いので気楽に探していく。20年前に研究者が登って以降、誰も登っていないはずなので、取り尽くされているという事も無い。

 石柱は直径が30m程度なので、捜索にそれほど時間はかからない。石柱の上でどうやって生息しているのかと思ったが、頂上付近には樹木も有り、その根本や岩影にキノコを見つけた。見つけたのだが……

 どうせ誰も来ないので、適当に目についたキノコを引っこ抜いていたのだが、どうも目的のキセキダケではなさそうだ。


「こっちのは傘の色が違う。こっちは斑点が無い。これは形から違う。これも違いそうだな。何だこのピンクのキノコは?おっ、1本見っけ」


 マイラから、キセキダケ以外にも貴重なキノコが生えているかもしれないので、キセキダケ以外でも持って帰ってくるように言われていたのでいいのだが、肝心のキセキダケがあまり無い。

 依頼は1本からでも達成扱いにはなるのだが、もう少し数がほしいな。万能薬の材料との事だったので、次々に石柱を移動していった。


 いくつかの石柱を移動した結果、ある事がわかった。キノコは石柱ごとに種類に大きく差が有るのだ。

 ある石柱には赤い傘を持つキノコばかり生えていた。その隣の石柱には黄色い傘を持つキノコばかりだった、という具合だ。時々様々な種類のキノコが生えている石柱も有り、俺が最初に降りた石柱もそれにあたる。

 その事がわかった後、俺は次々と石柱を移動していた。特定の種類ばかりが生えている石柱が有るのなら、その中にキセキダケばかり生えている石柱も有るのではないかと思ったのだ。

 結果的にその考えは当たっていた。20本程の石柱を調べた後、キセキダケばかり生えている石柱を見つけたのだ。

 取り尽くさなければまた後で取りに来る事も出来るし、多分増えてくれるだろうから、袋が一杯になった時点で採取を終了した。まだまだ大量に残っているので、在庫がまだ必要だったらまた来ようと思う。



 フィーゲルの街に戻った俺は、門番にマイラを呼んでもらうように声をかけた。珍しくマイラが俺の家にいなかったためだ。声をかけた門番は、俺に対してちょっとビビっていたようだが、きちんと対応してくれた。

 こういうのを見ると徐々にではあるが街に溶け込めていっているんじゃないかと思う。


 家で待っていると直ぐにマイラが来てくれたので、取ってきたキセキダケを見せた。


「あっ、ちゃんと有ったんですね。これだけあれば十分な量の万能薬が作れるかと思います。……そちらの袋は?」

「キセキダケ以外にもいろんなキノコが生えていたから適当に持ってきた。鑑定の出来る所に持っていってくれないか」

「わかりました。少し見せてもらいますね」


 マイラはそう言って、袋に詰められたキノコを確認しはじめた。


「これは食用になったと思います。これも食用ですね。こっちは薬になったと思います。これは狩猟にも使われる毒キノコです。大型の魔物でも1本で昏倒する代物ですね。これは……見たことがありません、何のキノコでしょうか」


 意外だったが、マイラはギルドの受付嬢としてか、キノコの鑑定も出来るようだった。しかし、大半のキノコはわかるようだったが、いくつかわからない物も有るようで、薬師ギルドの本を片手にキノコとにらめっこをしている。


「そこまでわかれば後は専門家に聞けばいいんじゃないのか?」

「冒険者の採取品を鑑定出来ないとなると、受付嬢としては死活問題なんです。今回は仕方がありませんが、勉強しておきますね。それにしてもこのキノコ、何てキノコなんでしょうか?こんなに目立つから名前も知られていそうなものなんですが」


 マイラの言葉から考えると、普通採取品は受付嬢が鑑定するらしいな。それなのにわからないものがあったのが悔しかったみたいだ。俺が持ってきたキノコの中でも、最も目立つピンクのキノコを手にしている。ピンクのキノコ……何か卑猥だな。

 諦めきれないのか、マイラはそのピンクのキノコを調べ続けていた。傘の裏を見てみたり、匂いを嗅いでみたり……そしていきなり、何の前触れもなく倒れてしまった。



 

誤字脱字等ありましたら連絡をお願いします。

お読みいただきありがとうございます。

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