表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/57

誕生そして旅立ち2

本日2話目です。次は19時に投稿します。

 世界が変わっても変わらない物もある。それは生命の営みであったり、ーー重力の存在だったりする。

 俺が白い光に意識を飲み込まれた時、その体は空の上にあった。つまり何が言いたいのかというと、当然俺の体は地上に落下するということだ。



 強い衝撃を受けて意識を取り戻す。痛みでろくに動くことも出来ないが、少しは動かすことの出来た首を動かし周囲を見回す。周りを見る限り森に落ち、その衝撃で目を覚ましたようだ。

 飛行中で高度をとっていたため落下の衝撃だけでもかなりのものになったと思うが、森に落ちたため木々がクッションになってくれたらしく、周囲に木の枝等が散乱していた。


 周りを見回した後、自分の体を見てショックを受けた。手足も無事とは言えないが、尻尾や翼などの体の末端部、厚みのない部分が炭化していた。

 炭化した体に衝撃を受けていると、急に太陽の光が遮られた。見ると母がこちらに向かってきている。


 俺の元に降り立った母は、俺が生きているのを確かめると何やら呟く。すると、俺の体が光に包まれて全身の傷が治っていった。炭化していた箇所すら元のきれいな姿に戻っていく。ドラゴンが居るような異世界だったので、ひょっとしたらあるかもしれないと思っていた"魔法"しかも治癒魔法のようだった。

 この世界でも初めて見る魔法に感動し、母に色々聞いてみようとしたのだが、母は何も言わずに俺を巣に連れ帰っていった。



 有無を言わさず巣に連れ帰された後は説教が待っていた。ほとんどは山から出た事に関するものだったが、その中で、ドラゴンを狩る冒険者の話が出てきて驚いた。

 超一流の冒険者の中にはドラゴンを狩ることの出来る者もいるらしい。実際にはこの国は聖龍を守護龍としているため、狩られるような事は無いそうだが、改めて自分がドラゴンに転生したというのを認識した。


 ちなみに冒険者というのは所謂何でも屋さんで、国家を跨いで存在する冒険者ギルドという組織から依頼を受けて活動している人達の事を言うらしい。


 お説教が終わってから、母から先程の魔法について教えてもらった。やはり予想通り回復魔法で、"治癒(ヒール)"と言うらしい。詳しく聞いてみると、聖龍は名前に聖と付くだけあって聖魔法に適性があり、聖魔法の中に回復魔法があるらしい。聖魔法には他にもあるらしいが、自分で傷を治すために、とのことで治癒(ヒール)だけ教えてもらえた。

 魔法を使うには適性と体内魔力があれば、使いたい魔法を理解してからその魔法に対応した呪文を唱えればいいらしくて、治癒(ヒール)は簡単だったためすぐに覚えることが出来た。使い続ければ魔力効率がよくなるそうなので、小まめに使うようにしようと思う。








 人里を探して巣を出て連れ戻されてから、王家の人間が2回訪ねてくるほどの月日が経った。つまり2年以上経った事になる。

 あのような事があってなお、俺の外への思いは消えなかった。しばらくは巣から離れることも許されなかったため大人しく過ごしていたが、動けるようになってからはまた旅立ちための準備を始めた。今度は見学程度ではなく、本格的に外の世界で生活するつもりだ。最も、何も考えずに外に出ても、同じような結果になるのは目に見えているため、今度は細かな計画を立てた。


 旅立つために考えなければならない問題は2つあった。1つは前回撃墜された白い光である。

 あの俺を撃墜した白い光は、父の龍の息吹(ドラゴンブレス)だった。射程がとんでもなく長く、速度もかなりのものを誇るが、欠点もある。ブレスであるために直線にしか飛ばないということと、地面に向けて撃つ事が禁じられている事だ。あまりの威力のため、地面に向かって撃つと地形が変わってしまい周囲に大きな被害が出てしまうらしい。

 つまり父のいる場所よりも低い所を飛んでいればブレスは飛んでこないということだ。幸い父のいる巣は山の中腹にあるため、地表すれすれを低空飛行していけばブレスを撃たれる事は無いと言える。


 次の問題は目的地である。前回巣を出ようとした時には知らなかった事だが、俺が今いるシグニア聖龍国は、この大陸最大の国であるため、各国に強い影響力を持つ。なのでシグニア聖龍国の影響の及ばない場所に行かなければ、遠からず連れ戻されてしまうだろう。正直この問題をクリアするのは難しいと思っていたのだが、偶然に王族の人達の話を漏れ聞いて解決した。

 話の内容は、この大陸の東側にある別大陸との交流の話だったのだが、その際西側の話が出てきた。東大陸は俺の今いる大陸と距離が近く、頻繁に人の往来があるそうなのだが、西大陸とは距離も離れていて、全く往来がないらしい。以前は多少は交流もあったそうだが、20年前に西の海域に巨大な化け物が住み着き、船を沈没させるようになったため、誰も海を渡ろうとしなくなったそうだ。

 20年間人の往来がない大陸、そこならシグニア聖龍国の影響力も及ばないだろう。俺は空を飛べるため化け物とやらも関係ない。自由に生きていくためにちょうどいいので、目的地は西大陸に決めた。



 全ての問題に解決の目処がたち、旅立ちの日を迎えた。日の出とともに飛び立つ。前回とは違い、巣が見えなくなるまで低空で飛び続ける。特に問題もなく巣から離れる事が出来た。

 目指すは西大陸。そこに新しい生活が待っているはずだ。

 大きな期待を胸に、俺は更に飛行速度を上げた。

誤字脱字等ありましたら連絡をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ