冒険者生活1
フリーダが去った後、マイラにエルフの宗教観について聞いてみた。すると自然崇拝をしているのは事実のようなのだが、ドラゴン至上主義に関してはドラゴンのドの字も出てこなかったので、一般的では無いようだった。
良かった。エルフにとって、ドラゴン至上主義が一般的なものだったら、今後エルフには近寄らないようにしないといけないところだった。
もっとも、1番身近なエルフがドラゴン至上主義者だということには変わりはないので、気休めのような安心だったが。
「それで何故ここへ?今日は休むと伝えていたはずだが?」
実際は来てくれていなかったら、フリーダが大人しく引き下がってくれたかわからないので、内心では大いに感謝しているのだが、疑問に思ったので聞いてみる。
「ギルドマスターとほとんど同じですよ。アークさんの家が完成したというので様子を見に来たのと、何か必要な物がないかの確認です。何かいる物はありませんか?今なら私が買ってきますよ」
「ありがたい。だが今のところ欲しい物は無いな」
「そうですか。そういえば、先程までギルドマスターが使われていた机と椅子は、ギルドマスターがお持ちになったものですか?」
「いや、この部屋の横に人間用の生活空間が作られていてな。そこから持ってきたようだ」
「そんな場所が有るんですか!?」
隣接している空間について教えると、驚いた様子で隣の空間を見に行った。
「十分に生活出来る環境のようですね。ここに私物を持ち込んでも構いませんか?」
「別に構わないが、私物なんて持ち込んでどうするんだ?」
「日中ここで過ごそうかと」
「俺は構わないが、いいのかそれ?」
「大丈夫ですよ、私は専属ですからね。通常業務はする必要もありませんし、担当する冒険者の生活環境の調査確認は業務の内です。(給料が減るんだからこれくらいの役得がないと)」
要するにサボりなんじゃないのかと心配する俺に対して、マイラはあっけらかんと笑ってそう答えた。ドラゴンは耳も良いのか、後半の呟きまで聞き取れてしまったが、それは黙っていた方がいいんだろうな。すいません、頑張って稼ぎます。
後半の呟きを聞いてしまったせいで微妙にいたたまれない気持ちになっていると、マイラは何かを思い出したのか鞄の中を見ていた。
「あっそうそう。もう1点こちらに来た理由が有るのを忘れていました」
そう言ってマイラは何枚かの紙を取り出して、こちらに見せてきた。何か書いてあるようなので読んでみる。
「何々、ゴブリン討伐、ワイルドボア討伐、薬草採集に木材運搬か。依頼のようだが、これがどうかしたのか?」
「今言われた通り、これらは冒険者ギルドで受けられる依頼になります。これらの依頼は、初心者用の依頼の中でも期限の決められていないものとなります。いわゆる常時依頼と言われるものです。
アークさんは初心者用の依頼がいいと言われていましたので、どのような依頼をご紹介するかを考えていたのですが、ドラゴンの冒険者となると、史上初めてとなりますので、何か問題が起きた際に、対処のしやすい常時依頼をお願いしようと思いましたが、これでよかったでしょうか?」
「それで大丈夫だ。色々考えてくれてありがとう。問題無く依頼をこなせたら、それ以外の依頼も紹介してくれ」
何の用かと思っていたら、明日からの依頼についての相談だったらしい。確かに思ってもいなかった問題が起きる可能性もあるな。そういった意味でも期限が決まっていないというのは助かる話だ
問題無いことを伝えると、マイラはホッとしたようだった。
「良かったです。この依頼は初心者でも簡単に達成できるような依頼なんですけど、冒険者を甘く見ているような新入りさんに紹介すると、もっと難しいものがいいとか言って受けてくれない人もいるんですよ。
期限が決まっていないので、依頼の受注から達成報告までの流れを覚えるにはいい依頼なんですけどね」
「こちらのことをおもんぱかってくれて提案してくれているものを拒否はしない。」
紹介された依頼を拒否するような冒険者は、何故その依頼を紹介されるのかを考えていないんだろうな。自分の命が懸かってくる事にもなりかねないのにな。
「それから、討伐依頼や採取依頼は、事前に依頼を受けていなくても、必要とされているものを持っていれば依頼達成とする事が出来ます。もちろん常時依頼でないものは都合よく依頼が有るとは限りませんので、基本的に前もって依頼は受けておく方がいいです。
また、魔物の毛皮等の素材は冒険者ギルドで買い取る事もしています。必要としているお店に直接買い取り交渉をしてもらっても構いませんが、冒険者ギルドならば全てを買い取る事が出来ますので手間はかかりません。品質によっては買い取り価格が上下したり、あまりに状態の悪いものは買い取りを拒否される事もありますので注意してください。
今のところ私からは以上ですが、何か聞いておきたい事は有りますか?」
「大丈夫だ。何か有ったら直ぐに聞かせてもらう」
「わかりました。明日から本格的に始めますので頑張っていきましょう」
そう言って突如始まったマイラの依頼講座は終了した。
誤字脱字等ありましたら連絡をお願いします。
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