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辺境の街フィーゲル6

「ではマイラ、挨拶も終わったようだし、アークの冒険者登録をお願いするわ。外でやらないといけないから、用紙と机を持ってきてちょうだい」

「わかりました。準備します」


 マイラが冒険者ギルドに荷物を取りに戻ると、フリーダが俺の側に寄ってきた。


「色々文句は言っていたけど、仕事に関してマイラに間違いはないわ。仕事は早いし、不正や書類の不備の見逃しはないから心配しないで。婚期は見逃し続けて行き遅れと言われているけど。あいたっ」

「余計なお世話です!」


 マイラについて教えてくれていたのだが、最後にペンが飛んできてフリーダの頭に当たった。ペンの飛んできた方向を見ると、マイラが机を脇に置いて、いきり立っていた。

 前半はともかく、後半は悪口だったから自業自得か。


「何するのよ。せっかくギルドマスター自ら専属になる娘の紹介をしてあげていたのに」

「自己紹介くらい自分で出来ます。それに何が紹介ですか、後半は全く必要ないじゃないですか。まったく、早く戻ってきて良かったです。あのままだと何を言われていたかわかったもんじゃありません」


 机も持ってきているし、恐らく用紙も持ってきているのだろう。成る程、確かに仕事は早そうだ。


「はあ、アークさん、こんなギルドマスターは放っておいて冒険者登録を進めましょう」


 用紙を取り出しつつ、先程フリーダに向かって投げつけたペンを拾い上げる。


「この用紙に記入してもらうんですが、アークさんはペンが持てそうにありませんので代筆しますね」

「そうだな、お願いする」


 俺の手を見て、代筆を提案してくれたのでお願いする。とてもじゃないが、ドラゴンの(前足)でペンを持つのは不可能だ。


「記入する内容は、名前、出身地と職業になります。名前はわかるので、後は出身地と職業なんですが、出身地はともかく職業はどうしましょうか?」

「出身地はシグニア聖龍国になるんだが、職業か。空欄という訳にはいかないのか?」

「出身地はシグニア聖龍国っと、聞いたことの無い国ですね。職業欄はまだ冒険者になったばかりの人が、空欄で提出される事もありますので空欄にしておきます」

「ちょっと待って、シグニア聖龍国って事は、君は東の大陸からやって来たの!?」


 記入が終わったかと思ったら、フリーダが口を挟んできた。


「そうだが、知っているのか?」

「知っているのは名前だけよ。東の大陸とは20年くらい前から交流が無くなっているはずだけど、航路が使えるようになったのかしら?」

「いやそうじゃない。1人で空を飛んできたんだ」

「そうだったの。かなり距離があるはずだけどよく飛んできたわね」

「実際かなりギリギリだったけどな」


 もう1回やれと言われても絶対にやらない。


「聖龍国と言えば、聖龍がいたはずだけど何か関係があるのかしら?」

「俺の父親の事だろう。本人が言っていたから間違い無いはずだ」

「国の宝みたいなものじゃない。よく出国を認められたわね」

「別に認められて出てきた訳じゃない。家出みたいなもんだな」

「……君が原因で戦争とかにならないわよね」

「まさか、そんな事にはならないだろう」


 フリーダが縁起でもない事を言い出したので否定しておく。聖龍はあの国にとって守護者ではあるが所有物ではないからな。


「アークさん、ギルドカードが出来たのでお渡ししておきますね。初回の発行は無料ですが、次回からは有料になりますので、紛失などしないようにお願いしますね」


 俺とフリーダが話をしている間に、マイラはギルドカードを発行しに行ってくれていたようだ。真新しい金属版を見せてくれる。


「このカードがあれば、各地の関所を通ったり街に入る事が出来ます。身分証明書替わりにもなりますので、すぐに取り出せるようにしてください。アークさんの場合は首に掛けておきましょうか?」

「そうだな、その方がいいだろう。何か掛けるための紐のような物をもらえないか?」

「わかりました。ちょっと待っていてください」


 そう言うとマイラはギルドに入っていき、直ぐに戻ってきた。


「魔物素材ではありませんが、丈夫な紐になりますので、取りあえずはこれで大丈夫だと思います。アークさんがいい素材を手に入れたら交換しましょう」


 マイラがギルドカードを首に掛けてくれた。紐は何かを編み込んでいるようで、十分な強度が有るように見えた。


「ここからは冒険者について説明しますね。冒険者は能力や実績によって、1星から7星までランク分けされています。冒険者になったばかりの人は1星になります。アークさんも今は1星になります。ランクを上げるには依頼を達成していき、ギルドからの評価を上げる必要があります。3星と5星に上がる際は試験も有るのですが、それはその時説明します。

 冒険者への依頼は、冒険者ギルドに掲示してあります。早い者勝ちなので、皆さん朝早くに依頼の確認に来られます。依頼には(ランク)の制限が有る場合がありますで注意してください。アークさんはギルドに入れませんので、私が依頼を選んでおきます。何か希望があれば早めに言っておいてください」

「わかった。最初は初心者用で頼むよ」

「説明は大体終わったわね。もうすぐ日も暮れるし、切りもいいから今日はここまでにしましょう。マイラ、アークの家が出来次第、朝、アークの元に依頼を持って行くようにして。休みの日は前もって私に伝えてもらえば、私が代わるわ。アーク、君が街に入る時は門番に私を呼ぶように伝えてちょうだい。決して勝手に入ったりしないようにね。こまめに顔を見に行くようにはするわ」


 説明も終わったため、今日は解散となった。門までフリーダに着いてきてもらい、そこで別れる。俺用の家は明日から建設が始まるとの事だったので、今日は適当な所で休もうと思う。

 街道から外れようとしたところで、誰かが街道を歩いて街に向かって来ているのに気が付いた。


「よおアーク、1日に2往復は流石に疲れたぜ。無事に冒険者登録も済んだみだいだな。これからよろしく頼むな」


 その誰かはマーカスだった。そう言って街に入っていく。

 そういえば迎えに行くつもりだったのを忘れてた。黙っておこう。







誤字脱字等ありましたら連絡をお願いします。

お読みいただきありがとうございます。

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