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辺境の街フィーゲル4

「では結論も出たところでそちらのドラゴンを紹介してもらえないかな?」

「そうですね」


 結論も出て、話が落ち着いたところでようやく挨拶が出来るようだ。


「辺境伯様、こちらが今回冒険者となりますドラゴンのアークです」

「初めまして、辺境伯様。アークと申します。今日からこの街でお世話になりますので、よろしくお願いします」

「ああ、これからよろしく頼む。共にこの街を発展させていくのに協力してくれ」


 フリーダの紹介で辺境伯に挨拶した。これでようやく全てが終わったようだ。考えてみると俺は全然話してないな。

 辺境伯達も引き上げるようだ。見送ろうとしていると、


「茶番に付き合わせて悪かったな。領民を納得させるために必要だったのだ」


 帰り際、辺境伯が近くにやって来て、俺にだけ聞こえるように小さく呟いて帰っていった。

 帰り際の言葉はどういう意味だろうか?ひょっとしたら街に受け入れる事は最初から決まっていたのかもしれないな。


「アーク、今後の事を話し合いたいのだが時間をもらえないか?」


 辺境伯の言葉の真意を考えているとフリーダから声をかけられた。そうだな、今は答えの出ない問いを考えるよりも、今後の自分の生活のために時間を使うべきだろう。

 そう考えてフリーダの元へ向かう。

 何か忘れているような気がするのだが、気のせいだろうか?



「こっちだ、ついてきてくれ」


 フリーダについていくと、北門の外に出て直ぐの所に有る広場に案内された。


「先程の話し合いの中に有った通りだが、こちらの広場で寝起きをしてもらいたい。今は何もないが、建物を建てようと思っている。何か希望は有るか?」

「寝具を使うような生活はしていないからな。雨風を防げるようにしてほしいのと、寝床に雨水が入ってこないように床を一段高くしてほしいくらいだ」

「それくらいなら直ぐに出来るだろう。流石に何日かはかかると思うがそれまでは我慢してほしい」

「わかった」


 着々と自分の生活基盤が固まっていく様子にわくわくする。後は冒険者として働いていけるかだ。


「冒険者になるには何か必要なのか?」

「そうだな、まずは冒険者登録を済ませてしまおう。私と一緒なら街に入って構わないとの事だから、今から一緒に冒険者ギルドに行こう。色々と説明しなければならない事も有るからな」


 フリーダと共に冒険者ギルドに向かうという事で、初めてフィーゲルの街に足を踏み入れた。



 フィーゲルの街は辺境に有るが、辺境最大の街なだけあって大勢の人が住んでいる。当然街の中に入れば、その生活感を感じる事が出来るはずなのだが……。


「誰も居ないな」

「プッ」


 俺の呟きに、フリーダは思わずといった感じで吹き出した。


「アハハ、悪く思わないでくれ。辺境伯は街へ入る事を許したが、多くの住民達にとってドラゴンというのは恐怖の対象なのだよ。君がこの街で暮らし続ければやがて落ち着いてくるだろう」


 そういう事か、確かに俺が住人でも恐怖するだろう。住民として人の中に入っていける日が早く来るといいな。

 北門から続く大通りを進んでいくと、一際大きな建物が見えてきた。どうやらあの建物が冒険者ギルドらしい。

 冒険者ギルドに近付くにつれて、人の姿が増えてきた。武器を持っている者が多いところを見ると冒険者のようだ。


「おい、あれ……」

「マジか。本物かよ」

「前を歩いているのはギルドマスターじゃねーか!?」


 ざわめきは聞こえるが、流石は冒険者といったところか、一般住民とは違い、俺の姿を見ても落ち着いているようだ。

 俺が何を考えているのかわかったのだろう、フリーダが話を始めた。


「冒険者は依頼をこなす中で、格上の魔物と遭遇する事も有り得る。そんな時に怖がっているような人間は生き残れない。命の危機に陥った時にどうやって生き残るか。生存能力こそが冒険者に最も必要な能力だと、私は思っているよ。

 危険的な状況でこそ、落ち着いて考え行動できる者が一流の冒険者だ」


 冒険者と聞くと派手な戦いのイメージを持っていたんだが、それだけでは無いという事だな。


「……大丈夫だって。心配しすぎだよ。わたしにかかればその程度大したこと無いから~」


 冒険者ギルドの前でフリーダの話を聞いていると、冒険者ギルドの中から4人組のパーティーが出てきた。全員が10代後半くらいで、男1人、女3人でパーティーを組んでいるようだ。

 その女の内、1人が他のパーティーメンバーに話しかけているため、後ろ向きに歩いている。周囲に気を配っている様子にも見えないため、非常に危なっかしい。

 こっちに向かって来たため避けたかったのだが、道幅の関係で避けられそうにない。声をかける間も無く、ぶつかって転んでしまった。


「あいたっ。誰よっ!道の真ん中で突っ立って……るんじゃ……」


 前を見ずに歩いている方が悪いと思うのだが、街に着いた直後に問題を起こしたくもない。取り敢えず謝っておこう。


「すまな「キャアーーー!!いやっ、何でドラゴンが!?助けて、私は美味しくないわよ。いやーーーおかーさーん。いやっいやっ……」」


 謝ろうと思ったら、パニック状態になってしまった。どうにか落ち着かせないと。


「おい、俺は別にお前を食べたりなど「食べっ……キュウ」」


 しないと言いたかったのだが、その少女は俺が話しかけた直後にグルンと白目を剥いて気絶してしまった。

 あ、ズボンの股間の辺りの色が変わってきている。漏らしちゃったのか。

 俺から起こした騒動では無いとはいえ、俺の責任になるのだろうか?




誤字脱字等ありましたら連絡をお願いします。

お読みいただきありがとうございます。

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