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辺境の街フィーゲル3

 マーカスを置いてフリーダを背中に乗せる。冒険者を束ねるギルドマスターなだけあってか、軽やかに俺の背中に跨がった。


「流石に馬とは違いますね」

「あまり飛ばすつもりはないが注意してくれ。まあ落ちても直ぐに拾うがな」

「気を付けましょう。では向かってください」


 準備が出来たようなので飛び上がる。マーカスを見ると、大好物をお預けされた子供のような顔をしていた。



 飛び始めて数分、元々見えていただけあって間も無くフィーゲルの街に着くのだが、フリーダの様子がおかしい気がする。それも恐怖で様子がおかしい訳ではないようだ。

 高速で飛んでいる訳ではないが、飛んでいるので耳元には風切り音がしているのだが、音の切れ目切れ目にハアハアという呼吸音が聞こえるのだ。そして背中に頬擦りし、撫で回しているような気がする。

 はっきり言おう。俺は恐怖している。人ではない何かとんでもないものを背中に乗せてしまったんじゃないだろうか。


「どうかしましたか?」

「いや何でもない。揺らしてしまってすまない」


 恐怖のあまり身震いしてしまったら、揺れに気付いたのかフリーダが声をかけてきた。背中の気配も元に戻った。良かった、今のが何だったのかはあまり考えないようにしよう。


 そんなやり取りがあって直ぐ、フィーゲルの北門に到着した。

 入口付近には騎士らしき人達が列をなしており、まるで戦争に出陣するために並んでいるようだ。これが俺に対する布陣でなければ、この勇壮な姿をじっくりと見ていたかった。

 布陣の中央に居るのが辺境伯なんだろうな。


 門に近づき着地する。その姿に騎士達からざわめきが起きる。体勢を整える前に、フリーダが背中から飛び降りた。


「辺境伯様、ただいま戻りました。結論についてご報告させて頂きます」

 

 そしてそのまま報告を始めてしまった。どうでもいいけどすごい身体能力だな。ウィル達の動きに慣れてしまっていたが、高位の冒険者はこれくらいの動きをするのだと思っていた方が良さそうだ。


「このドラゴンは冒険者となり、この街で暮らすことを希望しております。話を聞いた限り、能力、人格共に冒険者として問題無いと判断しました。ギルドマスターとしては、この者を街に入れる事に反対しません」


 フリーダの言葉に周囲からどよめきが起きる。騎士達はフリーダが反対しないとは思っていなかったようだ。


「ギルドの対応はわかった。だがワシはフィーゲルの領主としてドラゴンを街の中に入れる事には賛成できんぞ」

「辺境伯様の心配もごもっともです。街を危険に晒す可能性が有るということもわかります。

 ですがこのドラゴンは言葉を操り、意思の疎通が行えます。意思の疎通が行えるにも関わらず、ただ危険だから街への立ち入りを禁ずるという事であれば、我ら冒険者ギルドは全ての冒険者をこの街から立ち去らせなければならなくなります」

「待て、何故そのような事になる?」


 先程まで落ち着いて、俺を街に入れられないと言っていた辺境伯だったが、フリーダの言葉に慌てたように問いかけた。


「ドラゴンというのは最強の魔獣とも呼ばれますが、冒険者の中にはそんなドラゴンを狩る事の出来る者もおります。そのため暴れた時の危険度という意味では、ドラゴンも冒険者も変わりません。

 話が通じないならばともかく、会話が出来るドラゴンの立ち入りが認められないのであれば、同じ危険度である冒険者も、立ち入りを認められないとなるべきでしょう」


 どうにもこじつけのように俺には聞こえるのだが、フリーダと辺境伯には正当な理由となるのだろうか。辺境伯は考え込んでしまった。

 少し考えて答えが出たのか、辺境伯がフリーダに言葉を返す。


「ギルドの考え方はわかった。街への立ち入りを認めても良いが、こちらとしても何かしらの保険がほしい。被害を未然に防ぐための方策は何かないのか?」

「そう仰られると思い、2つ程案が有ります。ただどちらも被害を未然に防ぐよりも、被害を減らすための策となります」

「既に考えが有ったか。流石だな、聞かせてもらえるか」

「はい、1つは住居です。何かトラブルが起きる場合は、住居で起きる事が多いでしょう。ですのでドラゴンにはこの北門の外で寝起きをしてもらいます。幸い北門から繋がっている街はありませんし、人間ならば危険な街の外であっても、ドラゴンならば危険は少ないでしょう。もっとも寝起きが出来るように、それなりに設備は整えなければならないでしょうが」


 そう言ってこちらに視線を向けるフリーダ。視線で頷いておけ、と言われた気がしたのでとりあえず頷いておく。


「2つ目は私です。ドラゴンが街にいる際は、絶えず私が共に居るように致します。私もギルドマスターとなる前は6星冒険者として活動しておりましたから、ドラゴン相手であっても時間稼ぎくらいは出来ます。その時間で逃げるなり、対策をとるなり対応してもらえればいいかと思います。

 この2つの対策を行えば、被害が出るとしてもかなり抑えることが出来るでしょう。」

「万一の時はギルドマスター自らが対応して頂けるか。よかろう、それならばドラゴンの街への立ち入りを許可しよう」


 おおっ、どうやら俺の街への立ち入りが認められたようだ。ただ本人がこの場に居るのに、一言も喋ってないのだがいいのだろうか?挨拶くらいはしておきたいのだが。






誤字脱字等ありましたら連絡をお願いします。

お読みいただきありがとうございます

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