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誕生そして旅立ち1

処女作になります。本日5話更新予定です。楽しんでいただければ幸いです。次は18時に投稿します。

 気がついたとき、俺の視界は真っ暗で周辺を何も見えない状態だった。

 現状がさっぱりわからないが、長い眠りから目覚めたような、いまいち頭が回っていない感じがする。それと同時に体の動きにも違和感を感じた。長く寝すぎて体が固まっているのだろうか?

 取り敢えず体を伸ばすため手足を広げるとすぐに壁に当たってしまった。


 どうやら俺は暗いだけではなく、狭い空間の中にいるらしい。どうしてこのような状態になっているのかがわからなかったが、壁を壊そうと手足に力をこめていく。

 頑丈な壁だったらどうしようかと思っていたが、以外と脆そうで力を込める度に微妙に変形しているのがわかる。更に力を込めるため立ち上がり背中で天井を押し込む。すると・・・・・・バコッ、と言う音とともに首が壁を突き破った。


 壁の外は光が差し込んでいたようで急に明るくなったために目が眩んだ。しばらく光に目を慣らすと、ようやく周囲の景色を見ることができた。

 俺の視界に飛び込んできたもの。それは青い空、白い雲、そしてーー


「ようやく生まれたか、我が愛し子よ」


 ーー白銀の鱗を持つ2頭のドラゴン。

 こちらをのぞきこむその姿に圧倒されて、俺は言葉もなく固まってしまっていた。








 驚きから抜け出し、話しかけてきたドラゴンの話を聞いてみると、その2頭は俺の両親とのこと。つまり俺はドラゴンに転生したようだった。どうして転生というのかというと、俺には前世に人間だった記憶が残っていたからだ。もっともその記憶は自分の名前や出身地などの詳しいことは覚えておらず、確か人間だった、といったおぼろげなものであったのだが。


 あまりに突拍子もない話なので、両親であるドラゴンには転生のことは黙ったまま、自分を取り巻く状況の情報を収集した。


 俺が生まれたのは、シグニア聖龍国。国名にあるように、聖龍を守護龍として掲げる国である。建国の際に、初代王と友情を交わした聖龍が王に協力し、後ろ楯なっていることを表すためにこのような国名になった、ということだ。

 建国からすでに300年たっており、こういった逸話は尾ひれどころか背びれに(むな)びれまでつき、国にとって都合がいいように改編されて実話とは大きく異なるものなのだが、この話は本当に実話である。

 何を隠そう俺の父である龍こそ建国の話に出てくる聖龍本人(本龍?)であり、当時の話を聞いた際、懐かしげに話をしてくれた。


 もちろん建国時の人間はすでに死んでしまっているのだが、年に1回現在の国王とその家族が聖龍の住み処(すみか)である山を訪ねてきて守護龍に挨拶をするという行事が残っている。今の王家も聖龍の結び付きがあるということを諸外国に示していて、そのお陰かこれまでこの国は他国に攻め込まれたことは、建国直後を除けばほとんどないらしい。また、この国は大陸で最も影響力のある国でもあるそうだ。



 しかし転生からしばらくたったある日、俺は守護龍という扱いの真相に気がついてしまった。

 確かに大事にしてもらっているのだろうーー日に1度捧げ物として食料が運ばれてきたり(ドラゴンは食事を必要としないため、運ばれてくる食料はあくまでも嗜好品となる)、この山一帯が聖域と指定されていて、聖龍の領域となっているーーが、現状の扱いは、愛玩動物(ペット)と何も変わらないと思うのだ。というか戦争でも始まったら、戦力として使われそうなことを考えるとペットよりも質が悪いかもしれない。


 少し前に両親にもそんな不満がないのか聞いてみたが、どちらも"約束だから"と気にしていないようだった。


 両親が不満がないのであれば、ということで気にしないように生活していたのだが、時が経つにつれてペット扱いよりも我慢が出来ないことが出てきた。この生活、刺激が何もないのだ。

 普通の龍であれば気にならないものなのかもしれないが、俺には前世の記憶がある。なまじ人間の記憶があるせいか、人に混じって生活したいと思う気持ちが強くなってきた。


 そんな気持ちが強くなって来てから、いつか人の住んでいる所に行ってみたいとと思うまでそれほどの時間はかからなかった。



 俺が転生してからちょうど1年。その日は、俺が転生した日のように天気のいい日だった。人里に行こうと決意してから天気の悪い日が続いていたため、出発を延期していたのだが、ようやく晴れてくれた。当然の事ながら山から離れることは禁止されているのでこっそりと出発する事にする。


 まさにドラゴン、と言うべきか、俺の背中には翼があり、飛行を練習してみたらあっさりと飛ぶことができた。結構早く飛ぶことも出来そうなので、飛んで人里に向かうつもりだ。

 計画では朝イチで出発し、人里を探す。夕方になったら戻ってくる予定なので山の方向を覚えておかなければならない。旅というよりも見学程度になるだろう。


 山陰の両親の目が届かない場所から飛び立つ。しばらくは低空を飛行し、山からある程度離れたら高度を上げた。

 後ろを見るとこれまで住んでいた巣が小さく見える。山からこれだけ離れたのは初めての事だ。


 視線を前に戻す。その時背中に寒気を感じ、再度巣の方向に視線をやった。巣の付近で白い光を発しているのが見えた。

 なんだ?と思う間も無く、俺の意識は巣より伸びたその白い光に飲み込まれた。

 

誤字脱字等ありましたら連絡をお願いします。

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