2雫目・水平線を見下ろす丘
1話完結です。
2013年に書いたお話です。書いてた時の精神状態が分かるようなバッドエンドです。
……多分……。
水平線を見下ろす丘から、空を見上げる。雲の切れたところから光の梯子がいく筋も伸びていた。
あの人を、遠い、とおい場所に連れて行った…。
光の梯子を睨むように見上げる私の視界は、溢れる涙でぼやけていた。
あの人は私の恋人ではなかった。もちろん、伴侶でもない。恋愛感情など、互いに持ち合わせていなかった。
親兄弟でもない赤の他人、親友と呼ぶのも微妙に違和感があった。ただ、自分に非常に近い存在だと感じていたのだ。
毎日会って長時間一緒に居ても苦にはならなかったし、逆に何年も連絡を取り合わなくても特に関係が変わることもなかった。
お互いの、不思議な、大切な存在。
それが、あの人と私の共通の感覚だった。
あの人は、この丘によく来ると言っていた。特に、ここから見る光の梯子は綺麗だと、何度も何度も聞かされた。
あの梯子に手が届きそうだ、とも。
私も、いつか行ってみたいと答えたけれど。
結局、あの人が二度と手の届かない場所に行くまで、ここに来る機会はなかった。
水平線を見下ろす丘から、雲間から伸びる光の梯子を見上げる。
遠く、とおく私の手の届かない場所に、あの人を連れて溶けて消えた。
私は何度も繰り返す。
あの人を返して、と。
声にはならない、悲鳴を上げて。
私は何度も繰り返す。
あの人を返して、と。
…お疲れ様でした。
ありがとうございました。




