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小雫夜話  作者: はなび
13/26

13雫目・影追い人

一話完結です。


ずいぶん昔に作った歌詞が元ネタです。10年以上前のことです。


…メルヘンホラー、第二弾…?





砂漠で一人の女と擦れ違った。

女の顔を隠したヴェールは、薄い紗だったので、うっすらと覗く表情に、何か言いようのない負の感情が読み取れた。



金の色彩(いろ)の砂漠を、遠くキャラバンの群れが通った。砂嵐の向こうのオアシスを目指して、砂漠の海を渡る。

強い風は吹き荒れ、砂に波模様を描く。太陽に灼かれた砂の風紋は、刻一刻と姿を変え、まるで生き物のようだ。

蜃気楼と陽炎の狭間で見える、この光景は、そう、全て幻。



女は、一人でこの砂漠を渡る。

負わされた傷痕を胸に抱き、誰かに向けた憎しみに心を彷徨わせ、帰る場所の無い旅を続ける。



太陽が赤い焔に揺らめく。突き抜ける空の青は、生き物のいない世界でしか見られない、本物の空の青。

夜の闇に浮かぶ白い月影に、ふわりと雪の幻が舞う。それも、朝には陽の光に消える。

煌めくオアシスが彼方に現れても、幻想が導くのは死への誘いだ。



女は、影を追い掛ける。

遺された足跡を探し、届かない指先を伸ばす。

風の中に一瞬、影は揺らめいた。

あそこに見え隠れする影法師は、この砂に埋れゆくあの人の殺意だと、女は言う。

女は、ヴェールを脱ぎ捨てた。

優しさという名の、薄いヴェールを。



その瞬間、女は影追い人になった。








風が吹き荒れるたび

姿変える風紋

灼けつく砂の上で

金の色彩の砂漠の海を渡る

キャラバンの群れ

全てはそう幻

赤く燃える焔の奥に隠された

青色の陽炎

空に還る

あの人が遺した傷痕

胸に抱き締め

帰る場所の無い旅を続けては

きっと憎しみに心

彷徨わせたままで

優しさのヴェール脱ぎ捨てた

影追い人たち


砂嵐の向こうに

煌めき立つオアシス

すべてを死へ誘う

空に浮かぶ白い月影

真夏の夜に降る雪

消え去る陽の光に

遺された足跡

追い掛けて歩いて行く

届かない指先が探す想い

風に揺らめいて

見え隠れしている影法師は

この砂に埋れゆく

あの人の殺意



ありがとうございました。


今回、元ネタの歌詞を載せてます。


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