誇り
君は今、どうしているだろうか。書き散らした原稿を眺めながら、ふと君のことが浮かんだ。
水溜まりに屋根からの水滴が落ち、波紋が静かに広がっていく。
にわか雨に降られ、慌てて飛び去って行った小鳥も、もう戻って来て水溜まりで水遊びを始めた。
猛獣のように原稿にかじりついていたこともあったが、体を壊したりいい表現が浮かんで来なかったりと、かえって効率が悪くなったのでやめた。しっかり寝て、しっかり食べて、たまに休んで、原稿を書く。そちらの方が良いと、どうして始め気づけなかったのだろう。
うさぎは足が速いのに、昼寝をしてしまったせいで亀に負けた。じゃあぼくは、どうしてうさぎの二の舞になったのだろう。気が付けば、もう二回目の夏だった。
すぐに書ける。そう言ったのはどこのどいつだ。
愚痴を言っても仕方がない。自分で自分を罵る間があるなら手を動かせ!もう終わりは見えてきている。
ああ、ぼくはなんて大胆なことをしているんだろう!こんなこと、以前のぼくには考えられない。章の始めの文字を一つずつ並べると、君へのメッセージになるんだから。
映画みたいに、君が気づいてくれることを期待しながら、一方では自分だけの秘密にしてしまいたいという思いもある。
瑠璃色のワンピース。遊園地に遊びに行った時にも、君は着ていた。今度会う時も、その姿の君がいい。
いつものような、太陽のような笑顔で。
まだ、ぼくを待っていてくれていたらの話だけれど。
すでに、ぼくは約束の半分を破ってしまった。もう君はぼくを突き放してしまっているかもしれない。ぼくだけが君に愛されていると勘違いして…。
ぐらぐらとした心の中に、不意に一本の棒が立った。決して揺るがない、丈夫な棒が。
二年も待たせておいて、それはないだろう。責任を感じているのなら、それ相応の覚悟が必要だ。たとえ気持ちが離れていたとしても、君に会って、謝らなくてはならない。
出来上がった時には、すでに外は暗くなっていた。
もう、今すぐにでも電話に飛びつこうとしかけて、今は真夜中であることを考慮して止めた。君に最後まで迷惑をかける訳にはいかない。
明日が来るのを待とう。そして、それまでに君と再会した時の言葉を考えよう。
今、ぼくは世界で一番幸せだろう。でも君は今どうだろうか。もちろん、今でもぼくを待っていて欲しいけれど、それが枷になっていて欲しくない。もうぼくを見放していたとしても、君には幸せでいて欲しい。
ただ、そう思っていても、君に待っていて欲しいことには変わらない。
いつまでも、ぼくは君を愛し続ける。そしてどこかで、そう胸を張っているぼくがいた。
だんだん長くなっている気がします。
後、この文に出てくる『章の始めの言葉を一つずつ並べるとメッセージが出てくる』というのは作者の勝手な設定であり、この作品には当てはまりません。