素晴らしく美しい
ー遊園地に行こう! ー
メールを受け取った時、ぼくはどうしたらいいかわからなかった。こういう誘いは断らない方がいい、とはよく聞くが、あまり気の進まない場所なのだ。
ー乗り物酔い、ひどいから、ちょっと…。ー
酔うからって、入ってはいけないとは言われないだろう。しばらく考えてから送信したはずなのに、見ているだけ、という選択肢が思い浮かばなかったことを悔やんだ。
ーうーん、それじゃ、せめてそばで見ていてくれる?とても楽しい場所なのに、一人じゃさみしいから。ー
ならば、一緒に行ってあげなくては。使命感に駆られつつ、了解の意をメールで伝える。
ーありがとう!じゃ、次の日曜日に会おうね! ー
毎回、どこかに遊びに行こうと誘う時、君はメールに待ち合わせ場所や時間を書かない。
いつも決まって、朝の九時に現地集合。二人の間の、暗黙の了解だった。
今度こそ、とぼくは思った。今度こそ伝えよう。しばらく待って欲しいことを。
いつもより気を引きしめているのを感じながら、ぼくは日曜日に家を出た。
明るく美しいと書いて、明美。ここは、そんな名の君にぴったりの場所。
まわるメリー・ゴー・ラウンドに乗る君を見ていて、ぼくは心からそう思った。
すごく君が輝いて見えた。白馬にまたがった妖精のように。地味なぼくがそこに飛び込んでも、きっと周りの光に埋もれてしまうだろう。
ギラギラとした日射しの中にいるぼくにとって、そこは全くの別世界。まぶし過ぎて、見つめ続けるなど不可能に思えたほど。
照らされるだけの、小さな存在。ぼくは月だ。君という太陽に照らされている。しかし、ぼくは輝けているのだろうか?君に、ぼくの光は見えているだろうか?
ぼくにはわからない。
苦しくなってしまいそうだ。
西日がぼくたちを照らした頃、ぼくは君に今の思いを全て話した。少し待って欲しい、と。とても面白い話を思いついたんだ。その話が書き上がるまで、待っていて欲しい、と。
「私は気にしないから、大丈夫よ。気を遣ってくれてありがとう。」
もう死んでしまいそうだ。そんな気持ちで話したことが伝わったのだろうか。君は優しく微笑んでくれた。
つい、安堵からため息をもらした。君を傷つけてしまうかもしれない。その思いで話し頭がいっぱいだったのが、消えていくのがわかった。
「大作じゃないから、すぐに書けるよ。」
意気込んで言ったぼくを、君は微笑んで見つめてくれた。
何でもできるような気がしてくる。君のその微笑みを見ていると。
急がなければならない。君を待たせてはいけない。そう思わせるような力が、その微笑みにはあった。