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モブキャラの暇潰し!!  作者: 空雪
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古城弟イベント1「一緒に登校」

 

 はっはっは!最高最高。

 おはようございます、朝から心の中で高笑いをしている女子高生Dです。


 いやーだってね、たまたま、本当にたまたま早く起きて、たまたま花崎+ダブルプリンスが住んでいる家の前まで行こうと思って、たまたま家の近くに人が隠れられそうな大きな木があってね?そこでたまたま発見したんですよ。

 家からちょうど出てきた花崎歌と古城弟を。これはもうモブ神様のお導きとしか思えない、よって私はこの二人の後ろを尾行することにする。


 大丈夫大丈夫、私はモブ神様に好かれてるからすごい耳も目も良い、多少離れてたって何の問題もない。


 二人は楽しそうに歩道を歩いている、なんで古城兄はいないのだろうか……用事でもあるのか、ああ確か生徒会選挙がもうそろそろあるからその関係で早く学校に行ってるのかもな。


「そろそろこの高校には慣れた?」


「はい!もう二週間経つし、勇人さんも隼人さんもいるし」


「俺のこと頼ってくれてるんだ、嬉しいな」


「ちょっと頼りすぎかなって思うくらいだよ、本当に」


「そんなことないよ」


 嫌味ったらしいほどの爽やかな笑みを浮かべてるのがその横顔から把握できた。

 ダブルプリンスの名に恥じない王子様スマイル。どっちかと言うとより王子様に近いのは弟の方だな。典型的な優男、そしてサラサラの栗色の髪に細マッチョと言われるような体。はいはい完璧完璧、世の中不公平ですねぇ。


「最初は家に同い年の女の子が来るって聞いて、上手くやっていけるか不安だったんだよね……ほら、隼人はちょっとコミュ力に難があるから」


 コイツさらりと兄をディスっているぞ、今頃古城兄はくしゃみでもしているのでは?


「でも歌ちゃんが予想以上に良い子で優しくて、隼人もすぐに心許しててさ、すごく安心したんだ」


「やだな、褒めすぎだよー勇人さん」


「事実だからねー……隼人はさ、真面目で正義感も強いからすごく誤解されやすくて、俺の知ってる限りじゃ今まであんまり仲の良い友達とかいなかった。でもこれから歌ちゃんがどんどん隼人のこと懐柔してって、友達増えてくれないかなぁーって今思ってる」


「買いかぶりすぎだよそれは、私にそんなことできるとは思わないよ……」


 花崎歌の言う通り、出会ってたかが二週間ちょいの人間になぜ十七年間も共に過ごしてきた兄を任せようとしているのだろうか、私にはだから兄のことは任せたと言っているようにしか聞こえない。

 でもまあここは主人公花崎歌、きっとこの先それはもう見事な主人公補正で古城兄を懐柔していくのだろう。


 まだ今の時点では古城弟は花崎歌のことを優しくて良い子と評価してるけど、それ以上でもそれ以下でもなさそう。まだまだ好感度は低いな、古城兄の方が全然高そう。長谷良太に至っては好感度最初から振り切れてそう。


「でもこの間、隼人さんと少しギクシャクしちゃったんだけど、無事に和解できたの。それからもっと仲良くなりたいなぁって」


「そうなんだ……俺ももっと歌ちゃんのこと知りたいな」


「えっ」


「ダメかな、隼人だけなんてズルいしね」


「そんなダメなんてことあるわけないよ!すっごく嬉しい!」


 誰にでも何にでも一生懸命な主人公って多いよね、まあ仮にも五人六人くらいには好かれないといけないわけだし当たり前っちゃ当たり前か。

 それにしてもこう……特にこの会話に意義を見い出せないというか、無駄にしか聞こえないというか、あえて言うならただただ古城兄がディスられて終わったような会話。

 もっと中身のある会話をしてほしいよ、例えば関ヶ原の戦いの背景にあるものとかね。


「じゃあこれからは俺とも隼人とももっと仲良くなろう」


「うん!」


 なんて平和な日常風景、何も起こる気配なし……とか思ってたけど、どうやらこのイベント本題はこの会話ではなく次に起こる出来事だったようだ。




 二人の話にもすっかり飽きてしまった頃、二人の正面50mくらいにすごい勢いで走ってきてる男の人がいた。まあ私から見ても正面にいるんですが。

 そりゃもう何をそんなに急いでんだってレベルで急いでる。私の貧困な語彙力では通じないかもしれない。

 それだけならまだいいが問題はここからである。


 あっという間の出来事だった。

 二人とその走ってきた男の人がすれ違う瞬間、花崎歌の肩と男の人の肩がけっこうガッツリぶつかってしまって、


「わっ……」


 なんというかまあ……花崎歌はそれでバランスを崩したのか少しフラフラした後、耐えられず転んだ。


 そう、転んだ。

 そして私は見てしまった、花崎歌が転ぶ姿を無表情で黙って見つめている古城弟を。


「ひゃっ」


 情けない悲鳴をあげながら花崎歌は膝から着地、四つん這いになる感じで地にひれ伏した。

 おいなにしてるんだよダブルプリンスの片割れ、転ぶ前に助けろよ、なに黙って見てるの?


「っ……」


「ちょ、歌ちゃん大丈夫!?」


 その歌ちゃんが転んでいくのを黙って見ていたのに白々しい男だな。古城弟のことだからてっきり転ぶ前に受け止めるのかと思ってたけど、なんでだろ?

 なんだか今ので、古城弟に対してなぜか寒気と共に違和感を感じる。


「す、すまない!」


 しかしその違和感は一際大きな声の主によってかき消された。


「女子を転ばせてしまうとは、不覚だった、大丈夫か」


「あ、はい……大丈夫です」


 焦った顔、凛々しい低音ボイス、黒髪のやけに整った顔。あ、これはもしかして。

 新しい攻略対象キャラなのでは!?あのイケメンオンパレードの高校の中でも決して見劣りしないくらいにはカッコイイ、キリッとした一見怖そうな見た目もこの二週間出みてきたどのキャラとも被っていませんし!!

 一気にテンション上がってきたわ!


「走るのはいいですが、もっと前方に注意するべきだと思いますよ」


「ああ、そうだな……彼氏にも悪い事をした。言い訳はしない、病院代を払おう」


「えっ!?いや、そんな大したことないから気にしないでください、ほら!元気なので!あああああ、あと!恋人じゃありません!!」


 花崎歌はおもむろに立ち上がり頬を紅潮させながら笑っているのがうっすらと見える、実際そこまで大きな怪我はしていないのか案外ピンピンしていた。


 さっきの悲鳴はなんだったのか。ああ……古城弟と恋人間違えられたことで全部吹っ飛んでいったのかな。


「そんな全力で否定されたらショックだな」


「や、その、ごめんなさい」


「なんだ勘違いだったか、本当にすまなかったな。……そういえばその制服、もしかして東高校の生徒か」


「そうですけど、それが何か?」


 若干トゲのある雰囲気を醸し出し、相手を威圧している古城弟、いと怖し。それに全く気づいている様子のない男の人、180は軽く超えているほど身長が高く見える。


「いや、来月から俺もそこに通うんだ、二年生として」


 きた!!!きたこれ!!間違えなく!攻略対象です!

 やった!やっぱりモブ神様のお導きは正しかった。女子高生D大勝利!


「えええ!?」


 大歓喜している私とは違い、花崎歌は驚愕、古城弟も驚きで固まっているようだった。


「私と勇人さんも二年生なんですよ」


「そうなのか?奇遇だな」


「……本当、さすがに俺もびっくりしちゃった。それより急がなくていいの?走ってたし」


「ああそうだった」


 思い出したかのように仮の転校生はまた軽やかに走り始め、最後に二人に笑ってんだか無表情なんだかわからない感じで告げる。


「俺は神村武蔵、以後よろしくな」


 神村武蔵。

 その男はそう名乗り二人の元から去っていく。去り際に私ともすれ違い、神村武蔵が走った時に微かにできた風が当たったような、そんな気がした。


 間近でチラリと見たけれど、長身で硬派な好青年といった感じかな。


「神村くんっていうだ、あっ、私名前言うの忘れてた」


「うちの高校に来るなら嫌でもまた会えるよ、そんな気にする必要ないって。それより本当に大丈夫?」


「あ、そっか。私は大丈夫だよ!怪我もしなかったしっ……!?」


 さすが主人公花崎歌、歩こうと一歩を踏みだした瞬間硬直してしまった。足でも捻ったのか。こういうお約束を裏切らないところ、私嫌いじゃないよ。好きでもないけど。


「もしかして足捻挫したとか」


「いや、大丈夫!全然大丈夫!」


「冷や汗かいてるけど本当に大丈夫なの?大丈夫じゃないよね?」


「大丈夫だって」


 そう言ってまた一歩一歩ゆっくりと歩くけどどう見たって足引きずってるし大丈夫じゃなさそう。後ろから見ても分かるくらいだし。


「無理したら余計に悪化するから、本当のこと言って?」


「う……」


 おっ、ここで選択肢きたかな!

 ちょっと考えてるみたいだし。

 本当のことを、

 言う

 言わない

 とかかな。さあどれを選ぶ?


「……足、捻っちゃったみたい」


「ほらやっぱり、こういう時こそ俺を頼ってほしいな」


「それってどういう」


 花崎歌が全てを言い終える前に古城弟が彼女の手を取り自分の腕につかませた。要するに腕組ってことか。ひゅーひゅーいいぞいいぞ!


「えっ、ちょっ!勇人さん!」


「離さないで、とりあえず俺の腕を支えにして歩いてて。学校に着いたら保健室に行こう」


「っ……」


「恥ずかしいかもしれないけど、ちょっと我慢してね」


「は、はい……」


 これぞ王道!!

 怪我をして手貸したり腕貸したりお姫様抱っこする展開!さすがにお姫様抱っこは夢見すぎ感が否めないので腕になったのか。

 これにはかなり花崎歌も効いているだろうな、ああ表情があまりよく見えないのがとても惜しい、本当に惜しい。


「勇人さんって、や、優しいですね」


「歌ちゃんは女の子なんだし当たり前だよ」


 なんだかとても良い雰囲気になり二人はゆっくりとまた歩き始める。

 でもこの調子じゃ絶対に遅刻するからもうそろそろ尾行は終わりにしようかな。本当は最後まで見たいところだけど、変に遅刻して目立ったりしたくないし。


 歩くスピードを早めチラホラと歩いているモブ高校生たちを抜かしていく、お前らモブキャラたち本当に最初から最後まで出番なかったな!私含めて!女子高生Dとか名乗る必要なかったわ。


 さっき神村武蔵にしたことと同じように、二人を抜かす際横目でチラ見。

 模範的で理想的なカップルに見えた、カップルに見間違えるのも分からなくもない。

 その様子からだと選択肢は合っていたみたいだよね、たぶん。今回は花崎歌と古城弟が仲良くなって、それで新キャラ神村武蔵の登場だったね。


 でもこの神村武蔵……していることといえば花崎歌に怪我させてある意味インパクトを与えていっただけで、良いイメージは持たれないよね、私から見たら悪い人ではないんだけどさ。

 これからこの人がどう花崎歌たちに関わっていくのか、ちょっとだけ楽しみが増えた気がする。


 さーて、次はどんなイベントが待っているのか、楽しみですね。


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