2.双子との同居について情報通女子が聞く
皆さんこんにちは、モブキャラの女子生徒Bです。今日は少し気分を変えてBにしてみました。
ところでいきなりですが新事実が発覚しました。
「あなたって、ダブルプリンスと同居してるの?」
……ということらしいです。
花崎歌が転校してきてから早三日、クラスのムードメーカーでありリーダー的な存在の女子生徒が花崎歌にストレートに聞いていた。
正直この噂、初日の放課後あたりからされていた。なんでも花崎歌がダブルプリンスの片割れと下校している姿があったとか。
ネーミングセンスのかけらも見当たらないダブルプリンス、そう呼ばれているのは生徒会に所属している双子だ。
まさかとは思ったけどやっぱりこの二人も攻略対象キャラだったのか、しかも同居しているとはやるな、花崎歌。
「え!?え、と……あなたは?」
「あっ、いきなりごめんごめん。アタシは池山瑞穂。よろしくね」
「池山さん、よろしくお願いします」
「あー瑞穂でいいよ瑞穂で、アタシも歌って呼ぶから!で、真相はどうなの?もし事実だったら超スクープよ!」
「あの、ダブルプリンスって?」
池山さんの勢いに押されて少し引き気味の花崎歌。なるほど池山さん、もしかしたら花崎歌の親友ポジにつくかもしれない。明るくてお気楽で美人、そして新聞部の副部長でありそれゆえ情報通。
絵に描いたような親友キャラだ。
「そか、歌は転校してきたばっかだから知らないんだね」
「ダブルプリンス……だから、もしかして隼人さんと勇人さんのこと?」
「そうそう!それよ!二人ともファンクラブがあるほどの人気でね、王子様みたいにかっこいいからダブルプリンスなんて呼ばれてる」
「あの二人が!?」
意外、という顔をしている。もしやいきなり二人と何かあったのか、あったんだろうなぁ。
花崎歌の視点からいくと、初めて出会った攻略対象のキャラはダブルプリンスってことか。でその次に長谷良太と藍先生、そのことを考えるともう四人もでてるのか……今回で親友キャラも出てきたし、あと何人主要キャラが出てくることやら。
「た、確かにカッコいいけど」
「ふーん、なんか色々二人について知ってるみたいね。ってことはやっぱ同居してるんだよね!」
「あ、その、う……」
かなり困っている様子だった、可哀想に。心の中で同情するよ。
「おい、花崎!どういうことだ」
「っ!?はや、隼人さ……ん」
うわっ、びっくりした。花崎歌に隼人さん、と呼ばれた男子が遠方からスタスタと廊下を歩いてきていた。
音もなく登場、彼はダブルプリンスの片割れ……えっと確か兄の方の、古城隼人。来月の生徒会員決めで生徒会長になるであろう生徒会副会長だ。
先生とは違った意味で厳しくクール。かと言って友達が少ないわけでもないが基本女子には冷たい。
池山さんが言っていた通りファンクラブがあるほどの美少年である。
あんな細身の奴が人気あるなんてね、私はムキムキな男の方が好みだけど。
で、その古城隼人はなぜかとてもイラついているようだ。
「あれほど言うなと言ったのに、バラしただろう」
「ば、バラしてないよ……」
「嘘だな」
「本当だって、信じて」
……あんまり仲がよろしくないのかな?
あれか、これはあれだ。和解イベントがいつか起きるだろう、それでころっと花崎歌におとされるパターンだろう。分かりやすいな。
相変わらずきっつい性格してるな古城隼人、面倒だから古城兄でいいや。
花崎歌がバラしたと決めつけて、人間としてどうなのだろうか。
「ちょっと、隼人!」
「ちっ……勇人か」
廊下に一際大きな声が響く、その声の主は焦ったように花崎歌と古城兄の元へ走ってきた。
あ、でた、ダブルプリンスのもう片割れ。
ダブルプリンスが両方揃ったので、教室前の廊下は野次馬するモブキャラたちが集まってきていた。よし、私もその中に紛れて……と、これで花崎歌たちが見やすくなる。
「勇人さん」
「歌ちゃんは悪くないよ、俺が三日前からずっと歌ちゃんと帰ってたから」
「お前、俺たちのことは秘密にするって約束だっただろう?なのになぜ一緒に帰宅などということをするんだ」
「帰る場所が同じなのに一緒に帰らない方が不自然だろ……ごめんね歌ちゃん、こいつ頭が固くて」
「おい勇人」
ふっ、頭が固いって言われてる!それも双子の弟に。ざまぁ!
聞いての通り、古城弟は兄と違い基本穏やかで優しい性格をしている。誰にでも分け隔てなく優しい、しかもやっぱりすごくかっこいいのでファンクラブがある。学校では兄派と弟派で派閥ができているくらいである。
この高校の役四割ほどの女子はどちらかのファンクラブに属しているとかいないとか。
「はぁ、ばれてしまったものは仕方ない。先が思いやられるな……」
「ごめんなさい」
「花崎は後で説教だ……さてそこら辺の野次馬も早く教室に戻れ。後五分で授業が始まる」
古城兄はモブキャラたちにそう告げ、逃げるように退散して行った。ああ花崎歌よ……頑張れ。本音を言えばどうなろうが別にさほど興味はないけど。
モブキャラたちは律儀に古城兄の言うことを聞き、自分たちの教室へと戻って行ったので私もそれに合わせて戻っていく、集団行動がこんなに大変だとは思わなかった。
「俺も教室に戻るよ、あまり気にしないで。後でフォローしておくから」
「ごめんなさい」
「歌ちゃんは悪くないから、じゃまた後で」
モブたちが今の出来事についていろいろ話しててうるさいが、なんとか花崎歌たちの声を拾うことができた。
さすが古城弟、優しいな。でも絶対に裏がありそう。実は悪いことしてるとかかなり腹の中真っ黒で古城兄の方がピュアだったとか……ないか。
この後、落ち込む花崎歌を元気付けようと池山さんがずっと慰めていたので、彼女はもう間違いなく親友キャラだと思いました。
次期生徒会長の古城隼人に、書記の古城勇人ね。
一癖も二癖もあるような二人だけど、果たして花崎歌は攻略できるのかな?