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モブキャラの暇潰し!!  作者: 空雪
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6.やたら転校生と行事が多い高校

 

 転校生が来るらしい。

 朝からその話題で持ちきりだった。


 おはようございます、女子生徒Eです。とうとう待ちに待った十月に突入しました。花崎歌が転校してきてから一カ月、そしてこの間登場した攻略対象キャラ、神村武蔵が転校してくる日、それが今日。

 さあモブキャラよ、今日もモブキャラに徹するのです。


 私はというと昨日ちょっと遅くまでゲームをしていて宿題ができなかったので、朝からノートに英文を書いている。うんうん、どこも違和感がない。


 隣のクラスに転校生が来るらしい、という噂を広めたのは新聞部の副部長、池山瑞穂さんである。

 もっと詳しく言うと、新聞部が発行している“週刊!校内すくーぷ。”という新聞の記事にこんな微妙な時期に転校してくる奴がいるらしい?というものがあった。その情報源はすごーく謎だけどきっと新聞部のモブキャラにも私のようにモブ神様に愛されている人がいるのだろう。


 そんな中、特に転校生の話もせず違う話題を話している人たちがいる。私の観察対象である花崎歌と、そして取り巻きAの長谷良太、噂を広めた張本人の池山さん。


「ねえねえ歌、文化祭何やりたい?」


「俺はお化け屋敷!」


「いや長谷には聞いてないんだけど」


 扱いが雑。

 昨日の放課後までは確かに今花崎歌たちがしているように文化祭で何をやるか、という話題が一番盛り上がっていた。今日の六時間目に決めるから。

 今日から約二週間後、文化祭があるからね。学校をモチーフにしている作品なら文化祭というイベントは欠かせないでしょ!


 キャラと協力して成し遂げる文化祭があってもいい、仲良く一緒に文化祭を見てまわるという好感度大幅アップイベントもある、そしてその中で唐突に訪れるハプニング!


 少々ありがち感はあるが、抜かすことのできないイベント、それが文化祭。

 ま、私には本当に関係ないものだし、でもモブキャラだから一応できること(花崎歌の観察)はしようと思う。あくまで、クラスの一員として。


「去年は何をしたの?」


「うちらのクラスはポップコーンとタピオカジュース。隣のクラスで映画やってたからそれに便乗して」


「ああ、あれけっこう売れたよな」


「あ、そっか。瑞穂ちゃんと良ちゃんは去年同じクラスだったから出し物も同じなのか」


 そういえばそうだったな。っていうか私の情報によると長谷良太と池山さんは中学入学からずっと同じクラス。腐れ縁、みたいなものなのかな。二人がよく話すようになったのは花崎歌が転校してきてからだけど。


「それにしても映画とか、ちょっと気になるなぁ。裏方とかやってみたいかも」


「でも正直映画ってさ、二週間で撮るの厳しいし面倒だよな。やっぱ俺は人を驚かすのとか!それか食い物がいい」


「長谷は自分が食べて楽しみたいだけでしょ」


「なんだよー文化祭って、そういうもんだろ」


 後ろの席ではわいわいと楽しそうに話している、他のグループも転校生の話で盛り上がっている。

 私はどこにも混ざらず、何となくつまらなくなって窓の外を見た。


 本当はモブキャラとして混ざった方がいいのかもしれない、けど私は孤高のモブキャラ、ほらいるでしょ?クラスに一人二人、どこのグループにも属さずスクールカーストのどこにもいないようなそんな人、それがきっと私。

 さ、避けられているわけでは無い。


 なんかこう、もっと面白いことないかな。異世界とかもっと面白い要素盛りだくさんなとこのモブキャラになりたかった。まあそっちは主人公補正ゼロだから私はすぐ死ぬだろうけど!


「瑞穂ちゃんは新聞部で何かしたりするの?」


「お、よくぞ聞いてくれました!アタシはね、文化祭に向けて!週刊!校内すくーぷ。の特別増刊号の記事を書く予定なの。これから二週間は取材で忙しくなるわー、誰かに手伝ってもらいたいくらい!」


「へぇ、取材もするの?」


「ええもちろん、今回のターゲットは保健室の眠れる美青年、香坂馨よ!」


 ……なるほど。段々と状況が読めてきた、今回はきっと花崎歌が文化祭に向けてどう振る舞うのか、それを決めるのだな。準備期間からもうイベントは始まっている。


 昨日までのクラスの人たちの話ではおそらく今年このクラスは喫茶店をやることになるだろう。それも身の程知らずのメイドと執事の喫茶。

 それは変えられないというなら、主人公の行動方針を変えるということ。私は花崎歌がどうするかで今年の文化祭の力の入れどころを変えなければいけない。


「香坂先輩の?」


「あら、知り合いなの?それなら歌に取材の手伝い、頼んじゃおっかなー」


「ちょっと待てよ!歌は俺と一緒にクラスの出し物の準備する!香坂馨って女好きで有名だし、近付いたら何されるか分かんねーよ」


 今の発言から察するに、長谷良太は香坂馨のことをよく思っていないのか。まあ相性悪そうではある、長谷良太が一方的に翻弄されている姿が目に浮かぶ程度には。


 モブキャラなるもの、主人公以外の相関図にも目を向けるべき。特に攻略対象キャラ間は念入りに。

 私は基本的に花崎歌の観察しかしてないから、他のキャラたちは割と疎かにしているのも事実。なので、こういう情報はありがたい。


 それにしても、香坂馨は藍先生にも嫌われていたし、男性に嫌われるキャラなのかな。まだ把握はしきれない。


 あとはよくわからないのは古城兄弟付近の関係か。

 彼らは生徒会で、文化祭後すぐに生徒会の校内選挙が行われる予定だ。そこでまた人間関係も変わるだろうし……。

 この高校、短期間にいろいろ詰め込みすぎではなかろうか。だからこそ舞台として設定されているのであれば、私は何も言えない。


「あ、あのね!実は私、隼人さんと勇人さんにも生徒会のお手伝い頼まれてるの」


 さすが花崎歌、大人気じゃないですか。本人は特別何もしていなさそうなのに、勝手に美男美女が集まっていくのは素晴らしい主人公ぶり、素晴らしいご都合主義。


「あー生徒会は毎年忙しそうだもんね、でもさ、文化祭って自分がやりたいことやるのがいいと思うし、歌がしたいようにすればいいと思うわ。ね、長谷?あんたは不満かもしれないけど」


「なっ……ま、まあ歌が楽しむのが一番だし」


 きっとずっと昔から花崎歌が好きで、やっと再会できたのにその花崎歌の周りにはなぜか学校の中心となる人たちばかりいて。

 そりゃどちらかというと普通寄りの長谷良太は焦るだろうなぁ。


 この場合の選択肢はどうなのかな、今の感じだと、

 クラスに専念する

 生徒会を手伝う

 新聞部を手伝う

 は確実にあるよね。

 上から長谷良太、古城兄弟、香坂馨と池山さんと分岐しそうな感じはある。けど藍先生や噂の神村武蔵はどうなるのかな。

 他にも選択肢はあるのかもしれないけど、藍先生あたりはクラスに専念すれば自然に好感度上がりそうではある。


「そうだなぁ、一番最初に頼まれたし、生徒会のお手伝いをしようかな」


 へえ、古城兄弟を選ぶんだ。花崎歌はどちらかというと古城兄弟に傾いてる感じするな。

 個人的に面白そうなのは新聞部を手伝う選択肢だったんだけど、仕方あるまい、それが花崎歌の選択だというならばね。


 生徒会の手伝いってことは、またいろいろストーカ、いや観察する準備が必要だな。生徒会に混ざるのは難しいし、かと言って遠すぎても……とりあえず手始めに生徒会室に侵入して、隠れられそうなところでも調べとくかな。ま、ここら辺は溢れ出るモブキャラパワーでなんとかなるでしょう。


「そっか……。……俺にできることがあればなんでも言ってくれな」


「うん、ありがとう」


 声を聞くだけで悲愴感が漂っているのが分かる。あーあ、振られちゃったね。ざまーみろ、ちょっと可哀想か。

 基本的にイケメンなんて爆発してしまえばいいと思ってるから辛辣になるのは仕方ない仕方ない。


「……あー、えーと、今日はなんか騒がしいな!やっぱ文化祭あるからか」


 話の方向転換が雑てか下手すぎて涙が出てくる。でも、変に引きずらない辺り人の良さがでてる。


「長谷には言ってなかったっけ?今日転校来るんだよ」


「転校生?」


「うん、しかも既に歌はその転校生と知り合ってるのよね。びっくり」


「そうなのか!?」


「神村武蔵くんっていうんだけど、とても良い人そうだったよ」


 仮にも怪我をさせられているのに、やはり花崎歌は天使なのか。


 良い人って、どういう意味なんだろうね。あの数分間で彼女は彼のどこを見て良い人だと言うのだろうか。これが主人公の謎の観察眼。

 あーあ、神村武蔵も餌食になるのか、運が悪いときにこっちに……来たな。


「ほら席につけー、始めるぞ」


 ちょうどいいタイミングでの藍先生の登場、気付けばもうHRが始まる時間か。


 さてと、一日頑張りましょう、それにまだまだ今日はイベントが残されているはず、とりあえずずっと花崎歌を見ていなければ。


 何気なく手元を見るとさっきまで手に握っていたはずのシャープペンシルが机の下に落ちていた。そして目の前にはぜんぜん進んでいない宿題たち、……やば。


 神村武蔵か。彼は一体どういう風に花崎歌に絆されていくのか、それが少しだけ楽しみだと、思いながらペンを拾う。


「あ……?」


「あー先生来ちゃったよ!この話はまた後でね!」


「だな」


 池山さんが慌ただしく自分の席に戻っていき、花崎歌たちの会話はそこで終わった。


 藍先生の話を半分くらい聞きながら、私は今日どのように行動するかを考える……世のモブキャラは大変だね、本当に。


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