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序
毒花ダニエラ。
史上最も劇的で、華やかで、美しく政界を彩った花。
その賢さをもって民を欺き、
その色香をもって男を惑わし、
その高慢をもって罪を犯し、
花が散るように鮮やかに、この世を去った女。
彼女の努力を知るものは少ない。
彼女の願いを知るものはもっと少ない。
彼女の涙を知るものは、ひとりだけ。
ただ一度の恋は、誰にも語られることなく、彼女の死と共に消えた。
彼女の死が引き金となって市民革命が活発化し、急速に民主化が進んだことだけが、歴史書の上では確かなことだった。