序章―ゲート前レポート
俺は競馬が好きな一般人だった。極々平凡な毎日を送りながら、毎週末競馬中継を楽しみに生きていた。
いや、それだけでもないな。ゲームの競馬シュミレーションにもハマって寝不足気味になっていた。自分の馬を所有しレースを操作するタイプのやつだ。本物の騎手になったつもりで熱心に遊んでいた。
おっと、言っとくがニートではなかったぜ。
一応、その頃は、定職についていて、辛うじてまだ20代の独り暮らし。
たまーにコンビニ弁当をもそもそと静かな部屋で胃に流し込んでるときなんざ、寂しさを感じることもあったが基本は自由を謳歌していたんだ。
ただ、なんだか日々の新鮮味というかドキドキというかワクワクというかそういった感情が遠くなってきたことに、どこかしら焦りのような気持ちを抱いていたかもしれない。昔、10代の頃はこうじゃなかった。日々は何かしら発見があり、輝きがあり、成長があった。知らないものに触れる喜び、前進しているという確かな手応え。だが、ここ数年、生きることによくも悪くも慣れてしまったのだろうか。そういった気持ちはどこか遠くに引っ越してしまったようで音信不通になっていた。
まぁ、アニメやゲームの世界じゃあるまいし、毎日は基本が平凡、平凡が基本。万馬券を当てるような確率でなにか変な事がちょっとだけ起こる程度で、しかも大抵はろくでもないことだ。世の中そんなもんだ。そう心に言い聞かせて、もやついた気持ちを誤魔化していた。
ほら、見事な青春時代も終わりをむかえつつあるどこにでもいるような凡庸な人間ってことで間違いないよな。
だからこそと言うべきなのだろうか、日々のマンネリを防ぐ効果も期待して俺は競馬を見るようになっていた。
俺にとって競馬は単なるギャンブルではない。競馬は一種のスポーツであり、そこに生まれるドラマであり、ロマンである。いや、その成熟度については文化であると言って差し支えないだろう。
もちろん、俺も普通に馬券は買うし、ギャンブルである事実は百も承知だ。だが、パチンコなんかとは同じ括りで見ている人には大いに反論いたしたい。競馬は国王や大臣なんかが見に来るんだぜ。
パチンコ屋ではそういう人達を見たことないだろ?!
おっと、話がそれつつあるな。
本題に入ろう。
突然だがある日、俺の平凡な日々が終わったんだ。
いや、宝くじが当たったわけでも、win5が的中したわけでもない。いや、ある意味では大当たりしたと言えるかもしれないがな。
これからする話は、競馬が好きな一般人だった俺が、異世界に突然召喚されてしまった話だ。
ん、競馬の魅力を語るんじゃないのかって?
いや、残念ながら、今回は現実の競馬の話はしてやれないんだ。
けど、かわりに、異世界の競馬の話をするよ。凄く面白く話すつもりだから。ちょっと聴いていってくれよ。
ただ、人にこの話をするのは初めて何で、上手くいかないことがあるかもしれないけどよ。
この話を聴いて競馬面白いなぁと思ったら、このあと競馬を見に行こう。実は新聞も買ってあんだぜ。
まずは、あの日の話から始めよう。俺の平凡な日々が終わりを告げた日。つまりは異世界へのゲートが開いた日の話を。
初投稿です。よろしくお願いいたします。




