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異世界覇権は競馬で決まる!  作者: うまゆき
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ステータス(想像バージョン)

宿に着くとまずミーアが受付で手続きをして俺の部屋を追加できるかどうか交渉してくれた。さすがはギルド運営部長さんだ。事務的なところに抜かりはない。


俺は周りをぐるりと見渡した。どうやら宿の水準は一般的な西洋ファンタジー系RPGで見かける冒険者用といったところだろうか。


木造三階建、ゲームに出てくるようなこの宿は現代日本人の俺のテンションを少なからず高揚させた。


一階が食堂と酒場を兼ねているようで酒瓶がずらりと棚に並んだ棚を背にしてマスターとおぼしき人物が酒をグラスに注いで給仕に渡した。

時間的にまだピークというわけではなく席は半分以上空いているが、早くも今日に区切りをつけ一杯やってる客が散見される。


酒の肴だろうか、肉を焼くいい匂いが奥の方から漂ってくる。


予期せぬ飯テロに思わず腹りそうになったが、俺より先に誰かの腹がなる音がした。音の発生源は栗毛の髪のを揺らしながら、涎を垂らしそうな顔をしていた。


「おい、マロニー、はっきりと聞こえたぞ。それにその顔はちょっとないな。」


姉が顔をしかめて妹をたしなめた。


「うー。だってこんないい匂いしてるんだよ。もう、私ぃダメー。我慢なんかできないよ。ねえねえ、何か注文してもいい?」


「別に構わないが、記念祭でも料理が出るんだからほどほどにな。」


「はーい!」


元気よく返事をしてマロニーはどっと、駆け出し席に着くと給仕に何やら注文を始めた。


視線を受付に戻すとミーアの方は手続きが完了したようだった。

部屋は空いていたようでミーアはこっちを向いて可愛くオーケーサインつくり「大丈夫、よかったね。マユキー野宿せずすむよ。」

と笑顔で滞りなく俺の寝床が確保されたことを告げてくれたので俺はお礼をいいながら彼女の頭を撫でてやる。

するとミーアは、嬉しそうに表情を崩した。


さて、今後のスケジュールやらなんやらについて必要なミーティングをすることにしたが、その前にそれぞれ部屋で荷ほどきなり、一服なりをしてから一度落ち着いてからにしようということになった。


俺は特に荷物もなかったので、とりあえず部屋に入るとベットの中に倒れこんだ。


目をつぶりここまでの出来事を心のタイプライターで記録する。宿屋でのセーブは大丈夫だよな。


突然異世界に召喚された。カシャカシャ


砂漠に飛ばされ死にかけた。カシャカシャ


可愛い女の子に助けられた。カシャカシャ


騎手登録しギルドに所属した。カシャカシャ

……………………………………


「しかし、それにしても急展開だよなぁ。」


俺は思わず呟いたが、誰もいない部屋では相槌を打つものもなく、静かに声は虚空に吸い込まれて消えた。


これからのことを考える。


俺はギルドに入って騎手になったのだ。


これが某有名なゲームであれば職業が変わりレベルが1になっていることだろう。


もちろん前職業でのレベルによっては1でも相当戦えるのだが、俺の場合前職は「砂漠の行き倒れ」か「逃亡者」である。

話になりそうにもない。


ステータスは絶望的だろう。


というか、そもそも勇者とか戦闘職のステータスなら想像できる(力、素早さ、賢さなど)が騎手のステータスってなんだ。

俺はイメージを膨らませ競馬におけるステータス要素を想像してみる。ついでに自分の値もなんとなく設定してみる。




名前 マユキ


職業 見習い騎手(減量制度はあるのだろうか。)


スタート51/1000 折り合い 62/1000 観察力98/1000

ペース感覚700/1000 追い 39/1000

特殊スキル 特になし


こんな感じだろうか。いや全く根拠のない数字だけどレベル1ってイメージとしてはこれくらいかなって。


ちなみにペース感覚が突出して高いのは実は俺の数少ない特技として狂いのない体内時計があるため、それならとオマケした結果である。


俗に競馬は、馬が7割、人が3割という言葉がある。


どれだけ馬の能力が高くてもスタートをしっかり出してやって、レースでいいポジションにつけ、かつ馬と折り合い(人間と馬の呼吸を合わせ、馬に無駄な消耗をさせないこと。)ライバルの動きを観察し、ペースを読んで最適なタイミングでしっかり追い出し(スパートの指示)をしなければならない。


馬が良ければどうにでもなるというものではないのだ。(圧倒的な実力に差がある場合は、この限りではない。)


現実競馬において騎手の実力は、成績を見れば明らかだ。


年間で三桁以上勝ち星をあげる者もいれば、騎乗する馬を確保することすらままならない者もいる。(当然この中間もある。)


そこにはステータスにすれば大きな差があるだろう。


(俺は、どこまで行けるのだろうか。どうせなったなら上を目指したいけれども。)


ベッドで仰向けになり天井を見つめる。異世界でのチャンスは大いに活かしたい。ただ不安も小さくはない。


このまま一人でじっとしていても、なんだか気分がもや着くだけなので、気晴らしに色々歩いて見て回ることにしよう。


そう考えた俺の頭には


1 俺も腹が減っている。マロニーのいる食堂に向かう。

2 リザレッタを訪れ、騎手や競馬について色々聞いてみたい。

3 ミーアにギルドについて詳しく聞く。

4 ライザと男の友情を深める。


と4つ位選択肢を思い浮かべた。

どうするか少し考えたが、俺は結論を出し、目的の相手の場所を目指すべく部屋のドアノブに手をかけた。

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