小さく静かな宴会
どうも皆様こんばんは夜桜デビルです。大変お待たせしてしまいましたが通信制限に何とか打ち勝ち今晩やっと投稿することができました。何度も投稿遅れがありますがご了承くださいますようお願いします…けしてわざとやっているわけではありません。
話は変わりまして、今回のお話について。今回は狂助さんと霊夢さん視点が中心です。ちなみに次回は静夜と誰かのお話になっております※既に制作に取り掛かっています
それでは本編へどうぞ!!
「…ふぅ…」
白玉楼の一角に生える桜の枝に座り、背を幹に預けながら煙を吐き出す。気分が悪い…あの時フランに浴びせた殺気はいつもの俺には似つかわしくない本物の殺気。十六夜の時にも殺気を出したがあれは脅しの殺気、今回の殺気とは全く違う。狂気には二つの殺気がある。まず一つ目は誰しもが感情の奥底に留めている感情が漏れ出した時に出す殺気。二つ目は気が振れた際に漏れ出す狂気が殺気に混じり合い本当の殺す気配が辺りに充満する殺気。一つ目と二つ目の違いは大きく二つある。一つは殺気の強さ。誰しもが持つ殺気は強くても一瞬身震いが起こるくらいだが狂気が混ざった殺気は少量でも体が震え続け、強ければ金縛りにあったかのように体は動かず、全身が大きく震え続ける。俺は狂気であるため後者の方になり殺気を浴びていたフランは先ほど言った現象に陥ってしまったのだろう。次に感情不安定。普通の強い殺気は強い憎しみや妬みなどで感情不安定になり、人を殺そうとする気配を出しているだけのこと。しかし狂気が混じった殺気は殺そうとする気配ではなく…殺す気配だ。狂気が混じり合っている為、怒りも憎しみも妬みも関係なく、ただ一つ殺すだけに囚われる。今回は狂夜が止めに入ってくれたから助かったが狂夜がいなければ今頃フランは生きていないだろう。
「…足音も立てずに近づくのはよしてくれ…霊夢」
「別に普通に歩いてきただけよ」
風の音と同調してかはたまた考え事をしていた為か誰かの近づく足音に気が付くのが遅れた。近づいてきていたのは少し前まで酒でダウンしていた筈の博麗神社の巫女-博麗霊夢だった。
「それでこんな喧騒から離れたところまできてどうした。今は宴会中だろ?」
「寝起きにはあっちはちょっと五月蠅すぎるのよ。それで辺りを見渡したらちょうどアンタがここに居るのが見えて、静かそうだから来ただけ。それに…宴会だっていうのにお酒の一杯も飲んでないんでしょ?」
俺が座る枝の上まで飛んできた霊夢は伸ばした左足の横に座ると苦笑いと共に一升瓶と二つの胚を見せてくる。
「あぁ、そういえばまだ一滴も飲んでねぇな…。俺でよければ付き合うさ」
「そうこなくちゃ来た意味がないわよ。…はい」
「サンキュ、かてぇかも知れねぇが足乗っていいぞ?酒を注ぐのにはちょいと遠い」
いっぱいに注がれた胚を受け取る。しかし渡す際にどちらとも少々腕を伸ばさなければ届かない距離がある。別に女一人を片足に乗せておくことなんて苦にはならないだろう。それに見た目的に霊夢は軽そうだし。
「そうね。注ぐ度に腕を伸ばすのはちょっと面倒ね…それじゃ」
俺と同じ事を考えていたのか霊夢も納得し、座った状態で体を宙に浮かせゆっくりと俺の足に腰かけた。
「お、重くないわよね?」
「あぁ、全くと言って重くはねぇ。てか、逆に軽い…ちゃんと飯食ってんのか?」
足にかかる重みは微かなものでまるで小さな子供を乗せているようにも思える。しかしこんなに軽いと体に異常があるのではないのかと思ってしまう。フランを膝に乗せたことがあったが今乗っている霊夢よりも大分軽かったと記憶している。幻想郷の奴らは普通人間より体重が増えねぇのか?
「…食べてるわよ。御賽銭はないけど紫から生活に必要なお金はもらっているから」
「…そんな睨むなよ。生活費はって事はそれ以外には使えないぎりぎりの額しかもらえてねぇのか?」
「えぇ。別に買う物も、欲しいものも特にはないもの。生活できるだけのお金がもらえるだけ感謝しないと」
「情報よりも金に執着してねぇのな。ま、無駄遣いしてねぇって事は今後生活に困ることはねぇからいんじゃねぇか?」
「そうね…数年は食べていけるくらいは貯まっていると思うけどこういった大きな宴会があるとどうしても失費が多くなっちゃうわね」
少し考えて答える霊夢。やはり情報にあった通り自分に必要にないものは全くと言っていい程手に入れようという考えすらもないみたいだな。そうだ…
「霊夢ちょっと俺に背を向けるように座り直してくれるか?」
「何よいきなり?まぁいいわ…これでいい?」
俺の返答に疑問を持ちながらも俺の足を跨ぐ様に座り直す霊夢。それを確認し自分の首元へと両腕を持っていき俺の首元にかかっているペンダントを外す。
「あぁ。少しの間動くなよ」
「…わかったわ」
何をされるのかという警戒心なのか少し声のトーンが低くなった。まぁ、別に可笑しな事をやろうと言う訳じゃないからいいだろう。外したペンダントの鎖の両端を片手ずつ持ち、広げた状態で霊夢の首元に回す。
「ほら、これで少しは映えて見えんだろ」
「?」
首元に触れないように鎖を回しカチリとフックを掛け、後ろ髪を掻き上げ髪で中途半端に止まっている鎖を首元まで落とす。髪にしか触れていない為か何をされたのか分かっていない霊夢がこちらを振り返ったので俺の首元を指すことでペンダントをつけたことを示す。
「あ…」
「やっと気づいたか」
何度か首元を指すとやっと気づいたのか自分の首元に触れる。霊夢の指が触れ、ガチャガチャと音を立ててペンダントが揺れる。
「やるよ。俺がつけてるより似合ってるしな」
「い、いいわよ」
「いいからもらっとけ。俺は他人にプレゼントなんて殆どやらねぇからな。ま、ラッキーとでも思っとけ」
「…わかったわ。ありがとう狂助」
「おう」
少し照れたようにお礼をいう霊夢。そんなに照れなくてもいいと思うが…まぁ、こういったプレゼントをもらったことがないとかそんなことだろう。霧雨辺りもこういったものはあまりプレゼントする事はしないだろうしな。
「…綺麗ね」
「だろ?真ん中の黒い石は珍しいらしくてな、中々お目に掛かることができないんだと」
霊夢にやったペンダントは真ん中に黒い石が埋め込まれそれを囲うようにして銀が纏われているシンプルなデザインのもの。しかし、意外にもペンダントの真ん中に使われている黒い石は、中々手に入らないもので希少価値が高いそうだ。ま、希少価値が高かろうが俺の知ったことじゃないがな
「へぇ〜なら、結構したんじゃないの?」
「そうだな…確か、五十万くらいだったのは覚えてる」
「ご、五十万!?」
ペンダントの額を聞くやいなや首元のペンダントに視線を落とす。やはり、本当の額を言わなくて良かった。そんな希少価値がどうのと言われている石が埋め込まれたペンダントが五十万で売っている筈が無い、売っていたとしても本物か怪しいというものだ。ん?本当はいくらだったか?そうだな…確か百、二百万くらいだった筈だ。どうやってそんな大金を得ていたのかは秘密な?
「ちゃんと付けててくれよ?せっかくやったのに使ってもらえなきゃタダのゴミだからな」
「えぇ、大切に使わせてもらうわね」
そういいニッコリと笑った霊夢の顔は無邪気でそれでいって可愛らしい笑顔だった。やっぱり似てるな…。
「ちょ!?「悪い少しこのままでいてくれるか?」…もう酔いが回ってきたの?」
言うが早いかペンダントに夢中の霊夢をそっと抱きしめる。当然驚く霊夢に謝罪の言葉を掛けると溜息を一つ零した。
「んや、酒は強いみたいでまだ酔いは回ってねぇ。ただ少し懐かしいもんを思い出した」
「懐かしいもの?」
「あぁ。それにしても霊夢は暖かいな」
霊夢の肩においていた両手を腹部に回し、額を肩に乗せる。優しい香りが鼻腔を擽り、暖かな体温が心地良く伝わってくる。眠い…
「悪い…少しこのまま寝るわ」
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side change-霊夢
「(ホントに寝たのね…)」
杯にお酒を注ぎ軽く煽る。狂助が私に抱きついてから早十数分、初めこそ何かさせるのではと戸惑い、警戒したがすぐに寝息が聞こえてきた。しかし一点だけ不思議に思った部分がある。私の体に掛かる重みだ。狂助はこちらにもたれ掛かっているので必然的に体重がこちらにかかるのだが、その重みが以上に軽く思えるのだ。鍛えているといっても私は女、男性の体重をかけられれば重いと感じる筈なのだが今もたれ掛かっている狂助はいつももたれ掛かってくる紫と同じ位の重みなのだ。…もしかしたら狂助の種族である狂気が関係しているのかもしれない。そんなことより
「(何でよりにもよってここで寝るのよ…)」
私がいるのは言わずもがな木の上。それに喧騒が聞こえる場所よりも少しばかり離れている場所だ。酔っぱらい共がこちらに来る可能性は極めて低い。動こうにもお腹辺りに腕を回されている為このまま動けば起こしてしまう可能性がある。その条件下で私が取れる行動は一つ
「(…狂助が起きるまで待つしかないわね…)」
そう、動かず起きるのを待つことだ。幸いにもお酒と宴会場からパク…貰ってきたおつまみがあるので手持ち無沙になることはないだろう。
「(…まぁ、狂夜も私が寝たときに動かず起きるのを待っていてくれたしね)」
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「(んぅ…何の音…?)」
いつの間にか私も寝ていたようで物音のような音で意識が起きかける。まだしっかり意識がはっきりしていない為か視界はボヤけ、聴覚も音と言う曖昧なモノにしか聞こえない。しかし、音は私のすぐ後ろから聞こえてきているのはわかった。ゆっくりと目を閉じ、音を探るように意識を集中する。
「(…歌?)」
聞こえてきたのは狂助の声。まだ断続的にしか聞こえない為、確信は持てないが歌のようなメロディー。聞いたことのない歌、現世の歌かしら?
「わりぃ…起こしちまったか?」
「…別にいいわよ。宴会中に寝た私が悪いんだし」
メロディーが消え、少し低い声が耳に届く。後ろから聞こえてきた声に少し驚いたが今の体制を思い出し、納得しながら返答する。未だに体を密着させている為か背中とお腹に心地いい体温を感じる。
「それならいいが…っとちょい離れるな?」
お腹と背中に触れていた感覚が離れるのを感じる。しかし少し離れた瞬間少しの物足りなさを感じ、離れていく狂助の腕を掴み、引き寄せる。
「さ、寒いからそのままでいいわよ…」
「霊夢がいいならいいんだが、煙たいぞ?」
「煙から浮けば問題ないわよ」
「能力の無駄遣いだな…寒いんなら」
ちょっと離れるなといい、暖かさが消えてしまった。少し物足りなさを感じていると後ろからバサっと頭に何かを掛けられ目の前が真っ暗になる。急なことに驚きながら掛けられたものを引き剥がすし見やる。それは見覚えのある黒のパーカーだった
「貸してやるから着てろ」
チラリと後ろを見ると笑みを浮かべた狂助が目に映る。しかし
「アンタ寒くないの?」
「んや、全く。てか、狂気に暑さも寒さもあんま関係ねぇ。霊夢たちが寒くても俺にとっては若干冷たい位にしか感じねぇのよ」
上着の下は黒く袖の無い服一枚。それに胸元がV字に開いているので防寒には向いておらず、春に近づいてはいるが未だに寒い。
「それにお前の服装だって俺とあんまし変わんねぇだろ。生地薄いし脇パアパアだしよ」
「私の能力わかってるでしょ?まぁ完全に寒さから浮けないから多少寒いとは感じるけどね」
「どっちにしろ寒いのに代わりねぇんだろ?取り敢えず着とけ」
「…ありがとう使わせてもらうわね」
人の好意を無駄にするほど私は落ちぶれてはいないし、寒いのは事実なので渡された上着を羽織る。酔い潰れた時と同じ上着のようで内側についている毛がフワフワとしていて暖かい。
「さて、少し寝ちまったが再開するか」
「そうね」
お酒が並々と注がれた胚を受け取りカチンっとぶつけ合う。その音と共に私達だけの小さく静かな宴会が再開した。
いきなりですが今回の話で出てきた重要ワードを少し書き出します。ワードは五つ
・殺す気配
・ペンダント
・やっぱり似てる
・重みが以上に軽く思える
・歌
この五つのワードが今後の展開に少しかかわってきますのでお忘れないようにお願いします!
それでは次回もよろしくお願いします!!




