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我輩は騎獣である  作者: KEITA
第三章
31/127


 今日も騎者どのと共に、人間の集落を歩く。

 先ほどから周囲の視線がこちらに向かってくる。この村にすまう人間らは皆誰もが懐こい性質を持つようだ。こちらと目が合うと表情を綻ばせて挨拶をしてくれる。霊獣が歓迎されるという話は、嘘ではないらしい。

「この集落に出入りするようになってから、徐々に気配の多さにも慣れてきた。霊気の薄さ、動物の臭気密度にも良い意味で鈍感になれたと自負したい」

「そだな。人間との接し方も板についてきたんじゃねえか。本格的な付き合いとまではいかねえけど」

「うむ」

 最初この農村に入った際、付き纏ってきた雌らはあれから程なく霧散した。騎者どのが丁重な断り方を教えてくれたのだ。

「その気がねえならきっぱり口で断れよ。何も言わんでされるがままだと、いいように取られちまう。下手すりゃ逆に襲われるからな。男の生理現象逆手に取られる。昨今の肉食系女子を舐めちゃいけねえ」

「!! 魔族の気配が無い人型種の集落内では安心と思っていたが……!! 精霊族の肉をも喰らう者が只人に擬態している、そういうことか!?」

「いや、そういうことじゃなくて」

「?」

 肉食系という形容がまたよくわからなかったが、まあそういうものらしい。

「大抵の相手ならこっちが発した分だけの誠意をまた返してくれる。真心のある人間ってのはそれだけの度量を持つからな」

 騎者どのの緑の瞳が、何かを回想するように瞬いた。

「――ただ。世の中には色んな人間がいる。どこの世界もそうだけど、ひとくくりにするにゃ人間ってゆう種族は多すぎる。イイヤツもいりゃ悪いヤツもいる。当たり前だけど」

「うむ。それは天と同じであるな」

 遠く離れた郷を思う。同族の他、様々な獣や二本足の種族やらと出逢った。その誰もが親切な部類であったかというと、そうではない。

「懐こく話しかけてきたかと思えば、不意打ちで襲い掛かる肉食種も存在した。獣である我輩が天使の我が友と親しく過ごすのを快く思わず、引き離そうとする天使もいた。……我が群れを壊滅せしめた、あの猟奇的な妖精も存在した。この広き世に生きている限り、相容れぬ相手というものは限りない」

「そうだな。俺もさ、こんなカラダだから色々あったわけよ。色んなヤツが集まる学校でも入学から卒業までずっと成長しねえガキなんざ、うすっ気味悪ぃだろ? 特に人間ってのは、一個体で弱い種族だけあって、狭い世界の調和を乱しかねない奴に警戒するのが大半だからな。ガキはガキであればあるほどガキなことを隠せねえし。つまんねえイジメやらなんやら腐るほど経験した。まー全部返り討ちにしてやったけど」

 あっけらかんと話す騎者どのだが、相当の苦労をしてきたのだろう。

「そういう意味じゃあ、やっぱじいさんに感謝だな。スパルタ教育は勘弁だけど、それなりの利益もあったから。特に護身術やらちょっとした武技やらは役に立った。ガキってのは単純だからな。はっきり自分よか強えと解った相手にゃあ、タテつく気も失せるんだ」

 にいっと白い歯がまた零れる。思い出し笑いもこめられているらしい。

「ついでに過ぎたことは過ぎたこととして引き摺らないでフツウに接すれば、自然と仲良くなってくれる。時間ってのは偉大だよ。俺の成長に合わせてじいさんが色んな学校に逐一通わせてくれたってのも気が紛れた。転校の楽しみってのもあるもんだ」

 よっこらせ、とどこかで聞いた言葉を発して村長の棲家前の椅子に腰掛ける騎者どの。帯に差した霊具を抜いて、膝の上に乗せる。家宝を眺める緑眼が、長剣の表面に施された鉱物から発された光を反射した。

「クソじじい様は今頃あの世でせせら笑って『私に感謝しろよ』とかほざいてやがんだろうなあ。まあその通りだからしゃーないけど。やっぱムカつくわ」

 口調は苛立っているが、声音と表情はそれほどでもない。そう感じるのは我輩の気のせいではないだろう。

「じいさんのお陰で苦労したことも山ほどあんけど。でも、結果的にゃあメリットも大きかったから、それに応えてやんなきゃな」

 亡き祖父を思う若者の表情は、寂しげながらも明るかった。


「フショーの孫ってヤツだけど。じいさんの形見くれーは大事にしてえ。そう思うんだ」


 隣に腰掛けながら、我輩は頷いた。形見とは、この若者が手にしている剣と若者自身、双方を指すのだろうなと考えながら。

 霊具というものは、定期的な調整をしなければ霊具としての効力を徐々に弱めていってしまうのだそうだ。特に、一年に一度道具に込められた霊気を解放し循環させる工程が最も重要とのこと。

 騎者どのの祖父が亡くなって、半年が過ぎ去っている。霊力を行使出来るかの長老どのが、最後に調整をおこなってから半年以上。そろそろ本格的に霊具の「調整者」を見つけなければならない。

「騎者どの。我輩は人型ならもう人界の気配にそこそこ慣れたと言って過言でない。本性の姿では自然区域程度に留まっていればどこへでも征ける」

 我輩は騎者どのの望みを叶えたい。我が目的を果たすのは、更に途方も無い歳月をかけねばならないと識っている。なのでそれは後回しで構わないから。

「ゆえに、騎者どの。霊具の調整が出来る妖精を探そうぞ」

「……嬉しいが、無理すんなよ。リョクは一応麒麟なんだかんな」

「一応は余計だ」

 我が望みは、騎者のものと同意だ。


● ○ ●


 親しくなった村人らと別れるのは我輩としても少々心寂しかったが、これからの長き時と我が脚があればいつでも来れると言い聞かせる。無論、自分自身にだ。

『おにいちゃんたち、またきてね』

『こんな小さい村だが、いつでも歓迎するからな』

 せんべい屋の爺孫らをはじめとする顔馴染みの人間らに見送られ、我輩らはその村をあとにした。しばらく逢えなくなる代わりに、置き土産として我輩の本性をその場で明かした。勿論、彼らははっきり言わずとも口止めを了承してくれた。

 村の傍にある裏山、その一角にて集った幾人かの村人の前に姿を現し、一人ひとりに角を触れさせる。このものらに、霊力の恩恵が広く深く降り注ぐよう、祈りを込めて。

『ではさらばだ、獣を慈しむ優しき村の住人よ』

 騎者どのがひらりと背に跨り、軽く勢いをつけてからひとけりでその場をあとにした。



 我輩は天の獣ゆえ、人界の事柄には未だ詳しくは無い。しかれど何年かのち、口伝でうっすらとその村の評判を聞いた。

 とある国のとある小さな村は、米の有数産地とされている。その他にも、ひっそりと伝わる噂があるようだ。

 それは、全世界においても人型人外が数多く存在する人間界隈であるということ。その昔、天の霊獣である麒麟が定期的にその村に出入りし、村人と交流を深めた。かの麒麟は本性ではなく人型であったにも関わらず、その霊気の余波で周囲の自然環境が活発化。村人の幾人かが霊気の恩恵を受け健康体となり、人間にしては長めの命数を手に入れたそうだ。周囲の霊気濃度や村内の空気の妙もあり、霊獣と称される精霊族がちょくちょくと訪れる場所になっていったとのこと。今では村人の三分の一が、霊獣か獣人であるのだそうだ。過疎地域であるのに、その名物的な住人見たさに多くの観光客が訪れ、集落は衰退することなく発展しているらしい。

 小さな村ではあるが、歴史はそれなりに長い。かつて霊獣を厭った集落は霊獣を慈しむ集落へ変貌し、そして霊獣そのものが組する集落になったのだ。

 きっかけとなった獣人の女と麒麟の男の来訪を称え、村の入り口と出口には縞模様の肉食種と緑の鬣持つ草食種の獣を模った紋章が付けられ、それが村の象徴になったとのこと。


『やったなリョク、ついに制圧オメデト』

『?』

 騎者どのがにやにやとしながら放った言葉は、やはり不明であったが。


● ○ ●


 眼前に広がるのは、澄み渡る海原である。潮気漂う独特の匂い、陸上とは異なる数多の生物の気配。


「なーリョクさんよぅ……ホントにここ越えんの?」

「うむ」

「か、勘弁してくんないかなー」

 我が背に跨る相棒は、水が至極苦手なのだ。祖父どのから武技及び身のこなしの妙も一通り伝授されている騎者どのであるが、泳ぎだけは最後まで出来なかったそうだ。水中に潜るたび前にも後ろにも横にも進めず沈むだけとのこと。

「言っただろ? 俺カナヅチなんだよ。スポーツ大得意だけど『水泳除く』が注釈付きなの。水ん中入った途端に重石化して沈むだけなの。だからさーこういう場所とか心底ゲンナリするわけ」

 背から伝わる声音も手綱を握る手もげんなりとしている。

「しかれど騎者どの。東方の大陸にて霊具の調整が可能な妖精有りとの報せは、真なのだろう?」

「ああ、まーね。じいさん御用達の『網』の情報だから、間違い無いとは思うんだけどさ」

「ならば問題なかろう」

「いやいやいや、お前俺の話聞いてた? 俺カナヅチだって言ったよね!?」

 手綱と化した角をゆっさゆっさと揺さぶってくる騎者どの。どうでもいいが、それはあまり心地よい扱い方ではない。心持ち角も強張った。

「大丈夫だ、騎者どの。水精らには我輩の思念が届く限り伝えた、本日その領域に踏み込むことを。我輩が水面上を征く間、障害にはなり得ないと約束してくれた。そればかりか風の霊気を水の霊気で後押し、援助するとも言ってくれた」

「なに俺が知らねえうちに精霊族っぽいことしてんの何ドヤ顔で颯爽と大海原に踏み出そうとしてんの根本の解決にゃなってねえだろうがこのぉおおおおお」

 我輩が蹄を前に出すと、阻止しようと騎者どのが手綱を引く。そうはさせまいと我輩は前に踏み出そうとする、しかし騎者どのの抵抗に遭い、踏み出せない。

「き、騎者どの、越えねばならぬ壁を試みもせず諦めるなど雄として情けないぞ」

「情けなくてケッコーですから。こればっかりは勘弁しろ、いや勘弁してくださいリョク様ァッ」

 背から伝わる声が涙声になっている。騎者どのにとって水は相当な弱点のようだ。しかし我輩は気高き一族ゆえ、ここは心を魔獣にして彼を雄にしなければならない。かの母御や養父どののように、仔どもを後足で蹴り上げたり崖から躊躇い無く蹴落とすくらいの非情さが必要なのだ。金獅子も我が仔を千尋の渓に突き落とし這い上がってきたものだけを育てると聞いた、よってこれは騎者どのがためなのである。

「苦手項目を克服しないでなんとする! かのようなことでは前には進めぬぞ、それでもいいのか」

 ぐぎぎぎ、と首を引かれた状態で言い募れば、背後からぎぎぎ、と歯軋りの音がしてきそうな声が轟く。

「知らねえよ俺はとにかく足つかねえ水溜まりキライなの入りたくねえの、落ちたらヤなのッ」

「我輩の脚ならひとけりで百里以上は進めると知っておろう。対岸に障害物があったとて騎者どのが手綱を取れば回避出来る、それゆえ墜落する懸念など不要。かの祖父御から騎獣術は施されていると聞いた、なればこそ大丈夫だ。祖父どのの教えと自身の腕を信じろ」

「水深180センチ以上だと俺的にマズいってカナヅチセンサーが訴えるんだよ、水面近づいただけで足とか腕とか動かなくなるのッイロイロ無理ッ」

「最初から諦めるでない。勇気を出せ、カナヅチどの!」

「勝手にヘンな名で呼ぶんじゃねぇええええッ」

 ぐぎぎぎぎぎ、と騎者と騎獣の諍いはしばらく続いた。周囲の波音と、合間に響く鳥の鳴き声が長閑な中での喧嘩であった。

「~~拉致があかぬ。騎者どの、こうなれば強行突破する! つかまっていろ」

「へ?! おま、ちょ、え、」

「征くぞ!!」

 無理矢理に地を蹴るも。

「あぎゃああああああ水コワイみず水ミズいっぱいやぁあああああッ」

「く、騎者どの、手綱を――」


 ざっぱーん。



 半刻後、海辺にて薄着で蹲る騎者どのの姿があった。ぱちぱち、と燃えているのは焚き火である。着ていた殆どの服を乾かしながら、騎者どのは膝を抱えて咽び泣いていた。

「うっ、うっ、だから言ったのに。俺、水キライだってあれほど言ったのに」

「……済まなかった。多少、強引に過ぎた」

 我輩が強行に地を蹴ったはいいが、肝心の騎者どのが眼下に広がった海、もとい大量の水に恐慌し、手綱から手を離してしまったのだ。結果、我輩らは見事に水面に叩きつけられ、水中に投げ出された。前言通り重石のようにぶくぶくと沈んでゆく騎者どのの襟首を掴んで浮上、陸に上がってから彼の服を乾かしている最中なのである。

 漂う磯の臭気がきつい。潮気で固まった体毛などは霊気で瞬時に汚れを落とせたが、それでも気持ちが晴れ晴れとはいかない。理由はやはり、こうして膝を抱えておいおいと泣いている人間の若者がいるせいである。

 ミャア、ミャアと独特の声をあげる海鳥が飛来している。

 猫の鳴き声にも似たその鳥が傍を通り過ぎる際、我輩らを見て一羽が零した独り言が地味に堪えた。

「ミャア(バカじゃねーの?)」

「……」

「うっ、うっ、」

「……騎者どの、」

「うっ、うっ、マジ勘弁してつかーさい……俺本気で水駄目なんすよ、リョク先輩」

「……」

 本気で咽び泣いている成体の雄。

 彼は我輩が誇るべき魂の相棒、唯一無二の存在であり、終生の乗り手である。一応。




 話は、少々遡る。


 亡き長老どのは、生きておられた年数も永ければ顔も至極広い御仁であったようだ。古代より裏社会で幅を利かす人界の大規模な情報組織、その大本とかつて親しい仲にあったらしく、その縁で生前ちょくちょくと組織の足を無料で使用出来ていたらしい。

『じいさんって今更だけどすげえじいさんだったんだなって思うよ。死んでも「網」の連中は俺をサポートしてくれるもんな』

 先の大戦で組織構成員の大半を成していたエルフが激減したため、かの組織も一旦は散り散りとなった。戦乱が落ち着いてのち、長老どのが総力を以って生き延びた構成員を捜索援助し、形ばかり組織を復活させることに成功したらしい。その恩を返すため、時間をかけて完全復活を遂げた組織は長老どのを援助し返すことを約束、彼が望めばこれまた無料で情報を提供してくれるようになったとのこと。そしてそれは、彼の死後においても続いている。

『こいつもあのクソじじい様の置き土産だと思うとやっぱムカつくけど。せっかく遺してくれたんだから、有効に使っとかないと』

 そう言いつつ、組織から届いた新たな報告書に丹念に目を通す騎者どの。その顔が徐々に強張ってきた。

『騎者どの。何か芳しくない事象でも、』

『……半々ってトコ』

 人間の若者の顔は、まさに喜び半分苦さ半分という案配であった。

『どういう内容なのだ?』

『……霊具の定期調整出来そうなヤツが見つかったんだって』

『ふむ。良き報せだな。して悪しき報せは』

『…………』

 たっぷりとした沈黙のあと、騎者どのは沈痛な声音で言った。

『……ソイツがいんのは東大陸。こっから海越えた先にあるすげえ遠い国。船乗んなきゃならねえ……』

『騎者どのは「ふね」が苦手なのか』

『……船が苦手っつうか海が苦手。ぶっちゃけ水が苦手』

 ふらり、と今までに無い脱力した風情で紙片を片手に俯く若者。

『俺、カナヅチなんだ』

『金槌?』

『泳げねえってこと』

 その言葉の意味合いは、そこで初めて知った。


 ふね、というものは人界における移動手段のひとつである。人間は当然ながら水棲生物ではなく、泳げる技能を持つものでもさほど長くも速くも進めない。なので彼らはその明晰な頭脳と器用な手先で移動手段たる乗り物を製作、陸と陸との切れ間にある大海や、幅が広い河川などはそれを用いて移動しているそうだ。

 大きいものから小さいもの、小回りが利くものから重積に耐えうるもの、様々な形体を持つ船であるが、素材はこれまた水棲のものではない。自然区域に生える水気を通さない樹木や鉱山で採れる軽い金属など用いて、二本足の技術の髄を込め造られている。それでも精霊族の縄張りや自然区域の一部に踏み出す以上、一昔前は転覆や座礁が当たり前であったらしい。長い時間をかけ改良に改良を重ね、水精らにも了承を得ることを覚え(やはりというか、古代は精霊族に関して人間の認識は薄かった)、今では船というと立派な人界の乗り物が一環になったとのこと。

『船が高性能になり沈む心配がほぼ無いのなら、問題など無いように見受けるが』

 不思議に思って騎者どのに問う。彼が泳げないということはわかったが、それだけなら船に乗るということにさほど影響は無いのではと感じたのだ。

『――根っからのカナヅチ・別称「水の気配が周囲を取り囲むだけで怖気が走るレベルの水中嫌い」を舐めんな。水に浮かぶ物体に身を預けるっつうこと自体がヤなんだよっ』

 騎者どのの緑眼が血走っていた。

『それに俺、船酔いするし。大陸間の乗船代高えし』

 彼が船に乗りたくない理由は、多々あるらしい。

『ふむ。しかれど騎者どの、それらもさほど問題でないぞ』

『どーいう意味だよ?』

 我輩は角を張って答える。

『なんのために我輩がいるのだ。騎獣の脚ならば人界の海峡のひとつやふたつ、ひとけりで越えることが可能。それを証明してみせよう』

 自惚れでもなんでもなく、我が脚はそれだけのものを持っている。しかし誰よりもそれを識るはずの我が相棒は、元気を取り戻しはしなかった。

『根本の解決にゃあなってねえんだが……』

『大丈夫だ、すべて我輩に任せるがいい』

『……』

 鬱蒼と項垂れたままの騎者どのを尻目に、我輩は海越えの準備を始めた。




 そして、話は海辺での騎者どのの嗚咽へと戻る。

「うっ、うっ、……水キライ。スパルタな誰かさんも大ッキライ」

「……」

 いい加減泣き止んで欲しい、との懇願は却下された。この若者にとって、海という水溜まりは相当な恐怖対象だったらしい。

「うっ、ぐすっ、なんでイケメン万能野郎ってのはフツメン平凡野郎のステータス理解しようとしねえの? 俺騎者だけどじいさんみてえなチートキャラじゃないの。ごくフツウの男なの。おっぱいと平和を愛するただのフツメンなの。そこんとこイケメンはわかってない」

「……」

 確かに我輩としても強引だったとの自覚はあるので、沈黙せざるを得ない。それにしてもいけめんとはなんだ。ふつめんという新たな不明言語も登場している。

「ぐすっ、やっぱイケメンは撲滅された方がイイわ、ねー母さん? つうわけであの世でじいさんボコっといて。じいさんだって母さんにならタブン喜んでボコられてくれると思うし」

「……」

 なぜだろう、後半の騎者どのの言葉がこれ以上無く的を得ている気がした。

「イケメンキライ」

 防水仕様の布で覆われた家宝を握り締め、怨嗟を込め呟く騎者どの。いつの間にか泣き止んではいるようだが、論題がずれている。

「イケメン滅すべし」


 いけめんというものは(彼にとって)相当に悪いものらしい。



じいさんは嫁さんのビンタで色々と開眼したひとです(「Lila2」参照)

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