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我輩は騎獣である  作者: KEITA
第二章
13/127

 

 層を渡り、界を駆ける。

 それをおのれの脚ひとつでおこなえる、誇らしさ。

 この脚こそが、我ら一族そのもの。

 ただ、我らにとって足りないものがあるとするなら、それは天にすまうものとしての霊力だ。皆無というわけではない、しかし並みの霊獣以下といってよい。

 なぜ、我らはかほどに霊力が弱いのだろう。

 これほど強き脚をもっているのに。

 むしろ、だからこそ弱いのか。

(霊力さえあれば、我らは―――)

 

● ○ ●

 

 上層に着いた直後、下層や中層とはわけの違う霊圧が我輩を襲った。

「……ッ、ぐ」

 前足が沈み、蹄に負荷がかかる。普通の霊獣が上層以上に棲めないのは、この霊圧の高さ重さによる。常ならば、一日ももたず器が弾け飛ぶであろう。それを緩和し、全身に襲い掛かる圧力を引き受けてくれたのは他でもない、天使たる我が友だった。

 背後から全身を包む、純白の光。

 それが消えうせたのち、鬣の後ろでふうと息がひとつ吐かれた。

「俺らは非力だけど、霊気容量だけは多いからね。こんなことでしか役立てないのさ」

 見る間に軽くなる身体を捻らせ、どこまでも我輩の道のりを助けてくれる親友に角を擦り付けたのは言うまでもない。未だ、彼には感謝の念が絶えない。

「我が友の身体は平気なのか」

「平気だよ、苦しくはないから。むしろ俺はここで生まれたから、この霊圧が懐かしいぐらい」

 友の声に嘘は含まれず、至極軽やかで楽しそうだった。角を握る手に新たな霊気が宿っているのも感じる、本当に気分が良いのだろう。

 羨ましい。一瞬よぎった不相応な羨望を押し消し、我輩は軽くなった脚でかぽかぽと進みながら周囲を見渡した。

「ここが、上層か」

「ああ。見かけは中層とそう変わらないだろう?」

「うむ。大きく違うのは霊圧ぐらいか」

「その霊圧のせいで、棲んでいるものも大幅に違うんだ。察しているだろうけど」

 下層と中層に棲むのは低位以下の天使と四元精、妖精や一般的霊獣。植物もそれなりだ。

 対して。

 

「上層にすまうのはこの霊圧に耐えうるだけの器を持つものだ。俺ら天使はまだしも、他の精霊族が桁違いな実力者で埋まってる。四元精はもれなく高位クラス、植物の樹齢は万単位、そして霊獣も始祖たる種に近い。彼らは力に見合った矜持の持ち主だから、無闇に攻撃される恐れは無いけど、刺激しちゃいけないに越したことは無いから気をつけてね」

 

 周囲の風景が、途端に異質に思えてきた。吹きぬける風、それに騒ぐ木葉の音。端々に感じる、生き物の気配。それら全てが、我輩より巨きなものなのだという。六年前見上げたかの霊樹、それに匹敵するほどに。

(今の我輩にはあまり感じないが)

 ふと、我が霊力が低い利点はここにあるのかもしれないと思った。内在霊気が高ければ高いほど、感応する霊気も強くなる。霊力の低い獣だからこそ、他者がもつ霊力の巨きさ強さをあまり感じないでいられるのだ。この場に在るすべての生物の霊気を感じ取っていたら、我輩は恐ろしさのあまり一歩たりとも上層を歩けないだろう。

 弱者にも、弱者ゆえの強みがあるということか。

「霊力の強さによる秩序がはっきりとしているから、中層以下に存在するような細々とした問題は起きないだろうね。けれど、気構えはしておいたほうがいい。これから先は、君にとって見たこと無いものだらけだろうから」

 そう言って、天使の我が友は「上層部」に我輩を案内した。

 

「上層部」とは。

 天における治安機関の要だ。最上層の最高位天使も含めると総合で「本部」と称される機関、その大体の指令を出し、必要な天使を派遣しているのがここにあたる。

 ここへ来ようという案は友が出した。天界中を無闇に駆けずり回ろうとしていた我輩に、まず効率の良い情報収集場所としてこの「上層部」を提案してくれたのだ。上層の霊圧は自分がなんとかするから、と言って。その代わり俺の野望を叶えてくれ、君の背に乗せて欲しいと。

 そんなわけで、我輩は背に初の乗者を許し、ここ上層へと駆けてきたのである。

 

 その建物が見えるなり、友は我輩の背からひらりと飛び降りた。翼を使ってそれに近づき、すとんと扉の前に着地する。大きく声をあげた。

「すいませーんっ」次いで、大きな扉を拳で叩く。

 早速、未知なるものであった。

 友の家に代表されるような、木造りの小さな家屋ではない。まっしろな、突起状のものがひとつも見当たらない、四角い形をした巨大な建物。

「俺ですー、大天使が百四番目の『使役』エルヴィンですー、我が主たるキュリス様にお目どおり願いたいんですがーっ」

 どんどん、と扉が叩かれ、友の大きな声が響くなか、我輩はかの建物を眺めていた。

 こんなもの、見たことがない。一体何で出来ているのだろうか。あまりに大きな形状でありながら、交接部分すら見当たらない。つい、白い壁に近寄ってふんふんと匂いを嗅いでみる。

「くぉら、そこのイヴァ」

 びくり。

 背後からだみ声が響き、我輩と友は同時に身体をしならせてしまった。我が耳には後ろから小さく足音が届いてはいた。しかし害の無いものと判断していた上に眼前の好奇物に夢中で、反応が遅れてしまったのだ。

「なぁに勝手においらの御殿を嗅いでやがんだ。てめえは犬か」

 振り返ると、少し離れたところに佇んでこちらをにらみつけている姿が目に入る。……見たこともない種族だ。翼が無いし、雰囲気から言っても天使ではない。

 となると、妖精か。口調は荒く眼光はぎょろりと鋭いが、殺気のある類でもない。むしろ、まとう空気は朴訥として穏やかだ。

「あ? 今度はじろじろ無遠慮においらを見やがって。何か付いてやがんのか」

「いや、特に。済まぬ、礼儀も無しに」

 それよりイヌとはなんだろう。気になったが、聞くのも野暮だろうか。

「ふん」

 鼻を鳴らし、そのものはこちらへ近づいてくる。足にはめてある袋のような形状のものが地面に摺れて音をたてた。二本足の種族だ。天使ではない以上、妖精であろう。しかし、容貌もまとう雰囲気も、我輩の知らない類だ。上層の特殊な住人か。

 我輩らの近く――白い建物の扉の前まで来ると、そのものは立ち止まった。骨格自体は華奢ではないのに、上背はだいぶ低いようだった。我が友の腰のあたりに、ようやく黒い髪の天辺が見える。もしゃもしゃと細かく波打ち広がる様は、まるで我らの鬣の如く量があるように思えた。顔も、皮膚が見えている箇所が少ないほど毛で覆われている。我が友や黒き天使の容貌とはだいぶ違う。

 全身から何やら不思議な匂いもする。さほど不快ではないが、嗅ぎ覚えの無い匂い。

「なんだエルヴィンの兄ちゃんか」

「うん、ジャス久しぶり。キュリス様たちは?」

 慣れた様子で会話をする二人。どうやら彼らは知り合いのようだ。

「今何時だと思ってやがる。まだ天使連中はおねむの時間だよ。兄ちゃんのご主人も、まだいらっしゃらねえはずだ」

「そっか……上層と中層とじゃ陽の位置が違うもんね」

 友はかのものの言葉に納得顔で頷いた。要領を得ていない我輩にも説明して欲しい、そう言いかけたところで、新たなものに目を奪われ沈黙する。

「ここにずっといたら寒い。今開けてやるから入れ」

 そう言いながら、ずんぐりとした体躯に背負われていた小さめの荷物が探られる。その中から取り出されたのは、これまた初見のものだった。かのものの無骨な手に収まってしまうぐらいの銀色の欠片。にぶく光るそれは、見たところ木でも石でもないようだ。不思議な匂いが大きくなった。これが発していたのだろうか。

 かちり。それを扉の一部に差し込んで捻ったあと、小さな音がした。両手を使って押せば鈍く重い音と共に巨大な扉が開かれる。

「さあ入った入った」

 肉厚の手の平に追い立てられるよう、我輩らはその建物の中へと脚を踏み入れた。

 室内の温度と空気。それは、我が友の自宅に似たものだった。外がやや肌寒いともされる気温だったので、心持ち落ち着く。

 石造りである家屋の匂いに満ちた場所だ。

 大きな扉に相応しい広い入り口、そこから長く通路が奥へ続いている。地面には小さな石が規則正しく敷き詰められていた。壁も同様に石がはめ込まれ、隙間には固まった粘土。そしてところどころに突き立っている乳白色の柱は、大きな石を切り出したものだろう。ますます以って、建物の外側がどんな物質で出来ているのか気になる。

 視線を奪ったのは、建物の反対側にあると思われる不思議な色の壁だ。石や粘土とは違うものになっている。色とりどりの透き通ったつくりで、外からの光をその色に変換し、床へ投げかけていた。「ステンドグラスって言うんだよ」ぼうっと眺めていたら、友が耳打ちで教えてくれた。

「悪いね、待合室の鍵も開けてくれる?」

「しゃあねえな」

 友が扉を開けてくれたものに言うと、彼(恐らく雄で間違いないだろう)はまた背後の荷物を探った。じゃらり、取り出したのは先ほどの欠片が沢山連なる、大きな輪だ。

「ついて来い」

 彼が通路を歩き出すので、慌ててついてゆく。歩き幅は狭いが、早足だ。蹄が石に当たるかちかちという響きが落ち着かない。

 どこもかしこも、未知そのものだ。

「ふあー……やっぱこの霊圧、落ち着くなあ」

 横を歩きながら、天使の友が伸びをしている。気のせいか、白い翼もつやつやとして見えた。中層にいた頃よりぐんと顔色も良いし、もしかしなくとも、ここは。

「ああ、そうだよ。ここが俺の生家ってやつ」

 視線を読み、彼は答えてくれた。ざっと七十余年前に、この建物の中で生み出して頂いたのだ、と。

 天使にとって、生を受けた場所は至極重要だ。生家であり、霊気のこの上ない補給場であり、魂が還る郷である。全てにおいて相性が良いのだ。

「対なる黒き天使どのも、ここで生まれたのか?」

「サリアは俺と主が違っててね、互いに別の場所で生まれたんだ」

「ほう」

「で、知っての通り性格は正反対。彼女ってさ、なんだかああいう感じじゃない? いっつもそうなんだよなー魂の相棒なら、もっと優しくしてくれてもいいのに」

 聞いてもいないことをぶつくさと述べる我が友。中層にて話した時から感じていたが、彼はなんだかんだで彼女と良い相棒なのかもしれない。

 何やら愚痴が止まらなくなったらしい友の口上を流していたら、先を歩いていた早足がぴたりと止まった。じゃらりとひと探りで欠片の束からひとつをつまみ出し、眼前の小さな扉に差し込む。かち、という音のあと、すぐ上の出っ張りを回して開かれたのは、小さな部屋だった。

「開けたぜ、兄ちゃん」

「ありがとう、ジャス」

「ふん」

 礼を述べられた彼はまたひとつ鼻を鳴らし、じゃらりと欠片の音を響かせながら去っていった。

 我輩は躊躇い無く部屋へ踏み入れる友のあとに続く。部屋には中央に丸い卓が、その周囲に幾つかの椅子が置かれていた。ふわり、と漂う匂いは、馴染みのあるものだ。部屋の片隅に、小さな置物があり、そこからかの藁束と同じ落ち着く匂いが漂ってくる。

「ふう」

 友が椅子を引きそこに座ったので、我輩はその傍に近寄った。こきこきと肩の関節を鳴らしながら、背もたれのある椅子に寄りかかる若者。その背にある翼が、いつの間にか無くなっている。

「我が友。翼が、」

「ん? あ、これね」

 翼が消えうせ、今や外見はただの若者になった我が友は微笑んだ。

「ここは強い霊力で満ちているから。俺のような低位の天使でも、翼の出し入れが出来るようになったんだ」

 天使は、その外見で大体の実力及び階級がわかるという。

 力ある天使は持ちうる翼も大きく、多い。通常なら一対の翼だが、高位ともなると二対から三対の翼になるそうだ。天使にとって翼は、移動手段だけではない。霊力の源であり象徴でもある。例えるなら我ら一族の角と同じ位置づけなのだろう。

 そして、実力の証明たる翼は、常に外に出していて良いものでもない。

「むしろ、翼は出しているだけで霊気を微消費するから。天使としての力を発揮しない時間は、身のうちにしまっておいたほうがいいんだ。勿論、定期的手入れは必要だけど」

 ただし、翼の出し入れという作業自体、簡単なものではない。ある程度の霊力が無ければ技術的に難しいのだそうだ。

「低位の天使にとっては、一度引っ込めて出すより一週間出しっぱなしにした方が消費が抑えられるし手間もいらない。それぐらい俺たちにとって翼は出し入れし難いものだ。そして、高位の天使様ほど、翼の出入を簡単に行える」

 つまり、この「上層部」の建物は自分にとって相性の良い場所だから、自然と霊力が高まり、翼の出し入れも簡単に出来るようになった。そう言って、友はまた嬉しげに微笑んだ。

「気分いいよ。翼出しっぱなしって正直かっこ悪いから」

 彼ら特有の美意識というやつらしい。

「……今だったらサリアもちょっとは見直してくれるかな」

 やはりここでも出てくるのは、彼女の名だ。彼らしいといえば、彼らしかった。

 

● ○ ●

 

 他の天使らがこの建物にやってくるまでにはまだ時間があったので、我輩と友はその部屋にて寛いでいた。

 数刻もした頃合いだろうか。

 部屋に用意されてあった暇つぶし用の道具で、曰く「手持ち無沙汰になった天使の羽手入れ用」櫛を手にしていた友が、不意に声をあげた。

「あ」

「? どうした」

 鬣に丹念に入っていた心地よい物体の動きが止まり、我輩はいぶかしむ。天使の我が友は美しい細工の施された櫛の歯を我が鬣から抜き、いそいそと道具箱に仕舞う。

 次いで部屋の扉に向けられた晴天の視線が、いつになく光をまとっている。姿こそ違うがどこかで見覚えのある様だ。そわそわと落ち着かない所作、高潮を抑えきれない表情、そして輝く双眸。待ちきれない、といった風に、呟かれる。

「いらっしゃる……!」

 誰が、と問い返すまでもなく、その当人は現れた。

 静かであるが、凛と通った声。

 

「エル」

 

 開け放たれた部屋の扉、その外に立っていたのはひとりの天使だった。背にこそ翼は無いが、雰囲気からして一目瞭然だ。霊力の低い我輩にも感じ取れるほどの霊気量、まとう独特の衣。何よりそのものの持つ色が、一目にてその正体を示していた。

 横にある若者天使が、感極まったかのように呟く。

「キュリス様」

 眩い陽光の髪と、晴れ渡る夏の空が如くな双眸。長さや形はよく見ると違うが、その輝きは彼とまったく同じものである。

 声と体格からして雌――女であろう天使が、柔らかに微笑む。

「久しぶりですね」

「……っお久しぶりに存じます、我が主!!」

 駆け出す寸前の脚運びでかの前に跪き、その長い衣の裾に口付ける若者。動作は立派な「使役」たる天使であるのに、まとう雰囲気はまるきりこどものそれだった。

「よくぞ上層まで来ました。暫く見ないうちにまた大きくなったようですね」

「はいっ」

 若者の瞳が潤んだ。声が嬉しさに跳ねている。まさしく彼女が彼の「親」たる存在そのものなのであろう。

「ところで、そちらは?」

 友と揃いの晴天が、ついとこちらに向けられた。同じ輝きであるはずなのに、その視線には年齢たる深みと実力者たる重みがあり、柄にもなく緊張する。

 名乗る言葉を持たないので軽く会釈をするように角を下げると、友が補足するかのように紹介してくれた。

「彼は我が友、翼無き我が親友です。かの事件のイヴァでもあります」

「まあ、かの事件の……」

 深き晴天が細められた。短い言葉で、全てを察したようであった。

 友が足元から立ち上がると、衣擦れをさせながら歩み寄ってくる。さらり、と真っ直ぐに下ろされた長い髪がたなびいた。部屋の窓から差し込む光に、より眩しい陽光が反射する。ふと実感した。力ある天使の威容は、翼の有無など関係が無いのだ。

 我輩の眼前に来た美しい天使は、すっと目礼をして白い指先を胸に当てた。

「はじめまして、緑の鬣持つ強き脚の一族よ。私は上層に棲む天使キュリス。高位五隊が末席・大天使キュリスエルと申します。以後お見知りおきを」

「……我輩は中層が草地、亡き橙の雄の義理の息子たるものだ。今は群れ失くしてここにいる。こちらこそよろしく、夏の光持つ大天使どの」

 丁重な挨拶に身が締まる思いで返応する。実を言うと、他種族相手にきちんとした挨拶をするのは彼女が初めてであった。口上は合っているのか不明だったが、最低限の礼儀は守れたと思いたい。

「『夏の光』とは素敵な形容を頂きました。しかも貴方のような美しいイヴァに」

 そう応えた大天使の頬が少し紅潮している。背後にいる我が友の顔が、やや複雑そうなそれに変わったような気がした。彼女が振り返ると、すぐさまその表情を消したが。

「それにしても、よくぞこの上層部まで来て下さいました」

 さらさらと長き衣と髪をたなびかせ部屋の入り口まで戻ると、夏の晴天はにこやかに我輩を呼びかけた。柔らかな視線に、優しさと労わりを滲ませて。

「こちらへ。詳しい話はここよりも会合場所で致しましょう。皆も恐らく、貴方の話を聞きたがるはずです。エル、お前もおいでなさい。補足も必要だろうし、久しぶりゆえ傍にいて欲しいのです」

 そう言って彼女はふて腐れかけていた天使を簡単に笑顔に戻し、我輩らを案内するよう、通路に立った。

 どの世界においても、母親こそ子供を最も上手に喜ばせる存在であるのは共通らしい。

「―――キュリス様、見て下さい。今、俺ちゃんと翼しまえてますよね!」

「そのようですね。とても上手に出来ていますよ、エル」

「へへ、ありがとうございます!」

 大天使のあとについて通路を歩きながら、ふと懐かしいような心地になる。前方で大好きな母親にまとわりつくよう、なにこれと話しかけている姿が、かつての群れにいた小さな存在を思い起こさせたからだ。

 誰よりも小さく、誰よりも生の光に満ち溢れていたいとおしいもの。

 同時に胸の内側に伝わる、癒えなかった傷痕が引き攣れるような痛み。

(我輩は、あれを、救えなかったのだ)

 その悔恨は幾度となく身のうちを襲う。油断をしたら飲み込まれ、底無しに沈みゆき今の意識を保っていられないだろう。それでは文字通り、全ての決意が灰燼に帰してしまう。

 ゆえに、我輩はあえて感覚を鈍重にする。心の芯にあるかつてあったものへの郷愁はそのままに、表面は毅く穏やかな振りをする。

(平気だ、我輩はもう成獣なのだから)

 恐怖を感じているわけでもないのに、背がまた、じくりと疼いた。

 

● ○ ●

 

 天「上層部」は五人の高位天使を始め、彼らの指令や手配によって無数の低位天使が手足となり、運営されている。

 高位天使とは、天使全体の階級の中間より上の五つまでのものを指すらしい。我が友、そして対なる黒き天使はその五隊のすぐ下の階級だ。といっても低位と高位との間には越えられない壁があり、高位となるには年数と霊力が遥かに足らない、と友は特段自嘲するわけでもなく語っていた。なにせ、彼らは生み出されてからまだ百年にも満たない。天使どころか、天全体においても幼い部類に入るので当然といえよう。

 対して、かの大天使に代表される高位以上の天使は、皆その階級に相応しく年齢を経ており、高い霊力を持つ実力者ぞろいだ。姿かたちの威容は勿論、霊力が低い我輩のようなものにも感じ取れるほど、内在霊気が桁違いである。

 そして、その思惑思考も至極広く、深い。

 

● ○ ●

 

「ぬしがかの事件で生き残ったイヴァか!」

 大天使に案内されたのは、建物の中でも特に広々とした空間の部屋であった。そしてそこで話しかけてきたのは、これまた広々とした卓と数ある椅子に腰掛けていた、男の天使である。

「怪我は無いようで何よりだ。それにしても、なんと見事な鬣よ。まるで深き森の中にいるようだ。脚もとても強そうであるし、このような均整の取れたイヴァはみたことが無い……んん待てよ? 角からして、まだ育ちつくしてはいない。まだまだ大きくなるのか、素晴らしい」

 部屋に入るなり立ち上がり、目を輝かせて近寄ったかと思えばまくし立てられ、正直困惑の思いで立ちすくむ。大天使を上回るかのものの威容に圧倒されていたとも言える。

 ふと気づいたかのように、薄い色をした双眸が瞬いた。

「済まぬ、挨拶がまだであったな。我が名はバラク。高位五隊が中次席・権天使バラクエルだ」

 我が友や大天使のものより濃い金の髪と、揃いの色の太眉が特徴的であった。対して細い瞳は至極薄い色。骨格や体高もだいぶ違い、縦にも横にも大きい。そこから発せられる声も、野太い低音だ。

「よく来てくれた。我はとても嬉しいぞ」

 しかし、この威容も深みもちゃんとあるのに好奇心と高揚に輝く表情は、なぜなのだろう。我らは初対面であるはずなのに、彼はそれを超越した何かを楽しんでいるようだ。

 挨拶を済ませたあと、心持ち後ずさりした我輩を見て、やっと権天使は自らの言動に注釈を入れてくれた。

「ああ、さすがにぶしつけだったか。我はイヴァたる生き物が大好きなのだ。我らは上層に棲むゆえ、ぬしらに逢う機会はとんと少なくてな。こうして間近にするなど、我が半生においても中々無い」

 薄い色の双眸が、また輝きだしている。我輩の全身を眺めるその視線に何やらこどものような風情を感じた。彼は我が友と違い、それなりに生きている高位天使のはずなのだが。

「それにしてもなんと見事な体躯よ……この世に生まれ出でて二千年となるが、かの生き物ほど誇り高く美しい獣は見たことが無い。なあ緑のイヴァ、ほんの少し、少しの時間でいいんだ、その背に我を……」

「はいはい、そこまでそこまで」

 その濃い色の頭髪を、うしろからべしりと叩いた手がある。わざわざ彼の肩に手をついて跳び上がってそれを為したらしい身体が、すたっと降り立った。

「ごめんね、緑の鬣持つイヴァさん。適当に流してやって」

 大きな体躯の肩から手を離し、ひょっこりと顔を出したのは小さな体躯をした女の天使だ。白に近いほど薄い銀の髪と、濃紺ともとれる色の双眸が対照的に鮮やかで、彼女の威容もやはり高位天使たるものであった。

「こいつのイヴァ狂いは昔っからでね。天使だった頃から何かっていうと中層に行きたがるわイヴァの絵を描きまくるわ、毎日のように『我はイヴァの騎者』とかなんとか妄想するわで大変だったの」

「ッそ、それは言うなシャティ!!」

 権天使の頬が真っ赤になり毛深い眉がぶわっと膨らんだ。事実ではあるが、掘り起こされたくない過去だったらしい。

「こういう奴だからもう、適当に話してるだけで満足すると思う。無理して騎乗させないでいいよ。調子に乗るから」

「そうか、承知した」

「そんなッ……ああシャティ、ぬしが勝手に取り決めをしたせいで!」

「バラクは絶対それだけじゃおさまらないでしょ。暴走天使をほっておくほうが問題だから」

 頑強そうな男を簡単にあたふたとさせ更に黙らせたあと、しなやかな雰囲気の女はこちらに向き直る。かの髪は、首筋にもかかっていない。二本足の雌でこれほど短い頭髪のものは、初めて見た。彼女の持つ空気には至極似合っている。

「わたしはシャティ。高位五隊が中席・能天使シャティエル。あなたのことは聞き及んでるよ」

 短い銀髪の能天使は片目を瞑って「改まった挨拶は不要」と言外に語りかけてきた。悪戯っぽい柔軟さと同居する泰然とした空気、それを彼女は至極自然にまとっている。濃紺の視線も本人の内面を顕すが如く、深い色をしていた。

「ゴホン! ……これが、我の対なる存在にあたる者だ、緑のイヴァ」

「そ。何が間違って魂の相棒になっちゃったのか未だに不明だけど、こいつがわたしの対なの。毎回毎回突っ走るから、フォローに回るのって大変なんだよね」

「シャティっ、せっかくイヴァに紹介しているのにその言い方は無かろう!!」

「はいはい」

「大体シャティは――」

 何やら彼らだけで盛り上がってしまったようなので、取り残されるようにぽつんと立っていた。我輩が及びもつかぬほどの年齢を経ているはずの彼らで天全体においても名高い存在であるはずだが、こう見ると極普通の男と女だ。

「……ごめんなさいね、おふた方はいつもこうなのです。とても仲がよろしいと私は思うのですけれど」

 背後で、皆の分の茶葉を蒸らしている大天使が困ったような声音で言う。だがまとう雰囲気は至極慣れて楽しげだった。本当に、いつものことなのだろう。

 ふわり、嗅ぎ覚えのある香りが広い部屋に漂った。

 大柄な権天使と細身の能天使、彼らの仲良さげな様を眺めるに、ほんの少し、胸の内に郷愁とかの痛みが舞い戻ってくる。かつての群れにも、似たような関係性のつがいがいた。体躯と豪気に任せ突っ走る雄と、それを宥める繊細でしなやかな雌と。互いに欠けているものを補い合うかのような、対のもの。

 幸せを体現していた彼らを、救えなかったのは―――

 ずくり

(駄目だ)

 さっきから我輩は繰り返している。幾度思い改めても、戻ってきてしまうかの悔恨。

(駄目だ。このような弱き心で、一族の無念を晴らせるとでも思っているのか)

 背の皮が疼く。

 歯を噛み締め、蹄に力が入らないようにした。そのままでいたら、この建物の床を蹴り砕き壁を突き破ってどこへともなく駆け出していってしまいそうだった。

 ずくり

 あえて感情を殺し、虚空を見つめる。その姿に、いつの間にか喧騒をやめた天使たちが視線を送っていたことに、我輩は気づかなかった。

 

 

 

 十数分ほどのちの部屋には、人数分の茶器と茶請けが用意されていた。かの匂いも、ゆったりと濃厚に漂っている。そして集ったものの気配もそれなりだった。

 会合場所とされる広間、そこに集まったのは我輩を除けば六人の天使だ。大天使の傍らに控える我が友、隣り合って座る権天使と能天使、そして。

 

「今回の会合には、見慣れぬ姿がおるのう」

 円卓の上座、そのひとつに座しているのは老齢の天使であった。二本足の容姿が見分けにくい我輩でもはっきりとわかる、年季を帯びた証である真っ白な頭髪と顔に刻まれた老輪。しかれどその威容と皺の隙間から除く群青の眼光は、見た目が若い天使に何ひとつ劣っていない。いや、むしろ先に逢った彼らよりずっと大きい力を秘めている。見るからに高位の中でも上席だ。あとから知ったことはあるが、彼は厳密には二番目に強きものだった。

 

「キュリス。説明を」

 ふたつある上座のもうひとつにいるのは、対照的に若い男の天使だ。軽くうねって首筋にかかる銀髪と色鮮やかな碧眼。言葉少なに大天使を促すその姿は、一瞥だけで圧倒されるような覇気と凝縮された力を感じ取れる。そう、この場の誰も及ばぬような深遠を。

 

「はい、イオフィ」

 男の視線に促され、大天使は緊張した面持ちで頷き声を発する。

「彼は中層で起きたかの事件の当事者です。妖精によるイヴァの屠殺、それを生き残り下手人たるエルフを討ったのは彼とのこと。偶然にも我が使役たるエルヴィンの知り合いで、その伝によりここまで来てくださいました」

 要点をまとめてくれた彼女の言葉、それに応えるように軽く角をさげる我輩。それを見つめていた男の碧い双眸が、面白げに瞬いた。

「……ふーん?」

「はは、なるほどなあ」

 その隣の老人は声をあげて笑い、皺に囲まれた双眸が穏やかにこちらを見つめる。しかし次の瞬間、まとう雰囲気が変わった。

 

「そして何用じゃ、そこなるイヴァは? いちど血の海をかいくぐれた程度の力で、悦に浸っておるのか」

 

 空気が凍る。

 ひく、と大天使の横にいた我が友の喉が引き攣った。彼の「親」たる彼女でさえ、戸惑ったように晴天の瞳を老人に合わせた。

「デ、デュナ様……」

 穏やかながら感情を露とも感じさせない光で、老人は我輩を見つめてくる。ふ、と息を吐くように冷ややかに嗤い、彼は言った。

「そうであろう? 今にも倒れそうなほど弱々しい風情であるのに、何用があってここ上層まで来たのか」

「デュナ様、我が使役の発言の許可を」

 場を取り繕うように、大天使が声をあげた。視線で促され、横にいた我が友が一歩踏み出す。その身体は傍目からでもわかるほどがちがちと強張り、声もまたそのようだった。

「あ、の! 恐れながら、ここ上層に来ようと彼に提案し、連れてきたのはお、俺です」

「ふむ、してこの霊圧も引き受けてやったというわけじゃな、相変わらずなんともお人よしなことよ」

 まこと主に似たのう、と皺が刻まれた目元で我が友に微笑み、しかし我輩に向き直った視線は笑ってはいなかった。静かながら圧倒的な威容に身が竦む。

「しかれど、霊獣が完全に天使の言いなりになるなど、あり得まい。ここに来たのは、そこなるイヴァの意思であろう」

「そうだ。ここにいるのは我輩の意志だ」

 見えぬ圧力、それに負けぬよう我輩は声を張り上げた。

 老人の目元に不可解な表情が浮かぶ。まるで我輩をあざ笑うかのような。

「なるほど」

 沈黙が一瞬おりた。

 凍りついたような広間にて、上座の男が声を発する。彼もまた、愚か者を鼻で嗤うようような声音であった。

 

「――まさかとは思うけれど。そのか弱い脚で、失踪事件の黒幕も討とうとでも考えているの?」

 

 か弱い、脚。

 考える前に、言葉が出ていた。

「そのつもりだ」

 脳裏が煮えたぎった湯を飲まされたように、熱くなっていた。か弱い脚、弱きものだと、我が一族の誇りたるものを、このものはそう断じたのか。

 湧き上がるものが抑えきれない。

 他の部位を揶揄されたとて、これほど激昂はしない。我輩が弱者であることなど解っている、霊力の強い彼らから言うと、我輩のそれなどまさに塵芥に過ぎぬ容量なのだから。

 しかし、我らの脚力は、それを補って余りあると信じている。それこそが我らの誇りなのだ。この脚を、我が一族の最大の武器を貶された。黙ってなどいられない。

「我が一族の誇りにかけて、我が家族の無念を晴らすべく、我輩はここにいる。何がおかしいのか」

「おかしいのか、だって? くくく、おかしいよ」

「ふははは、これが笑わずにおられるか、のう?」

 我が友が視界の片隅でそうとわかるほど慌てており、大天使の瞳が戸惑うように揺れ、権天使と能天使が、共に顔をしかめたのが見えた。

 笑っているのは、この高位天使の上席たるふたりだけだ。真剣に応えたがために、煮え湯をまた浴びせられた心地で我輩は問い直した。

「もう一度問う。……何がおかしいのか」

 低く凝縮された怒りに、卓に置かれた茶器が震える。

 零れ落ちそうな水面を悪戯に揺すり、溢れさせようとするが如く。簡単に紡がれるは、我が誇りを揺らがせる言葉。

 

「実力の伴わぬものが大言壮語を吐こうと、おかしなだけの話よ」

「尻尾を巻いて帰るといいよ、弱き脚のイヴァ」

 

 耐え切れず、水が零れる。

 

○ ● ○

 

 脚こそが、我ら一族そのもの。

 

 誇りであり、最大の武器。

 

 それが通用しないなど――

 

 

 

「貴殿の群れが、いかに殺戮されたのか。それを知ってる?」

 

 高位五隊が首席・主天使イオフィエルは問う。緩く渦巻いた暗い色の銀髪が、冷風に吹かれて軽く靡いている。

「その分だと詳細は知らないようだね。あの小さな黒き使役は、なんだかんだ言ってもお優しいから」

 貴殿を思い遣って、惨い部分の説明は省いたのだろう。そう言い、彼は背を見せていた体勢を入れ替えこちらを向いた。一目見て印象に残る碧眼は、色彩の鮮やかさとは裏腹にただ静かな感情しか顕れない。

「奴はまず、群れの長を斬った。それも至近距離にて、だまし討ちそのままに」

 骨ばった手に握られているのは、見覚えのあるものだ。あの日禍々しく赤に染まっていた、凶器。我が群れを殺しつくしたもの。今は表面を覆われているが、その下に隠されている薄く長いものが、あの日あの雌をいとも容易く両断した。それを、いまだ覚えている。

 おぼえて、いる。

「この霊具は、準備動作をほぼ無くして相手に斬りつけることが出来る剣だ。にこやかな顔で殺気も皆無なまま、まるで草を刈るように命を奪える。ついでに刃渡りは手にしたものの伸縮自在。鞘に入っているままでも軽さは変わらない、これが抜き身でしかも武器たる霊具の扱いに長けたエルフが遣い手ならば、まさに恐ろしいほどの効果を発揮する」

 おかしいと思っていたのだ。我が養父どのが、あの群れ一番の脚と見識、用心深さを持つ彼が、あれほど呆気無く命を失うなど。かの光景がまなうらに蘇ってきた。思い出したくはないのに。

 おもいだしたくは、ない。

「群れの長は、そうして前足を絶たれた。二本とも、ね。後足が無事であろうと軸を失い蹴り上げることはおろか、飛び掛ることすら叶わなくなったイヴァなど、霊具を持ったエルフの敵じゃない。あっという間に残り二本も失い、拷問のように両眼を抉り出され、動くことすら出来ずそのまま失血死した」

 思い出したくはない、聞きたくもない。けれど耳に入るかの声を断絶出来ない。静止の言の葉も出ず、この場からの情けない遁走すら出来はしない。

 なにも、できない。

「駆け寄った雌も、背後から一突きで息絶えた」

 やめてくれ。

「群れの長は、その群れにおける名実共に一番の実力者だ。それがあっけなく斃されたこととかのつがいまで刺されたこと、おびただしい血の匂いと死の気配、すべてに群れ全体は混乱した。雄はまず自分たちのつがいや仔を逃がそうとしたが、逆にそれが仇となった」

 もう、じゅうぶんだ。

「奴は注意のそれた雄を片端から斬り倒し、自失する彼らのつがいを容赦なく貫いた。つがいを自らの身体で庇おうとして、逆に二頭ごと刺されたものもいる。貴殿らイヴァがいかに血に耐性を持っていようと、所詮は麒麟。死臭の連鎖に耐えることなど出来はしない。親しい仲間の血が流れたのだからなおさら動揺し、ろくに抵抗も逃避も出来ないまま殺されていった」

 ああ、どうして。

「仔とつがい両方を逃がそうとした父親が全身を裂かれ、それを見た仔が母親の元から離れて奴に飛び掛った。その直後に貴殿が群れに帰り、奴と鉢合わせたわけだ」

 わがはいが、もっとはやく、たどりついていれば。

「過ぎ去った事象は戻らない。それに、貴殿が早く帰り着いていたとて、そう結果は変わらなかっただろう。むしろ、同じ目に遭わされていた可能性が高い。貴殿が奴に勝てたのは、ただ単に奴が油断していただけの話さ」

 わがはいが、

「わかっただろう。貴殿は、運が良かった。そして、それだけだ」

 もっと、

「貴殿がしようとしていること、その何倍も過酷で果ての見えぬ作業を、貴殿の同族たるものたちが三年も前からしている」

 もっと、

「……だが、まだ結果は見えない。ついでに言うなら貴殿の倍ほどは脚力のあるものたちだ。なのに、まだ、かの失踪事件は真相が掴めていない」

 もっと

「わかっただろう?」

 

 もっと、つよかったなら。

 

「―――わかっ、た」

 

 倒れ、動けない我輩の鬣。そこにひとすじ、冷たいものが滴る。

 声を出すのが辛いほど息が苦しく、全身が痛い。地に接している側から伝わる感触と、空気に晒されている側から伝わる温度。横になった視界に映る情景と、耳に入る音。すべてが、嘲りながら我輩を踏みつけてきた。

(これが、事実か)

 鞘に入ったままの霊具で我輩を打ち据えた天使は、息一つ乱していない。翼すら出していなかった。

 そして、それが現状であった。

 

 

 

 

 脚こそが、我ら一族そのもの。

 

 誇りであり、最大の武器。

 

 しかし、もしそれが通用しないのなら。

 

 我らは一体、どうしたらよいのだろう。

 


※高位以上の天使は皆、低位天使と違って通常生活においては翼をしまっている。これは実力者の証明であると共に、周囲への影響を防ぐためである。天使の翼は100%霊気で出来ているため、高実力のものが外に出すとそれだけで周辺霊圧が高くなってしまう。

※ゆえに、彼らの移動手段は低位天使と違って徒歩か騎馬・騎獣である。長距離の場合、大抵は天馬かイヴァに乗って移動するらしい。

※翼を出すだけで周囲に影響を与えてしまうため、翼なしでも最低限のことはこなせるように鍛錬した結果、高位天使は身体能力が高くなった。基本的には人間程度だが、意識して身のうちに渦巻く霊気をコントロールできるようになると、霊具を手にしたエルフ並みに動けるとされる。

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