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我輩は騎獣である  作者: KEITA
序章
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すべての序


 我輩は騎獣である。名はリョクという。


 天の最上層におわす偉大なる我らが始祖、その末端に生を授けていただいて二百と三十五年になる。我ら一族の基準からするとまあほどほど、若輩でもないが老齢でもない中間の齢だ。人界の言い方を借りるなら働き盛りといったところか。生まれてよりこのかた大きな怪我をしらず病も得ず、四足ともに至極健やかだ。

 名は我が騎者どのから頂いた。リョクという響きは、「緑」の意味だそうだ。我が鬣の色からとったという。安直だなんだと周囲からからかわれつつ、騎者どのは譲らなかった。我輩としても気に入っている、無駄の無い響きが至極良い。

 我輩の性は雄だ。勿論つがいも居る。連れ添って七年と十一の月を越えた、しかし仔は未だ無い。健やかな身体と環境からみるに、常ならば、すでにつがいとの間に仔がいてしかるべきだろうと言われる。最もな意見だ。繁期を逃したのかと言われれば返す言葉も無い。その通りだからだ。

我らは総じて繁殖可能の期が至極限られている。人界の獣と比べてもその差は歴然だ、なにせ三年に一度である。

 雌の発情は三つの年を跨ぐ間にたった一度しか訪れず、しかも至極短い。だから雄は、つがいにその兆しがあればすぐさま臨めるよう、心構えをしている。雄の発情は年中無休であるが、二本足らのそれと違うのは理性で完璧に制御できるという点だ。しかし肝心の雌の状態は限られている。自然と繁殖期のつがいの様子に敏感になろうものだ。

 そういうわけで、繁殖の好機を逃すなど雄としてあり得ない。絶好と見極めたら即、時も場所もわきまえず後ろから圧し掛かるのは当然だ。そう語れば、我が騎者どの及び周囲の二本足連中は呆れ顔及び引き腰になったが。

 つがいとなってとっくに七年というに、仔が無ければ雌が孕んだ様子も無い。これは出逢ってから二度ほど訪れたであろう繁殖期、および繁殖機を逃したということに他ならない。要するに雄がしくじったということだ。

 それを知った同族が嗤おうが嘲ろうが呆れようが、我輩は気にもしない。れっきとした理由があるからだ。

 そのわけを知るには、些か長くなるが、色々と語る必要があるだろう。我輩のこと、騎者どののこと、騎者どのの伴侶のこと、そして我がつがいのこと。時が許すのであれば、聞いていって欲しい。


 要は、一頭の騎獣がなりたつまでの話だ。



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