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泣き虫吸血鬼は最後の恋をする〜ミイラを拾って水(血)をやったら超絶イケメンになりました〜  作者: 甲野 莉絵


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37話 続・招かれざる客2

 俺が洗いざらい全てを話す間、フィンリーはほとんど何も言わず聞いていた。


「なるほど、それでこの家に転がり込んだと言う訳ね」


「はい。それで……蒼への疑いは晴れますか?」


 フィンリーが答える前に蒼が頭を下げた。


「今まで嘘を吐いていて申し訳ありませんでした。ですが、彼は人の弱さを理解している心優しい吸血鬼です。どうか見逃していただけませんか?」


 蒼、ありがとう。今後どうなるか全然予想は付かないけど、俺も誠心誠意頭を下げよう。


「よろしくお願いします」


「そう、でも嘘を吐かれてアタシとても残念だわ。……血の匂いが苦手な吸血鬼なんて居る訳がないでしょう!」


「そう言われても……。話した通り生臭い匂いを生理的に受け付けない体質なんです」


「だったら証拠を見せてみなさい。その人工血液とやらをね!」


「今日は無いんです。あれは研究段階だから、そう何本も家には置いておけないらしくて。だよな?」


「ええ、明日来てくださればお見せ出来ますよ」


 蒼も援護射撃してくれてるけどマズイぞ、話してる俺でもかなり嘘っぽく聞こえるくらいだ。


「そう……それならアタシがここでカタをつけてあげる!」


 フィンリーはそう言うとスッと立ち上がり、銀の短剣を抜いた。クソッ、やっぱりこうなるのかよ! 俺の気持ちに勘付いてるから、蒼が居るここで暴れられないと見越して、それを抜いたのか?


 奥歯を噛み締めソファーから飛び退き、窓の近くへ駆け寄る。一か八かで外へ逃げるか? いや、日光の下では碌に動けずフィンリーにあっさり捕まってお終いだ。


「さあ、見てなさい!」


 フィンリーは目を爛々と輝かせ銀の短剣を振り上げると、あろう事か自分自身の腕を切り付けた。パックリと開いた傷口から血がドクドクと流れ出て、ブワッと血生臭い匂いが部屋の中に充満する。


「なんて事してくれ――ゲッホ、ゴホッ!」


 久々に嗅いだ濃い血の匂いに咽せて何も言えない。咽せる度に息を吸うから、否応なしに悪臭を吸い込む事になる。息を止めて超特急で換気扇を点け、悪臭の元を断つためフィンリーの腕をガシッと掴む。


「ほら来たわぁ〜、やっぱり本能には逆らえないのねぇ?」


「馬鹿な事言ってないで、早く自分で傷口をくっ付けるようにふさげ!」


 鍋つかみをはめた手で、フィンリーが持つ銀の短剣を取り上げ、蒼に渡す。それから人差し指と中指にたっぷり唾を付け、フィンリーの傷口に塗り付けた。みるみるうちに傷口が塞がっていく。


「お前は馬鹿か!? じゃなかった……二度とこんな意味の無い真似はしないでください!」


「へぇ〜吸血鬼の唾液に傷口を塞ぐ効果があるとは知ってたけど、不死の王にやって貰えるなんて〜」


 ……反省してないだろ? 俺が血の匂いで寄って来る事を身をもって証明しようとするなんて、すごい仕事熱心だと思うけど、到底理解出来ない。手を二度洗いして戻って来ると、蒼がちょっとむすっとしてた。


「どうして私が包丁で指を切った時は、消毒して絆創膏を巻くだけだったの? あの後、地味にヒリヒリして痛かったんだけど」


 えっ、えー、確かに傷の治りはかなり早いけど唾って何と言うか、汚いだろ? 俺に付けられて嬉しいのか? 蒼って時々ズレてるよな。


「えっ、アオイさん不死の王の前で指を切ってたの? それでしゃぶりつかないって、本当に血の匂いが苦手なのねぇ。初めはアオイさんが不死の王の餌で、催眠術を掛けられているのかと思ってたのよ」


 餌ってなんだよ、餌って。レイラじゃないんだぞ。フィンリーはそんな俺を見てにまっと笑う。


「そっかぁ〜、唾なんてつけたら『貴女は俺の――」


「わっ、わぁぁぁっーー!! ちょっと黙っててください! そうだっ、フィンリーさんが欲しそうな情報を提供しますよ! レイラ コリンズって知ってますか?」


「ええ、三〇〇年くらい前に退治されたこの国最後の純血の吸血鬼よねぇ? あっ、不死の王が居るから正確には違うかしら? 貴方の婚約者だって話もあるけど、本当なの?」


 流石ヴァンパイアハンターだ。レイラが俺の婚約者だって事はあまり知られてないはずなのに、知ってるなんてなんか怖い。


「一応は。そのレイラがハロウィンのイベントで人を襲う計画を立ててると聞きました」


「はぁ!? ちょっと待って、レイラ コリンズは死んでないと言うの? なんて事なの……冗談とかじゃないわよね?」


「冗談じゃないですよ。レイラの元部下の吸血鬼から聞いたんですから。貴女達に聖水を掛けられて殺されかけた日に」


 そうだ、お前さえ来なければもっと情報を聞けたかもしれないのに。


「あら、ごめんなさいね。そんな恨みがましい目で見ないでちょうだい。そう言えばかなり聖水を掛けたはずだけど、どうして不死の王は生きてられたのかしら? 普通ならあれだけ濡らせば、二回くらいは死んでるはずなのに不思議だわぁ〜」


「……そんなの俺が知ってる訳ないじゃないですか」


 本当は心当たりがあるけど、誰がお前になんて教えてやるもんか。ふーんだ。


「あらあら隠し事? 可愛い反応してくれるじゃない~。いいわ、どうして聖水を浴びても平気か教えてくれたら、アオイさんに催眠術が効かない理由を教えてあげる」


 な、なんで吸血鬼の俺が知らない事をヴァンパイアハンターのお前が知ってるんだよ? でも、凄く気になってた事だしな。その条件で乗ってやろうじゃないか。

お読みくださりありがとうございます。

次回、第38話で飛び出す“婚約者”と“磯友達”。どちらも聞き覚えのあるワードですが、それを聞いた蒼の機嫌が悪くなり、主人公はタジタジに。6/5、19:25頃投稿予定です。

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