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ミツルとミチルとミクニとミコロ 〜 Romance Trium Regnorum et nobilis gladius 〜  作者: 硝酸塩硫化水素


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8/10

Ep7 Chapter“1” Scene“2” Cut“1” Take“4” 不協和音は唐突に

「ねぇミチル。次の授業なんだっけ?」

「えっと次は――」


「ねぇミチル。後でランチ一緒にどう?」

「うん、いいよー」


「ねぇミチル」

「ねぇミチル」

「ねぇミチル」

「ねぇミチルねぇミチルねぇミチルねぇミチル(以下無限ループ)」


 ミチルは困っていた。ひたすら困っていた。今日は何かが可怪しい。絶対(ずえったい)に可怪し過ぎる。

 普段なら多少囲まれる事はあっても、今日ほどひっきりなしに誰かが寄って来る事はない。日頃からほとんど話さない男子までもが、()()()()()()()()()()()()くらいの珍事が起きている。

 ミチルがお調子者なら「遂にミチルの魅力が銀河レベルでバレちゃった?」と勘違いするのも()()()()ではないだろうが、ミチルが望むのは()()()()()()()()()()()だ。ミチルは「普通の女子高生」である事に()()を見出している。だから「みんなのアイドル」なんてモノには()()を唱えるしかない。

 因って今日は異常過ぎる。違和感なんて生易しいモンじゃあない――



 ミチルが登校するや否や、いきなりクラスメイトに囲まれ疑問質問珍問難問の雨霰(あめあられ)。人見知りせず誰とでも分け隔てなく話せる性格が、今日ばかりは仇となった。

 流石に授業が始まればクラスメイトの奇行は落ち着きを見せるかと思いきや、今度は教師陣が豹変した。

 次から次へと指名され、苦手な数学では「連続15問解答」という、もはや公開処刑に近い栄誉を賜るハメになった。


 極めつけは四限目。現文の授業だから特に教師に差される事はないとタカを括っていたミチルだったが、それは開始早々に裏切られる事になる。その内容は「音読」。別にミチルは役者志望でも声優志望でもない。至極()()()()()()()音読したワケだが、一向に教師から「そこまで」と声が掛からない。

 結果的に、教科書に載っている『羅生門(らしょうもん)』を全文一人で読み切らされるという、喉への過酷なロードワークを強いられた。


 そして漸く訪れた昼休み。


 授業間の貴重な十分休憩ですら「囲み」にあったミチルのHPは、もはや風前の灯火。魂が口から半分はみ出していた。朝にクラスメイトから誘われたランチの約束など、忘却の彼方へと霧散している。


 「もうやめて!とっくにミチルのライフはゼロよ!」そんな古のネットミームじみた叫び声を高々と挙げて、囲みからミチルを解放する救世主は一向に現れてくれない。因って昼休みは一人になるべく、重たい足取りで屋上へと向かって行ったのだった――



「もうッ!今日はなんなのッ!普段から滅多に話さない男子とか、あまり仲が良くない女子とかまでなんでミチルに絡んで来るの?こんなの普通の高校生活じゃないよ。絶対(ずえったい)に何かあるよ!そっか!きっとこの前のランポーくんでやってた「フラッシュモブ」ってヤツだ!でも、そうなると、ミチルはランポーくんに暴かれる犯人役か、死た……」

 ぶんぶんぶんぶん――


 不意に不吉な思考が過ぎったので、どうやら頭を振って無理やり追い出したようだ。


「あぁ、でも良かったぁ。やっと一人になれた。流石にここまで誰も追い掛けて来なくて本ッとーに良かった。

 さぁおっひるーごはんッ♪おっひるーごはん♪」


 クラスメイトと教師がミチルの為にフラッシュモブになるとは思えないが、ワケの分からないコトや嫌なコトがあった時は、推しアニメの事を考えて吹っ切るのがミチルの処世術である。

 だが、今回は考えた内容が()()()()()()()ようで、第二の処世術である「ごはん」に意識を“全振り”した。


 ミチルが陣取ったのは屋上にある給水塔の更に上。ここから見える景色がミチルは好きだった。最近は休校になる事が増え、屋上が施錠される事も多くなったから滅多には来れないが、今日は()()()()鍵が開いていた。

 だから閉め忘れた用務員のおじさんに感謝しつつ、久しぶりの特等席にミチルのハッピーポイントは急上昇していったのである。



 ――ぎいぃぃぃぃ


 その音にミチルの肩は借りてきた猫のように跳ね上がった。


「あれ?誰かが屋上に来たのかな?先生だったらどうしよ……。見付かって怒られるのはイヤだな。それに誰もいないと思われて鍵を閉められたらミチル、ここに閉じ込められちゃうぅぅぅ」


 屋上に通じる唯一の扉は、建付けが悪くなっているのだろう。開け閉めすると不気味な音域で、心をザワつかせる音階を掻き鳴らす。だがその不協和音があるからこそ、気付ける気配もあるというものだ。

 しかしその不気味な音は、同時にミチルの()()()()()(平原)を不安ではち切れんばかりに満たしていく。

 従ってミチルは、屋上にやって来た者をこっそりと見る事にした。もしも鍵を閉められそうなら急いで降りて怒られる事も辞さない考えだった。


 しかし、覚悟を決めたミチルの瞳に飛び込んで来たのは想定外の人物だったのである。



「――ッ!? まさか、あの女性(ひと)。ウチの学校の生徒だったの?」


 チラ見した瞳に入って来た映像……それは一昨日の夜に見たパントマイム女性だった――



 ―― Return to Previous Cut ――

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