Ep5 Chapter“1” Scene“2” Cut“1” Take“1” 不満は唐突に
――それは、ある山中での出来事だった——
――ワンダーフォーゲル部の女子大学生六名が下山中に吹雪に見舞われ、遭難した事から起きた悲劇だ——
――一行は遭難先で小さめの洞窟を見付け、そこで全員が寄り添うようにビバークする事にしたのだった——
――しかし吹雪が止むまでビバークした六名の中で、一人だけが目覚めなかったのである——
「なんでよッ!なんでミソラが死ななくちゃならなかったのよッ!ねぇ、起きてよミソラッ。ミソラァッ!」
「マコト落ち着いてよッ!私達遭難してるんだから、このままじゃ皆死んじゃうんだよ!この寒さだもん、仕方ないよ」
「そうだね、部長が死んだ事は悲しいけど、ウチらは遭難してる身……。部長には悪いけど遺体はこのまま置いて行くしか……」
「それにしても、ぶちょーってこんなにおっぱいが大きかったかにゃ?普段なら触ろうとしたら怒られるけど、今なら確かめ放題だからちょっとだけ……」
「ちょ、待ちなさいッ!」
それは一人の部員が不謹慎な事を考えた結果だった。そして勢いに任せて部長が眠っているシュラフのジッパーを下げていく。しかし、その光景を見た五人からは悲鳴が漏れていった。
「キャアッ!な……何よ……コレ?ま……まさかミソラは、この中の誰かに殺されたってコト?だ……誰よ?一体誰がこんなコトをしたのよッ!」
部長である間宮ミソラの胸には刃渡りの短いナイフが刺さっていた。恐らくそれが致命傷となったのだろう。要するに犯人はシュラフの外からではなく、ワザと分からないように短めのナイフを刺し、致命傷を負わせた上でシュラフのジッパーを閉じたと言う事になる。
これが衝動的犯行なのか、それとも計画的犯行だったのかは疑問が残るが、それを細かく考察している精神的余裕は今の五人には無い。
殺害動機は余人が知る由も無い。犯人は計画的であれ衝動的であれ、死んでいるのが判明すれば遭難している現状でわざわざミソラの遺体を誰も調べる事はないハズだ。更にその凍死体をこの場に置き去りにして、二度とこの山に登らなければいい。と考えたのかもしれない。
だからこそ犯人唯一の誤算は、極限状態にも拘わらず不純な動機でシュラフを開けられてしまった事にある。
それさえなければ、完全犯罪が成立していたハズなのだから――
しかしながら吹雪が止んだ今しか、下山するチャンスは無い。かと言って、このメンバーの中に殺人犯がいるかも知れないと言う状況……下山するにしても殺人犯が隣にいて、次に殺されるのは自分かも知れないと言う極限の精神状態。
そんな中で生存者五人は、疑心暗鬼に囚われながらも生きる為に下山する事を選ぶしかなかったのである――
斯くして雪山には殺された間宮ミソラの遺体は、誰かに見付かる事も、況してや供養される事もなく、ひっそりと眠る事になった——
名探偵ドイル・ランポー オトカマーニンナー殺人事件 〜後編に続く〜
『みなさんこんばんは、NEWS18のお時間です。本日は先ず、こちらの映像からご覧下さい。最近話題の謎の戦隊ヒーローについて新たな目撃情報g――』
――ピッ
「あぁ良かったー。危うく見逃すところだった!それにしてもアラームも掛けずに爆睡しちゃったけど、放送の直前に起きれるなんて、我ながら天才じゃない?やっぱりミチルはやれば出来る子!むっふーッ」
うたた寝からの爆睡。この流れがミチルには昔からよくある話しだった。しかし大事な用や楽しみな事があると、必ずその直前には勝手に目が覚める画期的なシステムが、これまた昔から備わっていた。
これをミチルは“自動目覚まし機能”と呼ぶようにしているが、それを誰にも話した事はない。
決して、遠足当日の朝にテンションが上がって早起きしてしまう小学生のそれと同じだとは、彼女は微塵も思っていない。
何故ならミチルは華の女子高生であって、小学生などではないのだから。
従って今日も、その“機能”がオートモードで正常作動した結果、推しアニメを見逃す事なくご満悦な様子だったかに見えた――
「でもミチルは不満ッ!! なんで“名探偵ドイル・ランポー”なのに、ランポーくんが序盤にちょっとだけしか出て来ないの?これじゃ“名探偵ドイル・ランポー”じゃなくって『女子大生殺人事件簿』だよッ!
おまけに後編を見逃したら、オトカマーニンナーの謎を抱えたまま一生を過ごすことになるじゃん!」
これまたいつもの光景。ミチルは必ずと言っていいほど、見終わった後は推しアニメの事を振り返る。彼女はテレビの中で華麗に動き回るランポーくんが見れさえすればハッピーパラダイスになれるのだ。
だからこそ、ランポーくんの登場シーンが少なければ少ないほど、ハッピー度合いは低くなる。
よって今回はその度合いが低いので、かなりプリプリして頬を膨らませているようだ。
だが、その度合いが高かろうと低かろうと次に続くセリフは毎回決まっていた――
―― To the Next Take ――




