Ep4 Chapter“1” Scene“1” Cut“4” Take“1” 休校は唐突に
――事の発端は1999年1月に起こった「イジュウランスインの光」を起源とする。事の本質は本来人間が持ってはいけない力に目覚めた事にある。
更にその力を求めようと求めなかろうと、持ってしまった以上「特別」高等学校への入学を強要される――
――それは国からの監視対象になるという事だ――
ミチルはそれが嫌だった。だからある日突然、自分の「目」に起こった違和感を誰にも相談する事無く隠した。それまで仲の良かった友達を、これまで培って来た生活を奪われたくなかった。
それだけが理由だった――
ミチルは現代日本に於いて、社会問題になっているその「力」の事をテレビ報道でよく見ている。だからこそ、自分が当事者になりたくはなかったし、なってしまわぬように立ち回った。
それは「目」に違和感を持ったその日から、極力その「目」が持つ力を、見て見ぬフリをして過ごして来たという事だ。
その結果、友達と別れる事にはなったが「全てを奪われるよりはマシ」と考えた結果、故郷を無理してでも離れる事を選んだ。
まぁ親と離れる事には大賛成だったので、上京した当初はこれまた無い胸を期待に膨らませていた。
そして念願の高校デビューも果たし、順風満帆な「普通の女子高生」を満喫していたのだ。
だからこそ今でも、いたって普通の女子高生であるように振る舞っている。
※見た目年齢は除く
だが昨日の一件は、今後の不安を増長させる要因となり、集中出来ずにいたのだった――
「お仕事行くの今日は憂鬱だなぁ……またあの女性に遭ったらどうしよ……」
斯くしてベッドの上で寝転がりながら、気付けばうたた寝……どころか爆睡をしていたのである――
―― Return to Previous Cut ――
〜Serva constituere "pluma alba ventilabrum"〜
「字は孔明。舞えよ羽扇!誇れよ明智・上屋抽梯」
「お呼びですか?志、貴女の敵はどこです?」
ここは志の部屋。志は益徳と別れてからは、誰にも会わないように背中を曲げながらそそくさと家路を急いだ。
そして部屋に駆け込むなり孔明を呼び出すに至る。
「あ……いや……あのですね。孔明先生に策を頂きたくて、お呼びしました……です」
「なるほど……だから上屋抽梯と?ですが、貴女がその“計”を選んだのであれば、私の“策”などいらないのではないでしょうか?もう既に志の中で方策は決まっているのでしょうから」
「い……いえ、先生!ミコロは先生のお知恵も拝借したく……是非ともお願いします……ですッ!」
先程までの益徳の時とは話し方も立ち方も一人称すらも違う志がここにいる。よって、清楚な出で立ちの美少女と言うよりは、今はまるで飼い主に甘える猫のようと言えるだろう。
「まったく……志の甘えグセには困ったものですね。仕方ありません、それでは私謹製の“錦袋”でも授けましょうか?」
「孔明先生……ミコロをバカにしてます?どうやって“錦袋”をミコロに渡すって言うんです?渡せもしない“錦袋”で話しをはぐらかすのはやめて下さい!……です」
くれぐれも注意すべき点、それは志の独り言と言う事にある。傍から見れば、声色まで変えた独り言を話しているこの美少女は、類稀な変質者に見えるだろう。
要するに先程の“益徳”しかり、今回の“孔明”しかり、何も知らない第三者から見れば「そんなモノは存在していない」と言わざるを得ない――
「大丈夫ですよ、志。貴女は見どころがある策士です。貴女になら街亭を任せても私は平気だと思っています」
――ぽう
「孔明先生……いえ、それじゃミコロはダマされませんッ……ですよ?」
孔明の言葉に顔を赤らめた志だったが、その一瞬後にはハッとした表情で直ぐに反論していた。
やはり猫のようにコロコロと感情が揺れ動いている。
――フっ
「あーーーッ!先生、今ッ!笑いましたね?笑いましたよね?」
「では、志、敵がいないなら私は失礼致します。くれぐれも“失街亭”なされませぬよう」
「えっ?!」
志は自分の内心を見透かされたような気がして、“孔明”に対してむくれてみせた訳だが、一方的に志の独り言劇場は幕を降ろした。
最後まではぐらかされたと思っていた志だったが、“孔明”が消える間際に言った“失街亭”こそが、“錦袋”だったのではないかと考えると、その足取りは軽やかになり部屋から階下へと降りていった――
「明日学校で会えるのを楽しみにしてますねミチル先輩」
翌日、学校が休校になる事を知った志の気持ちは、現状に於いて察するのは無理だろう――
時は西暦2026年7月9日に遡る。それは「イジュウランスインの光」から27年と半年余りが過ぎた頃に起きた。
日本は超大国に巻き込まれる形で戦争に強制参加させられ、この国の情勢は悪化の一途を辿っていた。
故に教育機関は戦争次第で臨時休校など当たり前だった。
そんな時代背景がある事をここに明記しておく――
―― To the Next Scene ――




