表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/36

第34話:事後処理(ポストモーテム)と、隠された「バックドア」

「金猫商会」の倉庫内。先ほどまでのスパム広告の嵐が嘘のように、今は静寂と焦げ臭い匂いだけが漂っている。

俺は鉛のシートに包まったまま、床に大の字になっていた。


「レイジ殿、死ぬな! まだHPは……0.12残っているな!」

セリスが慌てて俺の口に、最低ランクの「薄いポーション」を流し込む。

喉を焼くような安物の味がして、俺の意識が少しだけ鮮明になった。


「……ふぅ。セリス、ポーションの味まで『低速回線』並みに渋いな……」


俺はよろよろと起き上がり、腰を抜かしたままの商会主人、ガメイルを見下ろした。

彼の前には、先ほど俺が(這いずりながら)書き殴った「事故報告書兼、損害賠償請求書」が置かれている。


---


インシデント報告:金猫商会スパム暴走


【原因】


終了条件(Break)のない再帰関数の実行。

物理層(水晶球)への過負荷による熱暴走。

【被害】

近隣住民への視覚的・物理的ノイズ汚染。

勇者(重装歩兵)の盾の耐久値減少。

筆者の精神的苦痛および生命維持コスト。


---


「こ、こんな額……払えるわけがない! 商会が潰れてしまう!」

ガメイルが震える指で請求書を指差す。


「払えないなら、現物支給で構わない。あんた、この暴走した『自動反復ループ』の術式、どこで手に入れた?」


俺の問いに、ガメイルの顔が引きつった。

「それは……北の遺跡で見つかった古文書から書き写したもので……。安上がりで効果絶大だと聞いたんです」


「安上がりなシステムには、必ず『裏』があるんだよ」

俺は鉛のシートを剥ぎ取った水晶球を指差した。

その台座の裏側、普通なら見逃すような微細な魔力刻印――。


「セリス、ここを剣の先で軽く突いてみてくれ」


セリスが言われた通りに突くと、カチリと音がして隠しスロットが開いた。

中から出てきたのは、禍々しい赤色の「小さな魔石」。


「これは……! 呪いの魔石か?」

セリスが眉をひそめる。


「いや、もっと性質タチが悪い。『バックドア』だ。この水晶が暴走して魔力を垂れ流せば流すほど、そのエネルギーがこの石を通じて『どこか』に転送される仕組みになっていたんだ」


つまり、ガメイルは宣伝をしていたつもりで、実は巨大な「魔力のボットネット」の一部として利用されていたわけだ。


「……誰かが、意図的にこの暴走を仕組んだということか?」

セリスの表情が騎士のそれに変わる。


「ああ。金猫商会は踏みプロキシにされただけだ。ガメイル、あんたにこの術式を教えた『遺跡調査員』とやらの特徴は?」


「え、ええと……灰色のローブを着た、顔の見えない男でした……。そうだ、彼は『世界のラグを解消する』とか何とか、奇妙なことを言っていました!」


「世界のラグ……?」

俺は嫌な予感がした。

この世界のシステムそのものを「最適化デフラグ」しようとしている奴がいる。それも、既存のデータを消去してでも。


「レイジ殿、これはただの商売トラブルでは済まないかもしれんな」


「ああ、大規模なサイバーテロの予兆だ。……だが、その前に」

俺はガメイルに手を差し出した。


「まずは、あんたの商会にある『未鑑定の魔導具』を全部見せてもらおうか。それが、今回の俺の作業費(デバッグ代)だ」


ガメイルは泣きながら、倉庫の奥にある秘密のコレクションルームの鍵を開けた。

今の俺のHPは低いが、お宝を見つけた時の「好奇心」だけは最大値カンストしている。


---


【現在のパーティ状況】


*レイジ:HP 0.5(回復中) / 状態:強欲モード

*セリス:HP 100% / 状態:正義感の空回り

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ