俺の目覚めと、10年後の世界
この物語を書かせていただきました。グレイです。楽しんで読んでもらえると幸いです。
……なつかしいの音が、聞こえた。
どれほどの時が経っただろうか。
わからない。
「……ここは……」
声は掠れていた。
目の前に広がるのは、初めて見る光景だった。
封印の術式はすでに消え、魔力の気配もない。
立ち上がり、埃を払う。
空は青く光輝いている。
かつて世界を救い、そして封じられた最強の剣士。
時代は変わった。
けれど、リオス・ヴェインという男の強さだけは――変わらない。
彼は静かに剣の柄に触れ、ひとり呟く。
自分の手を見てみると、今までと同じようだった。
「夢、じゃないのか。」
また、旅が始まると思うとなんとも言えない気分になる。
だが、目覚めてしまった以上どうしようもない。
リオスはゆっくりと地面に足をつけた。
筋肉や感覚は封印前のまま。
つまり――力は失われていない。
遠くから聞こえる叫び声。
街の灯が明滅し、魔物が人々を襲っている。
――異変はすぐそこまで迫っていた。
剣を握る手に力が戻る。
魔力も自然に流れ込む。
「七柱の加護者」と呼ばれた男の力は、封印などもはや無意味だった。
リオスは短く息をつき、街の方へ歩き出す。
人々はまだ、誰も彼の名を知らない。
しかし、目の前の現実が、彼に無言で問いかけていた。
「――守るのか、滅ぼすのか。」
それだけを考え、リオスは静かに前へ進む。
風に揺れる街路樹がざわめき、魔法の光が夜空を裂く。
「変わってねぇな」
見慣れた景色ではないが、そう感じた。
果たして何年経ったのだろうか。
だが、わからない。
彼は静かに歩を進める。
魔力を感じ、敵を感知する。
目の前の魔物――大きな狼のような姿。牙には黒い魔力が絡みついている。
「……」
街の中心に近づくと、そこには異様な光景が広がっていた。
魔物――獣のような姿の化け物たちが、民を襲い、炎と魔力が飛び交う。
人々は逃げ惑い、魔法を放つが効かない。
――リオスにとって、それは小さな“雑音”に過ぎなかった。
リオスは剣を引き抜く。
その刃先に魔力を流し込むと、闇神ノワールの加護が微かに光る。
魔物が牙を剥き、襲いかかる。
その瞬間――斬撃。
無音に近い動きで、リオスの剣が魔物の胸を裂く。
魔力を吸収し、再利用。
魔物は叫ぶ暇もなく消滅した。
周囲の魔物がこちらを見て唸る。
だが、リオスは動かない。
ただ立ち、次の攻撃を待つ。
「……来い」
魔物が飛びかかる――同時に、地面が裂け、異様な魔力の波が広がる。
リオスは一歩も動かず、剣を一閃。
波動は魔物たちを貫き、街に静寂が戻る。
民衆は恐怖と驚きで言葉を失い、呆然と立ち尽くしていた。
誰も、彼の姿に気付かない。
ただ一人、戦場の中心で静かに立つ男。
――リオス・ヴェイン。
かつて最強だった男は、封印から目覚めても最強のままだった。
楽しんでいただけだでしょうか。楽しんでいただけると幸いです。




