第95話:ゼルヴォード、未知の鉱石を解析する
フィルミナとカリーナは、大量の荷物を抱えながら帰宅した。
「ただいま戻りましたー!」
ゼルヴォードは鍛冶場で作業をしていたが、二人の元気な声に振り向く。
「……おう。で、そんなに買い込んでどうするんだ?」
「ゼルさん、今回はちゃんと鍋とか歪めないでくださいね!!!」
「……おい、まだ引きずってんのかよ」
「当たり前です!!!」
ゼルヴォードは苦笑しながら、荷物の山を見ていると、カリーナが小さな包みを差し出した。
「それより、ゼルヴォードさん。ちょっと見てもらいたいものがあるんです」
「ん?」
包みを開くと、中には奇妙な光沢を放つ鉱石が収められていた。
ゼルヴォードはそれを手に取り、じっと見つめる。
「……こいつは、どこで手に入れた?」
2. 鉱石に隠された違和感
フィルミナが説明する。
「市場の外れにあった怪しい露店で買いました。おじいさんが『ある鍛冶師が使っていた鉱石らしい』って言ってましたけど……詳細は不明です」
カリーナも補足する。
「普通の鉱石とは違う魔力の流れを感じるんです。でも、それが何なのかまではわかりません」
ゼルヴォードは鉱石を指先で弾く。
コン……!
普通の鉱石なら硬質な響きがするはずなのに、この鉱石はまるで"何かを包んでいる"ような鈍い音が返ってきた。
(……なるほど、"ただの鉱石"じゃねぇな)
「精融を使えば、何かわかるかもしれねぇな」
彼は深く息を吸い込み、手のひらを鉱石にかざした。
ゼルヴォードが"精融"を発動すると、鉱石が淡く輝き始める。
魔力が流れ込み、内部の構造が徐々に解き明かされていく。
「──なるほどな」
ゼルヴォードは微かに目を細めた。
「これ、ただの鉱石じゃねぇ。"封印"が施されてる」
フィルミナとカリーナが顔を見合わせる。
「封印……?」
ゼルヴォードは鉱石を持ち直し、指で軽く叩く。
「この中には何かが眠ってる。"素材"としての価値も高いが……元々は"何かを封じるための器"だったようだ」
カリーナが驚いたように息をのむ。
「じゃあ、もし封印を解いたら……?」
ゼルヴォードは少し考え込み、ニヤリと笑った。
「それは、"やってみりゃわかる"ってやつだな」
フィルミナがすかさずツッコミを入れる。
「ゼルさん!! 下手に封印を解いて変なものが出てきたらどうするんですか!!?」
「まぁ、その時は"叩き潰す"だけだろ」
「簡単に言わないでください!!!」
ゼルヴォードは少し考え、二人に向き直る。
「どうする? これを"研究対象"にするか、それとも"封印を解いて確かめる"か」
カリーナは興味津々といった表情で頷く。
「できることなら、慎重に研究したいですが……ゼルヴォードさんなら解けるんですよね?」
「まぁな。封印の仕組みはもうほぼ把握した」
フィルミナは困ったように腕を組む。
「……解くのはいいですけど、ちゃんと安全策を考えてからにしてくださいね?」
「おう、任せとけ」
ゼルヴォードは不敵な笑みを浮かべながら、鉱石を軽く掲げる。
「さて、こいつに何が眠ってるのか……楽しみにしておくか」




