第91話:工房の扉の先─ついに見えた黒幕
ゼルヴォードは鉄鍋を片手に、倒れた監視者を見下ろした。
(……さて、そろそろ"本命"といくか)
彼は工房の奥へと歩みを進め、魔力封じの符が貼られた鉄扉の前に立った。
バチバチ……ッ
扉の周囲には微弱な魔力が残っている。
封印がまだ完全に生きている証拠だ。
「……ま、問題ねぇな」
ゼルヴォードは軽く肩を回し、"精融"を発動。
魔力封じの符を指でなぞると、微かに光が弾ける。
「──開け」
バチンッ!!
封印が破れ、扉がゆっくりと軋みながら開かれる。
扉の奥に広がっていたのは──
・広大な地下鍛冶場──ここで"規格鋼の改変"が行われている?
・工房の職人とは違う、"黒装束の者たち"が作業をしている
・中央には"異質な炉"──規格鋼とは違う金属が精錬されている!?
ゼルヴォードはじっと炉の中を見つめた。
(……こいつは、規格鋼じゃねぇ)
"何か別の金属"をベースに、規格鋼に似せたものを作っている。
──つまり、王都の武器供給が"本物"ではなく、意図的に劣化品にすり替えられていた可能性が高い。
(……さて、ここからどう暴いてやるか)
その時、背後からゆっくりと足音が響いた。
「……面白いところに入り込んでくれたな?」
低く、響く声。
ゼルヴォードが振り向くと、そこに立っていたのは──
・黒と銀のローブを纏い、顔の一部を覆った男
・鍛冶師というより、"魔術師"の気配をまとっている
・腰には"規格鋼とは異なる剣"を提げている
「……なるほどな」
ゼルヴォードはニヤリと笑った。
「お前が、この工房を仕切ってるってワケか?」
男は静かに剣の柄へと手をかけた。
「さて……それを知るには、お前が生きていられるかどうか次第だな?」
──ギィンッ!!
男が抜刀した瞬間、ゼルヴォードも即座に構えを取る。
(……ま、鉄鍋のままでいいか)




