第77話:鍛冶と錬金術の交差点─未知の可能性
カリーナはゼルヴォードが取り出した鉱石をじっと見つめ、目を見開いた。
「……ちょっと待ってください。これ……《翠炎晶》と《雷霆の砂鉄》ですよね?」
彼女は鉱石を慎重に手に取り、光にかざす。
「どこでこんな貴重なものを……?」
ゼルヴォードは肩をすくめる。
「ちょっと昔にな」
それ以上は語らない。
カリーナは疑問を抱きつつも、それ以上は追及せずに素材を慎重に観察した。
カリーナはゼルヴォードたちを実験室へ案内しながら説明を始めた。
「錬金術ギルドでは、魔法や魔力だけでなく、すべての素材を研究対象にしています。ポーションのような薬の開発だけでなく、魔法具や装備、そして"新たな技術"の開発にも力を入れています」
ゼルヴォードは腕を組みながら聞いていたが、途中でフィルミナが手を挙げた。
「あの、それって、新薬の開発みたいな感じですか?」
カリーナは笑顔で頷いた。
「ええ、まさにそうです。錬金術とは"魔力を科学的に解明し、最適な形で活用する技術"とも言えます」
ゼルヴォードは興味深げに頷く。
「つまり、お前らは"魔力の性質そのものを操作する技術"を追求してるってことか」
カリーナは少し考え込むように頷いた。
「そうですね……ただ、それは"ある問題"にも繋がるんです」
カリーナはゼルヴォードが持ってきた《翠炎晶》と《雷霆の砂鉄》を実験台の上に並べた。
「この素材……もしかすると、"ある技術"に応用できるかもしれません」
ゼルヴォードは眉を上げる。
「どんな技術だ?」
カリーナは慎重に言葉を選びながら続けた。
「今、錬金術ギルドでは"魔力変換効率を向上させる技術"を研究しているんです。たとえば、通常の魔導具よりも"少ない魔力で大きな効果を生み出す"装置を作れれば、多くの人にとって魔法がもっと身近になります」
ゼルヴォードは腕を組んで考える。
「……つまり、"魔力の効率化"ってことか」
カリーナは頷く。
「そうです。ですが、現在の魔導具にはどうしても"魔力のロス"が発生してしまいます。この《翠炎晶》と《雷霆の砂鉄》を使えば、そのロスを最小限に抑えられるかもしれません」
ゼルヴォードは少し考えた後、ニヤリと笑った。
「なるほどな。要するに、"お前らがやろうとしてる研究"に、俺の持ってる素材が役立つかもしれねぇってことだな」
カリーナは真剣な表情で頷く。
「ええ。ただし、この素材の扱いには慎重にならなければいけません。あまりにも強すぎる力を持つ素材は、制御が難しいことも多いんです」
ゼルヴォードはその言葉を聞いて、ふと"過去に扱った強力な武器素材"のことを思い出した。
(……確かにな。強い力を持つってのは、それだけ"リスク"もでかい)
カリーナはゼルヴォードに向き直り、真剣な目を向けた。
「もしよろしければ、この素材を少しだけ使わせてもらえませんか?試しに、魔導具の試作に組み込んでみたいんです」
ゼルヴォードは考える。
(この素材はそう簡単に手に入るもんじゃねぇが……興味はある)
フィルミナが少し心配そうにゼルヴォードを見た。
「ゼルさん……この素材、大丈夫ですか?」
ゼルヴォードはニヤリと笑い、カリーナを見る。
「……まぁ、ちょっとくらいならいいぜ。ただし、"まともな使い道"を見つけるのが条件だ」
カリーナは嬉しそうに頷いた。
「ありがとうございます!では、早速試してみましょう!」
こうして、鍛冶と錬金術の融合を目指す"実験"が始まるのだった──。




