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第7話:鍛冶師の腕試し

ギルドマスターグレイヴ・ドランハンの視線が鋭く光る。

鍛冶ギルド・ルナエスト支部を束ねるこの男は、王都で"最高の職人"と称されている。


「"職人としての腕"を見せてもらうことになるがな?」


ゼルヴォードは口角を少し上げた。


「へぇ……鍛冶屋の腕試しか」


グレイヴは頷き、背後の職人たちに合図を送る。

すると、一人の鍛冶師がボロボロの剣を持ってきた。


「……こいつを直せるか?」


ゼルヴォードは剣を手に取る。

刃は鈍く錆び付き、ヒビが入り、完全に"寿命"を迎えていた。

どれだけ研いでも、このままでは実戦には耐えられない。


(……この状態なら、普通は"新しく作り直す"のが正解だ)


だが、グレイヴは"修理"を求めている。

つまり、これはただの技術試験ではない。


(……"この鍛冶ギルドの現状"を、実際に体験させるつもりか)


ゼルヴォードは微かに笑い、剣を持ったまま、ちらりと周囲を見回した。

使えそうな素材や、放置されている武器がないかを探る。


すると、鍛冶場の片隅に、錆びついた鉄板の束が無造作に積まれているのが目に入った。

さらに、壁際には刃こぼれしたまま放置された剣も何本か立てかけられている。


ゼルヴォードは鉄板の束に手を伸ばし、

そのうちの一枚を剥がして、グレイヴに向けた。


「これ、使っていいか?」


職人たちが一斉に眉をひそめた。


「……おい、冗談だろ?」

「あんな鉄くず、使い物にならねぇぞ」

「適当に誤魔化して直したフリをする気か?」


ギルドの職人たちがざわめくなか、グレイヴは無言のままゼルヴォードを見つめる。

ゼルヴォードは彼の目を見て、"好きにしろ"という意思を感じ取った。


「ふーん、じゃあこれでやってみるか」


ゼルヴォードは鉄板と放置されていた剣の一本を手に取り、鍛冶場へと向かった。


◆ 鍛冶場での作業──職人たちの視線


ゼルヴォードは炉の温度を確認しながら、使い物にならない剣の刃をゆっくりと眺めた。


(この刃、素材自体は悪くねぇ……ただ、手入れをしてないだけか)


通常の鍛冶師なら、この剣を直すのではなく、新しい剣を作る道を選ぶだろう。

だが、ゼルヴォードには別の手があった。


彼は鉄板を手に取り、炉にくべる。

しばらくして金属が赤熱し始めた頃、彼は静かに剣を構えた。


「──精融せいゆう


金属の表面が僅かに震え、微かな輝きを帯びる。


(やっぱりな……"鍛え直せばまだ使える")


ゼルヴォードは加熱した鉄板を、ボロボロの剣の刃に押し当て、槌を振るった。


カンッ……カンッ……カンッ……!


鋼と鋼が融合し、新たな層を形成していく。

ゼルヴォードは僅かなバランスの違いを感じ取りながら、最適な角度で槌を振り続けた。


職人たちは最初、冷ややかに見ていたが、次第に表情が変わっていく。


「……待て、何だ、あの槌の打ち方は?」

「普通なら鉄板と刃の間に亀裂が入るはずなのに……」

「いや、むしろ……一体化していってる……?」


ゼルヴォードは表情を変えず、最後の仕上げに取り掛かった。

刃の強度を整え、研磨し、最適な形へと調整する。


──そして、ついに一本の剣が完成した。


再鍛成の剣(さいたんせいのけん)

名称:再鍛成の剣(さいたんせいのけん)

ランク:C-(一般的な武器よりやや優秀だが、特殊効果なし)

効果:

・通常のロングソードより耐久性が向上

・切れ味が研ぎ澄まされ、軽い力でも斬撃の威力が増す

特性:

・"廃材と古い剣の刃"を再利用して鍛造されたため、素材のバラつきがある

・完全な新作ではなく、"修理・補強"をメインとした構造

・鋼の層を重ねることで耐久度が増したが、衝撃を受け続けると刃の内部から劣化が進行


グレイヴは剣をじっと見つめた後、フッと笑った。


「……なるほどな」


彼はゼルヴォードを見据え、ゆっくりと口を開く。


「やっぱり、あんた普通の鍛冶屋じゃねぇな」

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