第76話:次の休み、錬金術ギルドへ!
「ゼルさん、次の休みはどうしますか?」
食事を終えた後、フィルミナが尋ねる。
ゼルヴォードは腕を組み、軽く考え込んだ。
「……そうだな。ちょっと錬金術ギルドに顔を出してみようかと思ってる」
フィルミナの目が輝く。
「錬金術ギルド!? 行ってみたいです!」
「まぁ、お前も興味あるならついて来いよ」
こうして、次の休みに二人で錬金術ギルドへ行くことが決まった。
休日の朝、ゼルヴォードとフィルミナは鍛冶屋を出て、錬金術ギルドへと向かった。
錬金術ギルドの建物は、他のギルドとは異なり"研究施設"のような雰囲気を持っていた。
「わぁ……!」
フィルミナは目を輝かせながら、巨大なガラス窓や独特な装飾が施された建物を見上げる。
中に入ると、白衣を着た研究員や魔法陣の前で実験をしている錬金術師たちの姿が見える。
「……鍛冶屋の雰囲気とはまるで違うな」
ゼルヴォードが呟くと、受付の女性がこちらに気づいた。
「いらっしゃいませ。錬金術ギルドへようこそ。今日はどのようなご用件でしょうか?」
ゼルヴォードは簡単に説明する。
「食材に含まれる魔力の活用について、ちょっと知りたいことがある」
受付の女性は少し驚いたように目を丸くしたが、すぐに微笑んだ。
「なるほど……それなら、研究員のカリーナ先生をご紹介しますね」
こうして、二人は錬金術ギルドの研究員・カリーナと会うことになった。
案内された部屋に入ると、そこには白衣を着た女性の錬金術師がいた。
「はじめまして。私はカリーナ・ヴェルデン。錬金術ギルドで植物や鉱物の魔力活用を研究しています」
カリーナは書類を片手にしながら、ゼルヴォードたちを見つめる。
「それで、食材の魔力活用について知りたいという話でしたね?」
ゼルヴォードは買ったスパイスの瓶を取り出し、カリーナに見せた。
「この《赤陽のペッパー》ってスパイスだ。料理に使えるが、魔力回復効果もあるらしい」
カリーナはさらっと頷いた。
「ええ、それは普通に市場でも売られていますね。鍛冶師の方がスパイスに興味を持つとは珍しいですが……」
ゼルヴォードはニヤリと笑う。
「まぁな。だが、こっちの素材ならどうだ?」
──ゴトッ。
彼がマジックポーチから取り出したのは、鍛冶師しか扱わないような特殊鉱石や魔力結晶だった。
カリーナは目を細め、ゼルヴォードの手元をじっくりと観察する。
「……それは?」
「翠炎晶と雷霆の砂鉄だ」
カリーナの表情が変わる。
「……それは、まず一般的な市場では出回らないものですね」
フィルミナも興味津々に鉱石を見つめる。
「すごく綺麗……!」
ゼルヴォードは説明を続ける。
「こいつらは鍛冶の素材として使えるが、実は熱伝導や魔力の循環に特化してる。つまり、鍛冶だけじゃなく、錬金術にも応用できるんじゃねぇかって思ったんだ」
カリーナは腕を組み、しばらく考え込む。
「確かに……《翠炎晶》は炎の魔力を蓄える特性があるし、《雷霆の砂鉄》は微弱な雷属性の魔力を帯びている。理論上、錬金術の魔力増幅装置に転用できるかもしれません」
ゼルヴォードは満足げに頷く。
「つまり、俺が鍛冶で加工すれば、お前らの錬金術の実験にも役立つってことだ」
カリーナは興味深そうにゼルヴォードを見つめた。
「面白いですね。では、試しに一つ実験してみましょうか?」




