第74話:フィルミナ、料理に挑戦!?
ゼルヴォードが鍛冶屋に戻ると、フィルミナはちょうど学園から帰宅したところだった。
「ゼルさん、おかえりなさい!」
「おう。今日は市場でいろいろ買ってきたぞ」
そう言って、ゼルヴォードは香辛料と食材をフィルミナに手渡した。
「これ、何のスパイスですか?」
「《赤陽のペッパー》ってやつだ。料理に使えるが、魔力を回復させる効果もあるらしい」
フィルミナは目を輝かせた。
「すごい!じゃあ、今日の晩ごはんはこれを使った料理にしましょう!」
フィルミナは料理が得意だが、新しい食材を使うのは初めてだ。
「今日は、スパイスを効かせたローストチキンを作ります!」
彼女は張り切って準備を始めた。
ゼルヴォードは鍛冶の作業をしながら、キッチンの様子を横目で見守る。
「……おっと」
フィルミナはスパイスの量を間違えそうになり、一瞬戸惑う。
「ちょっと辛めにするか、控えめにするか……」
選択肢を前に、フィルミナは少し悩む。
ゼルヴォードはニヤリと笑った。
「せっかくだ、いつもと違う味を試してみろ」
「……よし!じゃあ、ちょっとスパイス多めでいきます!」
しばらくして、香ばしい匂いが部屋に広がる。
「できました!」
フィルミナは、スパイスの効いたローストチキンを皿に盛る。
「ゼルさん、どうぞ!」
ゼルヴォードは一口食べた。
ピリッ……!!
一瞬、口の中に刺激的な辛さが広がる。
(……なかなか強烈だな)
だが、辛さの後にジワジワと旨味が広がる。
「ほぉ……思ったより悪くねぇな」
フィルミナはホッと胸をなで下ろした。
「よかった……!ちょっと辛すぎるかなって思ったんですけど、大丈夫ですか?」
ゼルヴォードはもう一口食べながら答える。
「まぁ、辛いのが苦手な奴にはキツイかもしれねぇが……このスパイス、たしかに魔力が少し回復してる感じがするな」
フィルミナは驚いた。
「え、本当に?」
「おう。鍛冶をやるとき、持久力を削られることがあるが……食ってると、じわじわと力が戻る感じがする」
フィルミナはしばらく考え込んだ後、ふと呟いた。
「……もしかして、これって料理だけじゃなくて、ポーションみたいな効果を持たせることもできるんじゃ?」
ゼルヴォードはフィルミナの言葉を聞いて、ふとある可能性に気づく。
(……たしかに、スパイスや食材の効果を"錬金術"で増幅すれば、新しいタイプの回復アイテムが作れるかもしれねぇな)
食事を終えたゼルヴォードは、ふと考えた。
(錬金術ギルドの依頼と、このスパイスの応用……もしかすると、何か関係があるかもしれねぇな)
ゼルヴォードの頭の中で、鍛冶・錬金術・料理の技術が交わる可能性が生まれつつあった。
「……なぁ、フィルミナ」
「はい?」
「今度、錬金術ギルドに顔を出してみるかもしれねぇ」
フィルミナは目を輝かせた。
「錬金術ギルドですか!?面白そうですね!」
ゼルヴォードはニヤリと笑った。
「まぁな。ちょっと、試してみたいことがある」
そして、新たな物語の幕が上がる──。




