第72話:"風神の弓《テンペスト・ゲイル》完成!──隠された真価"
名称:風神の弓
ランク:A+
効果:
・風属性を付与し、矢が着弾した地点から"横方向に発生する竜巻"を起こす。
・使用者の魔力を込めることで、竜巻の威力や範囲を調整可能。
・弦の強度を高め、長時間の使用でも疲労を抑える仕様。
・コンパウンドボウ構造により、安定性と引きやすさを向上。
特性:
・風樹の枝(B-)、蒼鱗鉱(B)、疾風の獣革(B+)の3種の風属性素材を使用。
・魔法刻印により魔力伝導率を最適化、矢への風の付与をスムーズにする。
・特殊な魔力共鳴機構を内蔵し、隠された効果を持つ(※詳細は後述)。
◆仕上げの刻印──最終調整
5日目の夜。
ゼルヴォードは、静かに弓の表面へ"最後の仕上げ"を施していた。
「……よし、これで完成だ」
ライラが目を輝かせながら、弓を手に取る。
「これが……私の新しい弓……!」
ゼルヴォードはニヤリと笑う。
「……さて、あとは"実戦テスト"だな」
ゼルヴォード、ライラ、フィルミナの三人は、郊外の試射場へ向かった。
「じゃあ、まずは普通に撃ってみるわね!」
ライラは新しい弓を手に取り、矢を番えた。
スッ──
彼女が息を整え、軽く弦を引く。
シュン──!!
放たれた矢は一直線に飛び、的の中心を正確に貫いた。
「……すごい!」
ライラは驚いたように弓を見つめる。
「前の弓よりも、格段に扱いやすいわ。安定してるし、引きが軽いのに威力もある!」
ゼルヴォードは腕を組みながら頷く。
「まぁな。だが、こいつの真価はまだこれからだ」
ゼルヴォードが次の指示を出す。
「今度は、少し魔力を流してから撃ってみろ」
ライラは頷き、弓を握りしめる。
ビリ……ッ
弦を引くと、微かに風の魔力が集まり始める。
「……なんか、風が流れる感じがする」
「そのまま撃て」
シュン──!!
矢が放たれ、着弾と同時に横方向へ突風が走るような竜巻が発生!
地面に沿って風が激しく舞い、周囲の草をなぎ倒していく。
ライラは目を見開いた。
「こ、これが……!?」
ゼルヴォードは満足そうに頷く。
「これがこいつの基本性能だ」
ゼルヴォードが改めて指示を出す。
「よし、次の矢を放ってみろ。その時、"弓が共鳴してくるまで"魔力を流してから撃ってみろ」
ライラは頷き、再び矢を番えた。
ビリビリ……!
弓が微かに震え、"淡い風の魔力"が矢に集まり始める。
しかし──
「っ……く、引けない……!」
ライラの顔に汗が滲む。魔力を流すことはできたが、"共鳴した状態"で放つには、まだ力が足りなかった。
ゼルヴォードはそれを見て、ニヤリと笑う。
「まぁ、そんなもんだな。……なら、見せてやるよ」
ライラの手から弓を受け取り、ゼルヴォードが代わりに番える。
「最終段階ってのは、こうやって使うんだ」
ゼルヴォードが弦を引いた瞬間、弓の先に古代文字が淡く浮かび上がる。
ゴゴゴゴ……!
風が渦巻き、弓が震える。
そして──
──神速!!
放たれた矢は"消えた"。
音すら発生させない速度で的を貫通し──
ズドンッ!!!!
的の背後の岩を突き抜け、さらに遠くへと飛翔する。
──そして、数秒後。
ドガァァァァァン!!!!
大気が震えた。
遠方で巨大な衝撃波が発生し、周囲の木々が一斉にしなりながら揺れる。
ライラとフィルミナは、その光景を呆然と見つめた。
ゼルヴォードは弓を下ろし、静かに言う。
「……これが"最終段階"だ」
「だがな……武器はただの道具じゃねぇ。力を持つってことは責任も生まれる。場合によっちゃ、お前自身の"運命"も変えることになる」
ライラは真剣な表情で弓を見つめた。
「……この弓が、私の運命を……?」
ゼルヴォードは頷く。
「……私は、この弓の力を"使うべき時"に使う」
ゼルヴォードは満足そうに頷いた。
──そして後に
ライラ・フェルディナンドはこの弓と共に数々の依頼や討伐を達成し、
"冒険者ギルドの歴史(クリムゾン級)に名を残す事となる。"
それはまた、別の話──。
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