第71話:"改良開始"──風の弓の試作と第一工程!
ゼルヴォードは、工房の一角で弓の材料を並べていた。
「さて……今回使うのはこいつらだな」
・風樹の枝(B-) :軽量でしなやかな木材、風の流れを導く特性を持つ。
・蒼鱗鉱(B) :適度な硬度と魔力伝導率を持つ鉱石、弓のフレーム補強に使用。
・疾風の獣革(B+):弦に使用、魔力を込めることで"風の刃"を生み出す特性あり。
「どれも風属性と相性がいいが、問題は"どう組み合わせるか"だな」
ライラが興味深そうに覗き込む。
「結構いろんな素材を使うのね。普通の弓は木と弦だけなのに」
「まあな。"普通の弓"を作る気はねぇからな」
ゼルヴォードは材料を見極めながら、弓の設計を進めていった。
◆第一工程──弓の骨格作り(1日目)
コンパウンドボウの形状を採用することで、扱いやすさを向上させる。
・風樹の枝(B-)をメインフレームとして加工し、しなりやすくする。
・蒼鱗鉱(B)を適度に埋め込み、剛性を強化。
・握りの部分には特別な魔法刻印を施し、"魔力の流れをスムーズにする"処理を行う。
「へぇ……もう形ができてる!」
ライラが驚いた声を上げる。
ゼルヴォードは微かに笑いながら、弓の仕上がりを確かめた。
「まだまだ途中だ。形があっても、実際に使えなきゃ意味がねぇ」
「じゃあ、明日は何をするの?」
「弦を張る。そっからが本番だ」
翌日、ゼルヴォードは弓に張る弦の選定に取り掛かっていた。
「今回使うのは、疾風の獣革だ」
ライラが興味津々でその素材を触る。
「これが弦になるの? 普通の弦より、ちょっと厚みがあるような……?」
「この素材は魔力伝導率が高くてな。"風の刃"を生み出せる特性を持ってる」
ゼルヴォードは慎重に弦を加工し、弓に取り付けた。
「……よし、張ったぞ」
ライラが弓を手に取り、軽く引いてみる。
「おお、弾力がすごい!」
「だろうな。普通の弓よりも引きが重いが、その分、"矢に込められるエネルギーが増える"」
「なるほど、これは面白そう……!」
3日目からは試作品のテストと微調整を行う日々が続いた。
3日目──初回テスト
ライラが試し撃ちを行い、弓の感触を確かめる。
通常の矢では問題なく飛ぶが、風の魔力を込めた際に少し暴発気味に。
ゼルヴォードが魔力伝導の流れを調整する必要があると判断。
「……うーん、もうちょっと魔力の流れを安定させられない?」
「任せろ。明日には調整しておく」
4日目──魔力伝導の最適化
弓の中央部分に微細な魔法刻印を追加し、魔力を流しやすくする。
これにより、矢に込めた魔力が暴走せず、安定した風の力を付与できるように。
「よし、試してみろ」
ライラが再び矢を番え、魔力を込める。
「……っ!」
シュンッ──!!!
矢が音もなく飛び、的に命中した瞬間、小さな竜巻が巻き起こる。
「わぁ! ちゃんと狙った場所で竜巻が出た!」
ゼルヴォードは満足そうに頷く。
「これで完成に近づいたな。あとは"細かい調整"だ」
5日目──最終調整
矢を込める際の魔力負荷を減らし、消費MPを最適化。
竜巻の発生範囲を微調整し、より扱いやすくする。
コンパウンドボウのバランスを最終調整し、ライラの戦闘スタイルに最適化。
ライラは何度も試し撃ちを繰り返し、満足そうに頷いた。
「……すごい。私の弓、ここまで進化するなんて!」
ゼルヴォードは肩をすくめる。
「そりゃあな。半端なもんは作らねぇ主義だ」
フィルミナも一緒に試射場で見守っており、嬉しそうに拍手をした。
「ライラさん、すごくカッコいいです!」
ライラは照れ笑いしながら、フィルミナの頭を撫でた。
「へへ、ありがと。フィルミナも、今度私と一緒に射撃やってみる?」
「えっ!? そ、そんな……!」
ゼルヴォードはその様子を見ながら、静かに弓の最終仕上げに取り掛かるのだった。




