第70話:"弓の改良計画"──ライラとの相談、そして新たな友人関係
王都・鍛冶屋ギルド、ゼルヴォードの工房。
机の上には、ライラの愛用する弓が置かれていた。
木製の美しい曲線を描いた長弓であり、細かい装飾も施されている。
「で、ライラ。今回は"修理"じゃなくて"改良"でいいんだな?」
ゼルヴォードが確認すると、ライラは頷いた。
「そう。単に直すだけじゃなくて、もっと使いやすくしたいの」
「なるほどな。じゃあ、具体的にどうしたい?」
ゼルヴォードは手元の紙にいくつかのメモを取りながら、ライラの要望を聞いていく。
ライラは少し考え込んでから、指を一本立てた。
「まず、威力を上げたい!」
「威力か……。どれくらいの強さが理想だ?」
「そうね……今の弓だと、中距離戦では十分なんだけど、遠距離になると威力が落ちちゃうのよね。できれば、遠距離でも安定してダメージを与えられるようにしたい。」
ゼルヴォードはメモを取りながら頷く。
「なるほど。じゃあ、弓自体の素材を変えるか、矢に魔力補正をかける方法が考えられるな」
ライラはさらに続けた。
「それと……できれば属性攻撃を追加できないかしら?」
「属性か。何系がいい?」
「うーん……私は元々、風の魔力が得意だから、それを活かしたいかな」
ゼルヴォードは顎に手を当てながら考える。
(風属性の付与か……単純に風刃を纏わせるだけなら簡単だが、どうせならもっと面白い仕掛けにしてやりたいな)
「風属性を付与するのは問題ない。あとは"どんな風の力"にするか、だな」
「どんな風……?」
「例えば──」
・風刃を矢に纏わせ、"貫通力"を高める。
・矢が着弾した後、"小規模な竜巻"を発生させる。
・矢の飛翔速度を加速し、"弾速を向上"させる。
ゼルヴォードがいくつか案を出すと、ライラは目を輝かせた。
「え、それ全部すごいんだけど! どうしよう……!」
「まぁ、時間と手間がかかる分、"一つに絞る"のがベストだな」
ライラはしばらく悩んだあと、力強く言った。
「矢が着弾した後に、"小規模な竜巻"を発生させるのがいい!」
「なるほどな。"広範囲攻撃"を意識するわけか」
ゼルヴォードはメモを整理しながら、最終的な方向性を決めた。
・風属性を付与し、矢が着弾後に"小規模な竜巻"を発生させる。
・弓本体の素材を改良し、"遠距離でも威力を維持できる"ようにする。
・強度を上げ、弦の耐久性を高めることで"長時間の戦闘に耐えられる"仕様にする。
「これなら、確実にお前の戦闘スタイルに合った弓になるな」
ライラは満足そうに頷いた。
「そういえば、制作にはどれくらいかかるの?」
「だいたい1週間だな。素材の精製と、魔力付与に時間がかかる」
「1週間か……じゃあ、その間にちょくちょく様子を見に来てもいい?」
「まぁ、構わねぇよ。ただし"完成するまで細かいことは言うなよ"」
「わかってるわよ!」
すると、そこにフィルミナが顔を出した。
「えっと、ライラさん? しばらく鍛冶屋ギルドに通うなら、よかったら一緒にお茶でもどうですか?」
「え、いいの? それならぜひ!」
ライラはフィルミナと顔を見合わせて微笑んだ。
ゼルヴォードはその様子を見ながら、わずかに口元を緩める。
(……ま、悪くねぇな)
こうして、ライラの弓の制作が始まり、フィルミナとライラの交流も深まることとなる。




