第66話:暴走する魔力変換装置、ゼルヴォードの記憶!
──王都郊外、異変の中心部。
ゼルヴォードは、目の前に広がる異様な光景を睨みつけていた。
「……なるほどな、"魔力変換装置"の暴走か」
眼前には、崩れかけた建物。
そこから、黒い靄が"波打つように"漏れ出し、周囲を侵食している。
その手前では、リオネル・アークウェイブが魔法障壁を展開し、歯を食いしばっていた。
「……チッ、このままじゃ持たねぇ……っ!」
すでに部下たちは倒れ伏し、"黒い靄"に覆われて動かない。
生存の可能性は、ゼロ。
ゼルヴォードは状況を冷静に整理しながら、ふと昔の戦場を思い出す。
(……昔、これに似た魔獣を倒したことがある)
それは"魔力生命体"と呼ばれ、通常の武器が通用しない相手だった。
だが、"ある特殊な武器"でのみ討伐可能だった──。
ゼルヴォードは、マジックポーチに手を突っ込み、無造作に"その武器"を取り出した。
◆武器紹介:グランドバスター
・週類:大斧
・ランク:A+
・効果:斬撃時に"魔力吸収"を行い、敵の魔力を徐々に削ぐ
・特性:"魔力生命体"に特攻。特定の魔力場でのみ真価を発揮する
・備考:"過去の戦場"で使用した対魔力生命体武器。通常の敵には効果が薄いが、"魔力変換装置"の暴走によって発生した"靄"には有効である可能性が高い
ゼルヴォードは、大斧を軽く振った。
──シュンッ!
刃が黒い靄を斬り裂き、その一部が"溶けるように"消失していく。
「……やっぱり、こいつなら"削れる"ってわけか」
リオネルは驚愕の表情を浮かべた。
「今の攻撃……!? もしかして、この靄を"消せる"のか?」
「完全に消せるかはわからねぇが……試す価値はあるな」
ゼルヴォードが次の一撃を放とうとした、その時──
──ズォォォォォ……!!
靄が突然、"意思を持ったかのように"蠢き始める。
「……嫌な予感がするな」
ゼルヴォードは、剣を構え直した。
・黒い靄は、"異形の魔獣"として実体化を始めた──
・それは、単なる魔力の集合体ではなく、意志を持つ"災厄"の存在へと変貌!
「……ッ、こいつ……"形を持ち始めてる"!」
靄は、まるで"意思"を得たかのように自らの姿を固めていく。
徐々に輪郭を成し、四足のシルエットを形成。
それはまるで──魔獣の王のような威厳を持った黒き影。
──ズォォォン……!
突如、その影が"咆哮"を上げた。
リオネルが顔を歪める。
「……やばい、これ以上"こいつ"の実体化が進めば……!」
だが、もう遅い。
黒い靄はついに"異形の魔獣"として完全に実体化した。
・巨大な四足獣の姿、漆黒の鎧のような身体、内側から溢れる魔力の奔流
・目は"暗黒の業火"のごとく揺らめき、ゼルヴォードを睨み据える
・"知性"を持ち、ただの魔物とは異なる行動パターンを示す
「……チッ、面倒なことになったな」
ゼルヴォードは、武器を構え直しながら呟く。
「今度は、ちゃんと"実体を持った敵"ってわけか……」
次の瞬間──
黒き魔獣は、一瞬にして"ゼルヴォードの前"へと跳躍した。
──ドンッ!!!
重力を無視するような速度。
ゼルヴォードは瞬時に回避するが、背後の地面が"抉れ"、深いクレーターを残す。
(……さっきの靄とは、レベルが違うな)
ゼルヴォードは口の端をわずかに吊り上げた。
「……ま、いいさ。お前みたいなヤツは"何度も見てきた"」
手にしたグランドバスターの刃が、淡く光を放つ。
「──狩るだけだ」




