第60話:規模拡大の模擬戦、景品は特製アクセ
模擬戦の開催場所と、思わぬスポンサー
「──で、場所はどこだ?」
ゼルヴォードは腕を組みながら、サブギルドマスターオルグ・フェンリルに尋ねた。
「場所? ああ、それな……」
オルグは少し言いづらそうにしながら、軽く咳払いをした。
「"模擬戦"って言っちまったが、実はこれ──王都の中央闘技場でやることになってる」
「……は?」
ゼルヴォードの眉がピクリと動く。
「王都の中央闘技場って……あの"王国の公式戦"とかやる場所か?」
「そうだ」
ゼルヴォードはオルグをじっと見つめる。
「おい、待て。それもう"模擬戦"の規模じゃねぇだろ」
「まあ、そうなんだが……実は、王国がスポンサーについてるんだよ」
「……は?」
ゼルヴォードは思わず聞き返す。
「ちょっと待て。ギルドの模擬戦に"王国がスポンサー"ってどういうことだ?」
オルグは苦笑しながら説明を続ける。
「今回の大会、もともとはギルドの内部イベントだったんだが、"王都の戦士たちの育成と士気向上"を目的に、王国がバックについた」
「……つまり?」
「冒険者だけじゃなく、騎士団の精鋭や王都の戦士たちも参戦する"半公的な大会"になったってことだ」
「……それ、聞いてねぇぞ」
ゼルヴォードは額を押さえた。
(オルグ、お前後出ししすぎだろ……)
「……で、そんな大会の景品に"俺の作ったモン"を出していいのか?」
ゼルヴォードは呆れながらオルグを見た。
「お前の作品なら、むしろ名誉なことじゃねぇか?」
「それはそうかもしれねぇが……」
ゼルヴォードは考え込む。
(もし"武器"を景品にした場合、使用者の実力次第でとんでもない戦力差が生まれる可能性がある)
(なら、誰が優勝しても問題なく使えるモノにした方がいいな……)
「……今回は"武器"じゃなく、アクセサリーにする」
「おっ、そうか? どんなもん作るんだ?」
「イヤリング(片耳用)だ」
オルグは少し驚いたように目を丸くした。
「ほぉ……装飾品ってのは珍しいな」
「武器じゃねぇ方が、公平だろ?」
ゼルヴォードは肩をすくめながら、続ける。
「ランクはB級にする。で、効果は"ステータスUP"か"装備者の属性を一段階上げる"にする予定だ」
オルグは興味深そうに頷いた。
「へぇ……"属性を一段階上げる"ってのは面白いな」
「まあ、それに適した魔石を使えば可能だ」
「なるほどな。そいつぁ楽しみだぜ」
オルグは満足そうに笑った。
「景品の準備、頼んだぜ!」
「ったく……仕方ねぇな」
ゼルヴォードは苦笑しながら、鍛冶屋ギルドへと向かうことにした。
(さて……どんな魔石を使うか、考えるか)
◆イヤリングの仕様案
・名称:???(まだ未定)
・ランク:B
・効果①:「ステータスUP(特定の能力を強化)」
・効果②:「装備者の魔力属性を一段階向上(火→上級火、など)」
・使用魔石:特定の属性を持つ魔石を精製し、"精融"で融合
次は本日15:00にします。




