第59話:ギルドの大会準備と、再会の調整
ギルドの模擬戦大会、開催決定!
「──3日後に決定だ」
オルグ・フェンリルは、ギルドの掲示板に「模擬戦大会・3日後開催!」と書かれた紙を貼った。
「3日後……随分と急だな」
ゼルヴォードは腕を組みながら呟く。
オルグは豪快に笑いながら肩をすくめた。
「長く待たせるとダレちまうからな。それに、実戦の腕を試すにはこれくらいのスピード感がちょうどいい」
ゼルヴォードは掲示板の紙を見ながら、軽く頷いた。
「3日あれば、景品用は用意できるな」
オルグはニヤリと笑う。
「お前の作る武具が景品になったと知ったら、参加希望者が一気に増えるかもな」
「余計なプレッシャーをかけんなよ……」
ゼルヴォードは肩をすくめながらも、内心でどんな武器を作るか考え始めた。
(3日で作れる範囲で、ちょっと面白いモノを用意してやるか)
そんな会話の中、「久しぶり~」という軽い声が後ろから響いた。
振り向くと、銀髪のエルフ弓使い──ライラ・フェルディナンドが立っていた。
「……ライラか。相変わらず元気そうだな」
「そりゃあね。こっちはちゃんと仕事してるんだから」
ゼルヴォードと軽く世間話を交わした後、ライラはふと真剣な顔になった。
「そうそう、そろそろ武器の調整をお願いしたいと思ってたの」
「お前の弓か?」
「ええ。最近ちょっと違和感を感じててね。でも、大会が終わった後でいいわ」
ゼルヴォードは軽く頷いた。
「そうか。なら、大会が終わったらじっくり見てやる」
「助かるわ。やっぱり頼れるのはゼルヴォードくらいだからね」
「おいおい、そんなに期待されると困るんだがな」
ライラはくすっと笑いながら、掲示板を眺めた。
(まぁ、まずは大会の景品を作るのが先決だな)
──王都学院、修復現場。
「──修復魔法、展開」
魔道士ギルドのギルマスター、アステリア・ルーメンが静かに杖を振ると、
空中に浮かぶ魔法陣が崩れた校舎全体を覆った。
まるで時間が巻き戻るように、壁が元の形に戻り、砕けた窓が修復されていく。
「……すごい……」
生徒たちは驚きながら、その様子を見守っていた。
(これなら、明日には授業が再開できるな)
教師たちが安堵の表情を浮かべる中、さらに驚くべき光景が目の前に広がった。
アステリアが、フィルミナと親しげに話をしていたのだ。
「……フィルミナ。昨日は大変だったでしょう?」
「はい……でも、ゼルヴォードが助けてくれたので……」
「ふふっ、彼ならそうするでしょうね」
アステリアは優雅に微笑んだ。
──その様子を見て、魔道士ギルドの部下たちや生徒たちは目を丸くする。
「……えっ、フィルミナさん、ギルドマスターと普通に話してる!?」
「なんで!? そんな特別な人だったの!?」
「魔道士ギルドのトップが、こんなに気軽に話す相手なんて……」
教師すら驚いた顔をしていた。
フィルミナは周囲の視線に気づいて、少しだけ困ったように笑う。
「……?」
アステリアはそんなフィルミナの様子を見て、小さく笑った。
「ふふっ、気にしなくていいわよ」
(──フィルミナは、普通の生徒として過ごせるようにする。それが、私の役目でもある)
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