第56話:暴走する魔力、封じる鍛冶師
短めです
「はぁっ、はぁっ……」
フィルミナは肩で息をしながら、崩れ落ちるように座り込んだ。
「……止まった?」
リヴィアが目を見開く。
カインもゼルヴォードの手元の黒銀の腕輪をじっと見つめていた。
(……ただの魔道具じゃないな)
魔力を完全に封じる、極めて精密な制御装置。
普通の鍛冶師には到底作れない代物だった。
「……ほぉ」
屋根の上からヴァレス・オルディナが、興味深そうにゼルヴォードを見下ろした。
「君の技術……やはり、ただの鍛冶師ではないようだな」
ゼルヴォードは腕を組み、鼻を鳴らす。
「俺の技術がどうとかより、テメェが何をやったのかの方が問題だろうが」
──瞬間、空気が変わった。
圧倒的な殺気が、ゼルヴォードの周囲から溢れ出す。
気温が下がったように感じるほどの冷たさ。
リヴィアとカインは、思わず息を呑んだ。
「……なっ……」
リヴィアはゼルヴォードの横顔を見た。
(怒ってる……いや、本気で殺すつもり……!?)
ヴァレスはそんなゼルヴォードの気配を感じながらも、あえて冷静な表情を崩さなかった。
「ふむ……なるほど」
ゼルヴォードは、ただヴァレスを見据えたまま静かに言った。
「……さっさと答えろよ。何をした?」




